【第86号】 高齢者の骨折について 骨折に使用される薬剤 高齢者の骨折予防と食事 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第86号】 高齢者の骨折について 骨折に使用される薬剤 高齢者の骨折予防と食事

【高齢者の骨折について】

 高齢化社会の抱える問題は様々ありますが、老化現象として骨がもろくなり、立位からの転倒といった実に些細な外傷をきっかけに脊椎や大腿骨に骨折が生じると、これを機に「寝たきり」が強いられることになります。骨折は高齢者の人生を一変させる問題であり、高齢化社会を迎えた本邦において極めて大きな問題といえます。

「脊椎圧迫骨折」
 徐々に背骨が曲がり、背が縮んで気付き、腰痛があっても軽微で、あまり治療の対象とならない骨折もありますが、これに対し、どしんと尻餅をついて起こる 脊椎の圧迫骨折はほとんどが治療の対象となります。ひどい場合は身動きもできず寝たきりの状態が1〜2週間続き、約1か月間は辛い思いをします。痛みに応 じて安静臥床したり、コルセットをつけて動くことになります。薬物療法では消炎鎮痛薬や湿布が使われます。カルシトニン製剤も急性期に有効といわれています。痛みが和らいできたらコルセットで骨折部を固定し坐位→立位→歩行と訓練を進めていきます。早期に無理をすると背骨の変形が進みます。稀にこの変形により脊髄神経を圧迫して両下肢麻痺となることがありますので痛みのある間の1〜2か月は無理しないことが大切です。

「大腿骨頸部骨折」
 発症と同時に自力では体動が困難となり、寝たきりとなります。褥瘡ができたり、肺炎になったり、痴呆症となったり、種々の合併症を併発し ます。早期離床をはかるためできるだけ早く手術して臥床期間を短縮することが強調されています。そのためには手術により強固な内固定や、人工骨頭置換術を 行います。術後は約1か月で杖歩行となり、2か月後には退院することができます。骨折後の試練を乗り切れば生命の予後は骨折のない人と同じになるといわれ ています。
 豊かな高齢期を過ごすため、骨折の予防、つまり骨粗しょう症にならないようにすること、そして、かりに骨粗しょう症になったとしても、骨折しないように早期診断、早期治療が大事であると考えます。

(整形外科医師  前田 智)

【骨折に使用される薬】

 骨折や関節手術後の疼痛・腫脹のコントロールは重要であり、痛みの程度を考慮した鎮痛処置が選択されます。手術直後(1〜2日)であれば硬膜外チューブからの局所麻酔薬の注入、非ステロイド性抗炎症剤の坐薬であるボルタレン坐薬が併用されます。手術後に耐え難い痛みがある場合には合成鎮痛薬のレペタンの注射薬や坐薬、ソセゴンなどの注射薬が用いられることがあります。強い痛みが落ち着いてきた頃からは内服薬による痛みのコントロールが行われます。代表的な鎮痛薬としてはロキソニン、ボルタレンが使用されます。
 副作用として胃部不快感や場合によっては消化管出血などが現れることがあるので、胃粘膜保護剤やガスターDなどの抗潰瘍薬が併用されます。
 一方、骨折しないよう予防することも大切です。特に高齢者の場合は骨折の原因となる骨粗鬆症にならないよう普段から食生活や適度な運動、日光浴などに心がけることが必要です。しかし、減ってしまった骨の量を増やして骨折を防ぐためには薬による治療も必要です。骨粗鬆症に使われる主な薬としては(1)骨の吸収を抑える薬(骨を壊す働きを弱める薬):ビスホスホネート製剤(ボナロン、ベネット)、女性ホルモン製剤(エストラダームM)(2)骨の形成を促進する薬:ビタミンK2(グラケー)(3)骨の吸収と形成を調節する薬:(アルファロール、ロカルトロール)などがあります。医師の診断を受けて根気よく薬の治療を続けること、また同時に日常生活に気をつけることが大切です。

(薬剤科長  冨澤 達)

【高齢者の骨折予防と食事】

 高齢者の骨折の予防は、 骨粗しょう症にならないようにすることと言えます。骨粗しょう症とは、骨の中のカルシウム、タンパク質、リンの量が減少するために骨の密度が小さくなり、 骨が非常にもろくなる状態を言います。身体の中では絶えず古い骨は壊され、新しい骨が作られていますが、新しくできる骨より壊される骨の方が多くなると骨 粗しょう症になります。骨を丈夫にするには骨の材料になるカルシウムを充分に摂ることが必要です。
 カルシウムは乳製品や魚介類、大豆食品、青菜、海草などに多く含まれています。献立としてはチーズ入りオムレツ、白菜のクリーム煮、コンポートのヨーグルトかけ、ワカサギのマリネ、イワシのつくね、ひじきの酢物、切干大根のサラダ、高野豆腐の含め煮、小松菜のごまあえなどのメニューがお勧めです。
 さらに、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを摂ることも大切です。椎茸、えのき茸や、サバ、マグロ、カツオなど背の青い魚に含まれています。しかし、卵、魚、肉、大豆製品などのタンパク質を多く含む食品の摂り過ぎや、穀類、肉類などに含まれるリンや塩分の摂り過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、喫煙などはカルシウムの利用を低下させますので注意しましょう。また、せっかく摂ったカルシウムも適度な運動をしなければ骨に貯えられず、体外に排出されてしまいます。毎日の生活に運動を取り入れるようにしましょう。

(管理栄養士 土谷 純子)


診療の特色

<総合医療センター 整形内科>

整形外科は統括診療部長の野村医師をはじめ、医師6名で整形外科およびリハビリテーションの分野を担当しています。頚椎・腰椎疾患を扱う脊椎外科、肩、 肘、膝・股関節を扱う関節外科の他、県内でもトップクラスの救急外来患者数を抱える当院では、骨折・脱臼・捻挫などの外傷性疾患にも多く携わっています。 当科での年間手術症例数は約800〜900にも達し、スタッフ全員一丸となって、まさにフル稼働で日夜頑張っています。

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