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脳神経外科 | 脳血管内治療について

脳血管内治療について

脳神経外科医長
 中川隆志

はじめに

 当院の基本理念である24時間365日断らない救急医療を実践するために、脳神経外科は脳卒中及び頭部外傷の診療にこれまで多く携わってきました。治療対象は、くも膜下出血、脳内出血、脳動静脈奇形、未破裂脳動脈瘤等の脳血管障害、急性硬膜外・下血腫、脳挫傷、慢性硬膜下血腫等の頭部外傷、脳腫瘍、顔面痙攣、三叉神経痛など脳神経外科全般に及びます。
 平成28年の入院患者は559名で、主な内訳は脳血管障害287名、頭部外傷154名(慢性硬膜下血腫81名を含む)、脳腫瘍22名でした。手術数は206件で、主な疾患では開頭手術74件(脳動脈瘤手術20件、脳腫瘍 11件、血腫除去術29件等)、穿頭術130件(血腫吸引術101件、水頭症手術7件等)でした。
 そのような中、当院では今年度から新たにバイプレーン血管造影装置が稼働し、脳血管内治療が可能となりました。従来の開頭手術のように頭部にメスを入れることなく、大腿動脈からカテーテルを挿入して脳の病気を治療することができます。脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、内頚動脈狭窄症に対する頚動脈ステント留置術、急性期脳梗塞に対する血栓回収術、頭部外傷に対する止血術等、当院で症例数が少なかった治療をコメディカルスタッフの協力の元、現在拡充しています。
 脳神経外科での治療が必要な患者様が受診された際は、従来の脳神経外科手術に加え、脳血管内治療が選択できるため、最善の治療法を提示できるようになります。当院のもう一つの基本理念である最新の知識・医療技術と礼節をもって、良質で安全な医療を目指します。

手術方法

 脳血管内治療とは脳の病変に対して、頭蓋骨を切ることなく、血管からアプローチする手術方法です。手足の血管から直径2mm程のカテーテルを挿入し、その中に直径0.5mm程のマイクロカテーテルを通し、病変の血管にカテーテルを進めていきます。病変に到達したら、異常血管を金属製コイルや塞栓物質で塞栓したり、狭窄病変をステントやバルーンで拡張したりします。
 この治療法の利点は、開頭術による外科手術と比較して、侵襲が少ないこと、開頭手術での治療が困難な脳の深部でも治療が可能なこと、入院期間が短いこと、全身麻酔が危険な高齢者や心機能や肺機能が低下した人にも局所麻酔でできることなどです。

合併症

 脳血管内治療の大きな合併症は、血管が血栓により詰まってしまうことです。治療に使用する金属製コイルやカテーテルは異物であり、その表面に血液が付着して血栓ができます。また血管壁に付着していた血栓をカテーテルで剥がしてしまい血管を閉塞させることがあります。この合併が起きないように手術中はヘパリンという薬剤を使用し、手術後は抗血小板薬を内服する必要があります。逆に肘や足の付け根の血管を刺したところから出血することもあります。その他、造影剤や金属に対するアレルギーが問題となることがあります。

くも膜下出血

 脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を起こします。初回破裂で約30-40%の人が死亡するといわれています。発症数日以内に再破裂のピークがあり、約20%が2週間内に破裂するといわれています。再出血は致命的であり、来院時に手術可能な状態であった場合は緊急で再出血予防の手術を行います。従来は開頭して行い、脳動脈瘤の根元をクリップするクリッピング術が一般的でしたが、1990年代から医療機器の発達によりコイル塞栓術という脳血管内治療が欧米で盛んになりました。2000年以降、脳血管内治療がクリッピング術と比べても急性期の成績として劣らない治療であることが報告され、治療件数が増えてきています。
 脳動脈瘤コイル塞栓術は、マイクロカテーテルからプラチナコイルを押し出して脳動脈瘤内に詰めます。脳動脈瘤内にコイルを詰め、血流が少なくなると脳動脈瘤内に血栓ができて自然に固まります。クリッピング術と同様に脳動脈瘤の再破裂の危険性がなくなります。

前大脳動脈遠位部破裂動脈瘤


術前

術後

未破裂脳動脈瘤

 頭部MRIなどで破れる前に見つかった脳動脈瘤を未破裂脳動脈瘤と言います。脳動脈瘤が大きくなることで周囲の脳を圧迫し、眼の動きが悪くなる、飲み込みが悪くなるなどの神経症状が出現します。最近は脳ドックなどで無症状の動脈瘤が見つかることも多く、予防的に脳動脈瘤を治療することもあります。
 破裂脳動脈瘤の治療と同様に、クリッピング術かコイル塞栓術を選択することになります。コイル塞栓術の場合、脳動脈瘤内にマイクロカテーテルを挿入し、プラチナコイルで脳動脈瘤の中を詰めて破れないようにします。未破裂脳動脈瘤を開頭術で手術した場合、合併症の発生率は約3%と言われています。脳血管内治療もバルーンやステントなどのデバイスの進歩により治療成績が向上し、ほぼ同程度と考えられます。

内頚動脈狭窄症

 内頚動脈狭窄症は、首にある大きな動脈が動脈硬化などの原因で狭くなる病気です。狭窄が進むと脳へ行く血液が不足して脳梗塞を起こすため、内科的治療もしくは外科的治療が必要となってきます。外科的治療としては、標準的な治療として頸動脈内膜剥離術(CEA)が行われます。頚部を10cmほど切開して血管を露出し、狭窄の原因となっているアテロームを取り除きます。従来はCEAを行うことが困難な方のみに、ステントと言われる筒状の金属を留置して血管を拡張する経皮的頚動脈ステント留置術(CAS)を行ってきました。最近はデバイスの進歩よりCEAに劣らない成績が報告されるようになり、CASの適応が広がっています。

内頚動脈狭窄症


術前

術後

急性期脳梗塞

 脳梗塞に対する急性期治療は点滴などによる内科的治療が主体でした。その後、回復期リハビリ病院でリハビリ治療を行い、機能改善を図ってきましたが、後遺症が残ることも多い病気です。現在、発症4.5時間以内の脳梗塞患者に対してtPA(アルテプラーゼ)静注療法が行われ、治療効果を上げています。tPA療法には4.5時間という時間制限があるため、脳梗塞患者全体の10-20%にしか適応がなく、再開通率は30-40%程です。
 tPA静注療法が効かなかった患者、tPA静注療法の適応が無かった患者に対し、発症8時間以内であれば血栓回収療法という脳血管内治療が可能になっています。従来はカテーテルを血栓のある部位まで進め、吸引をかけて回収する方法が主体でしたが、最近はステント型血栓回収デバイスをはじめとして治療デバイスが進歩しており、急性期脳梗塞の治療は目覚しい発展を遂げています。また、時間の短縮は予後にも関係し、血栓回収療法を受けた患者の約30-40%は脳梗塞発症後に自立した生活が可能となっており、高い治療効果が得られています。

その他

 脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳腫瘍に対する腫瘍塞栓術、頭部外傷に対する止血術などにも脳血管内治療が行われています。

髄膜腫に対する腫瘍塞栓術


術前

術後

術前

術後

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