【第85号】 脳梗塞について 脳梗塞に使用される薬剤 脳梗塞の予防と食事 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第85号】 脳梗塞について 脳梗塞に使用される薬剤 脳梗塞の予防と食事

【脳梗塞について】

 脳梗塞とは、 頭蓋内外の血管の閉塞あるいは狭窄によって脳組織に不可逆的な障害を来してしまう病気です。障害を受けた場所によって、半身麻痺や失語、めまい、しびれな ど様々な症状を来します。脳梗塞が恐ろしい病気であるというのは、これからの神経症状が必ず後遺症として残るという点でしょう。だからこそ、予防が重要な 意味を持つのです。
 脳梗塞の代表的な病型として、(1)アテローム血栓性脳梗塞、(2)心原性脳塞栓症、(3)ラクナ梗塞、の3つが挙げられます。

  1. アテローム血栓性脳梗塞は、その名の通り脳血管の動脈硬化が原因で起こる脳梗塞です。糖尿病、高脂血症、高血圧など、動脈硬化のリスクを持っている人がなりやすい脳梗塞です。
  2. 心原性脳塞栓症は、心臓内でできた血栓が外に飛び出して脳血管を閉塞させたときに生じる脳梗塞です。その原因の多くが、心房細動という不整脈です。
  3. ラクナ梗塞は、脳深部を栄養する一本の細い血管(穿通枝)が閉塞して生じる脳梗塞です。多くの場合、この穿通枝が高血圧等により脆く変性することが原因です。穿通枝が脆いということは、同時に脳出血の原因にもなり、その点からも注意が必要です。

 脳梗塞急性期における治療のポイントは、血流が低下していてもまだ回復する可能性がある部位(ペナンブラ)をいかに救出するかという点にあります。その最たる治療が、2005年10月から本邦でも認められたtPA静注による血栓溶解療法です。発症3時間以内に治療を開始する必要があり、適応にも多くの制限がありますが、上手く成功した場合のその効果は絶大です。ただし、脳出血を来すリスクも相当高く、その場合の予後は非常に不良となります。治療開始決定には迅速かつ慎重に判断する必要があります。
 一方、脳梗塞慢性期の二次予防には、アスピリンなどの抗血小板薬やワーファリンなどを用います。ワーファリンは適切な投与量がその状況によって変化しますので、必ず定期的な採血によるチェックが必要です。
脳梗塞は非常に頻度の高い疾患です。適切な予防と発症後の早期発見が重要ですので、そのことを心に留めておいてください。

(神経内科医長 田北 智裕)

【脳梗塞に使用される薬剤】

脳梗塞の治療に使用される薬には急性期の治療と再発予防や後遺症対策に使われる薬剤があります。
急性期の薬物療法はその治療法によって主に4つに分類されます。

  1. 血栓溶解療法:tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)は発症超早期(3時間以内)に脳の血管に詰まった血栓を溶かし、脳血流を速やかに再開させる再開通療法で使用される薬です。脳梗塞は発症から時間がたつと血管がもろくなるため、tPAの使用で脳出血を起こすリスクが高まります。
  2. 脳を保護する治療:活性酸素(フリーラジカル)の消去剤であるエダラボンは脳保護作用が期待される薬剤で、傷害された脳細胞や脳血管から放出されるフリーラジカルを抑えて、脳梗塞の増悪を防ぐ作用があります。副作用として急性腎不全の発現に注意が必要です。
  3. 抗血小板療法:オザグレルナトリウムは血液を固まらせる働きを持つ血小板の機能を抑制して、血栓生成を予防する薬です。発症5日以内の投与が有効です。
  4. 抗凝固療法:発症後48時間以内で病変最大径が1.5を超すようなアテローム血栓性脳梗塞には、選択的トロンビン阻害剤のアルガトロバンが推奨されています。

 再発予防の薬物療法は血液が血管で固まらないようにする、いわゆる血液をサラサラにする薬で、このタイプには2種類の薬があります。

  1. アスピリン、チクロピジン、シロスタゾールは血小板の働きの抑えて血栓を作るのを抑える薬でアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞の予防に使用されます。チクロピジンは肝機能障害、好中球減少などの重篤な副作用の発現に注意が必要です。最近、チクロピジンに代わるより安全性の高いクロピトグレルが使えるようになりました。また、市販の鎮痛薬にはアスピリンが使用されていますが、これらは鎮痛目的のための薬でアスピリンの量や剤型が異なります。自己判断せず医師の処方によりきちんと服用することが大切です。
  2. ワーファリンは血液が固まって血栓を作るのを抑える薬で、脳梗塞のなかでも心臓の不整脈が原因となる脳梗塞の予防に使用されます。ワーファリン服用中はビタミンKを大量に含む納豆は食べてはいけません。医師、薬剤師からの注意事項をよく聞いて服用することが大切です。
(薬剤科長  冨澤 達)

【脳梗塞の予防と食事】

 脳梗塞を引きおこす危険因子として、「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」「喫煙」「飲酒」「肥満」「ストレス」などがあります。日常生活でこれらの危険因子を減らすことは、脳梗塞を予防する上で大切なことです。
 まずは適切な体重を保つことを心がけましょう。身長(m)×身長(m)×22で求められます。体重だけでなく胴回りも、女性で90cm、男性85cm以上は危険信号です。最近よく耳にする、メタボリックシンドロームとは内臓脂肪が蓄積して、動脈硬化を起こしやすい状態のことをいいます。
毎日の食事で注意していただきたいことは、量とバランスです。(1)アルコールや甘いものをひかえます。(2)毎日3食を、主食、たんぱく質のおかず、野菜を組み合わせてきちんと食べましょう。(3)野菜は一日300g以上とりましょう。(4)海藻類、きのこ類、こんにゃく類もとるようにします。

 これらの野菜、海藻、きのこ類に多く含まれる食物繊維の働きとしては、(1)低エネルギーで満腹感をもたらす。(2)高血圧の原因であるナトリウムを排泄する。(3)コレステロールを下げる、などが挙げられます。うす味にすることも大切です。味の濃いもの、塩辛いものを控えて、血圧が高めになることを予防しましょう。
 毎日の食事の量や味付けは長い間の慣れです。つまり、食習慣を見直すことが重要です。

(管理栄養士 土谷 純子)


診療の特色

<総合医療センター 神経内科>

神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、骨格筋が障害される疾患を扱っています。神経内科というと、少しイメージしにくい科かもしれませんが、もし、運動障害(筋力低下、不随意運動、など)、感覚障害(しびれ、感覚低下、など)、歩行障害、頭痛、めまい、等ありましたら当科を受診することをお勧めします。
具体的な疾患としては、当科で最も多く診療しているのは脳梗塞です。脳梗塞とは、動脈硬化や不整脈が原因で、脳の血管が閉塞して発症する病気です。脳組織が障害されるため、片麻痺や言語障害など様々な症状を呈します。
その他では、脳炎や髄膜炎などの中枢神経感染症、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経難病、頭痛などの機能性疾患、等を診療しています。

診療時間 8:30〜17:00
(診療受付時間 8:30〜11:00)

ただし、急患はいつでも受診できます。

診療科目:総合医療センター(総合診療科、血液・膠原病内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科、神経内科、呼吸器科)、心臓血管センター(循環器科、心臓血管外科)、消化器病センター(消化器科)、精神科、神経科、小児科、外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、感覚器センター(眼科、耳鼻咽喉科)、気管食道科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科・口腔外科、救命救急センター、人間ドック、脳ドック