【第79号】 認知症について 認知症に使われる薬 認知症と食事 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第79号】 認知症について 認知症に使われる薬 認知症と食事

【認知症について】

 認知症は、これまで「痴呆症」と呼ばれていたものです。2004年12月から行政用語として「痴呆症」を「認知症」と変更することになりました。学術用語としての検討は、今後学会などを中心に進められることになっています。
 認知症とは、いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の障害によって低下した状態のことです。記憶障害と判断障害を基本とする症候群です。記憶障害は、数分〜数日前のことなどの短期記憶が障害されやすく、数十年前のことなどの長期記憶が残りやすい傾向があります。記憶内容としては、個人の生活史や思い出の記憶は障害されやすく、「自転車に乗れる」などの身体の動きを伴った記憶は残りやすい特徴があります。また、認知症が重症となると、言葉の意味がわからなくなったり、物が何であるかわからなくなったり、部屋の間取りがわからなくなったりして、現実に即した適切な行動ができない状態となります(判断障害)。原因疾患は多数ありますが、多いのはアルツハイマー病と脳血管性痴呆であり、両方で全体の約8割以上を占めます。
 認知症の治療としては、介護保険サービスやその他の高齢者保健福祉関連サービスなどを利用しながら、記憶・判断障害以外の残存する脳機能・身体機能をできるだけ長く維持することが大切です。薬物治療としては、「物忘れ」の進行を遅れさせることを目的にドネペジル(商品アリセプト)が使われます。幻覚、妄想、抑うつ気分、問題行動、攻撃性、徘徊などの精神症状がある場合には、向精神薬などが必要となります。
 正常圧水頭症、うつ病、せん妄などは認知症のようにみえる疾患ですが、治療可能な疾患ですので、認知症の適切な診断を受けるために、専門医を受診されることをお勧めいたします。

(精神科医長 山下 建昭)

【認知症に使われる薬】

 認知症によっておこる記憶障害や判断力の障害などの症状を根本的に治療する薬は、今のところありません。しかし、ドネペジル(販売名:アリセプト)は、脳での神経の伝わりをよくして、「物忘れがはげしくなる、同じ事を繰返す、判断ができにくくなる、着衣や洗顔など自分のことがうまくできなくなる」などの症状が進むのを抑えます。進 行をみかけ上約半年遅らせる程度の効果ですが、その分だけ、家族と一緒に過ごす貴重な時間を長くすることが出来るとされています。服用にあたっては通常1 日1回1錠服用の薬ですので、謝って多く飲まないよう注意が必要です。また、「飲みづらい」「のどにつかえる感じがする」といった患者様には口の中ですば やく形がくずれ少量の水でも飲める剤形が最近できています。
 副作用は少ない方で、飲み始めに吐き気、食欲不振、下痢、腹痛などがおこることがあります。めったにないですが、気を失う、脈が少ない、胸の痛み、むくみ、ろれつが回らない、激しい頭痛、ふるえ、筋肉のこわばり等の症状に気づいたらすぐに医師や薬剤師に連絡して下さい。その他、脳の血液の循環をよくして脳の働きを改善する薬(ニセルゴリン、酒石酸イフェンプロジル、イブジラストなど)が使われることもあります。
また、認知症に伴いさまざまな精神症状が現れます。うつ状態に対しては抗うつ薬、不安・焦燥には抗不安薬、幻覚、妄想、徘徊などの問題行動に対しては向精神薬などが使われます。
 記憶障害を伴う病気ですので、薬の管理については、患者様ではなく家族や付き添いの方が注意を払って下さい。副作用症状についても、本人からの情報が得られにくいので注意が必要です

(薬剤師 東島 彰人)

【認知症と食事】

 認知症の原因疾患の主なものには、アルツハイマー病と脳血管性痴呆症があります。最近の研究によると、アルツハイマー病の発症には食習慣が深く関係してい るのではないかと云われています。傾向としては穀類、肉類、油脂類の摂取が多く、野菜や海藻の摂取が少ないなどが挙げられています。脳血管性痴呆症も危険 因子に加齢、喫煙のほかに高血圧、高脂血症、肥満、心疾患、糖尿病、過度の飲酒などが挙げられることから、食事との関係が深いと云えます。
 脳の組織を構成する主要な栄養素はレシチン、リン脂質、蛋白質などで、脳神経伝達物質を体内で合成、分解するためにはビタミンB1、B6、B12などが必要とされます。認知症の予防に効果があると思われる食品には、ドコサヘキサエン酸を含むいわし、さんま、あじ、さばなど。リノール酸、オレイン酸を含む大豆、アーモンド、落花生など。レシチンを主に含む豆腐、納豆、豆乳など。亜鉛が多いカキ、うなぎ、豚レバーなど。ビタミンEを多く含む大根の葉、かぶの葉、菜の花、かぼちゃなど。カリウムが多いほうれんそう、春菊、にら、しそ、キウィ、ぶどうなど。カテキンを含む緑茶、りんご、ブルーベリーなどが挙げられます。必要な栄養素に配慮しながら、食事を規則正しく摂ること、青魚と野菜、大豆を取り合わせた料理として低カロリー、低脂肪という点から見ても「和食」が優れていると云えそうです。老いても健康でいるために、食生活に気を配りましょう。

(管理栄養士 浅井 和子)


診療の特色

<精神神経科>

精神神経科は、脳の器質的な障害が原因でおこる「認知症」、幻覚や妄想などの「統合失調症」、うつ病などの「感情障害」、精神的なストレスが原因で起こる「ストレス関連性障害」など多岐にわたる疾患を担当しています。地域の精神科病院や精神科クリニックと連携しながら、精神障害者の方の合併症治療や精神科救急医療にも協力しております。「物忘れ」「不眠」「不安」など様々な精神症状で悩まれている方は、どうぞ一度お気軽に受診して下さい。最善の精神科医療が受けられるように、ご相談に応じさせていただきます。

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(診療受付時間 8:30〜11:00)

ただし、急患はいつでも受診できます。

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