【第57号】 心臓血管外科の新しい手術 血栓と薬 動脈硬化性疾患と食事 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第57号】 心臓血管外科の新しい手術 血栓と薬 動脈硬化性疾患と食事

【心臓血管外科の新しい手術】

 心臓が他の臓器と大きく異なる点は、目に見えて大きく動いており、四六時中働いて1分1秒たりとも休むことが許されないことです。心機能が極めて不良な症例や重篤な合併症を有する症例など、従来の方法を駆使して長時間かけて手術を行うことが最良の選択とはいえない症例も少なくありません。そこで低侵襲手術の必要性が明らかになってきました。
 心臓血管外科の手術で一番多いのは狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患で、次いで大動脈疾患、心臓弁膜症です。冠動脈疾患では心室破裂や心室中隔穿孔などの特殊な場合を除いて、主に冠動脈バイパス術が行われます。従来は人工心肺を用いて心臓を止めて手術を行っていましたが、最近では人工心肺を用いず心臓を動かしたまま冠動脈バイパス術を行う低侵襲手術が行えるようになってきました。大動脈疾患では動脈瘤(動脈の瘤)や動脈解離(動脈壁の内側に亀裂が入り動脈壁が二重に裂けた状態)の部分を人工血管に置き換える手術が主ですが、最近ではステントグラフトという特殊な人工血管を用いて、手術で血管の中を確認して直接血管内に人工血管を入れるか、または血管造影の手技を応用して血管の中に人工血管を入れる低侵襲な方法が盛んに行われています。これら低侵襲手術の導入により人工心肺使用の回避または時間の短縮、手術時間の短縮、重篤な合併症の軽減などができ、より早期の回復および退院が可能となりました。
 心臓弁膜症の手術では、機能不全になった弁を人工弁に取り替える手術(弁置換術)が主ですが、自分の弁組織を温存して修復する手術(弁形成術)も行われています。
 勿論、すべての患者さんに低侵襲手術や自己組織を温存した手術が可能な訳ではなく、手術中に従来の手術法に変更せざるをえないこともあります。因みに当科では冠動脈の低侵襲手術は全体の約7割で、ステントグラフトを用いた手術は胸部大動脈手術の約半数です。

(心臓血管外科医師 森山 周二)

【血栓とくすり】

 血管の中で血栓・塞栓(血が固まる・血管がつまる)が出来て血液が流れなくなると心筋梗塞・脳梗塞になります。その予防のために薬物による抗凝固療法・抗血小板療法を行います。
 抗凝固療法とは、ワーファリンを用いてビタミンKに対抗し凝固系を抑えることにより、血栓・塞栓を予防します。そのためビタミンKを多く含んだ食品納豆やクロレラは効果を弱めます。また、血液の凝固系を抑えるということは、血が止まりにくいためケガに注意が必要です。歯科などを受診する場合は必ず医師に申し出るようにしてください。
 抗血小板療法とは、バイアスピリン・パナルジンなどを用いて血小板に作用し血が固まるのを防ぎ血液の流れをよくします。しかし、この様な薬は人によっては副作用が出る場合もあります。例えば、蕁麻疹がでる、紫色のあざができる、強い疲労感などの症状がでた場合は医師に申し出るようにしてください。
 また、血が固まらないように予防的に服用しますので、自己判断で中止したりしないように必ず医師の指示に従って服用してください。

(薬剤師 湊本 康則)

【動脈硬化性疾患と食事】

 血液の中にはコレステロールや中性脂肪などの脂肪が存在します。本来、コレステロールは体を構成する細胞を囲む、細胞膜の原料や消化吸収を助ける胆汁酸の原料になったりします。また中性脂肪は貯蔵脂肪として必要なときに燃焼しエネルギー源として使われたり、体温を保ったり、体外の衝撃から内臓を守るなどそれぞれ体に欠かせない、たいせつな働きをしています。しかし、コレステロールや中性脂肪が過剰になるとコレステロールが血管壁に入り込み、血管の内腔を狭くしたり、血栓や潰瘍ができたりして、血流が悪くなってしまいます。
 このように高脂血症から動脈硬化に進行するとやがて血管がつまり、心臓疾患の場合、狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化性疾患が起こるのです。食事、運動、休養、喫煙など早めに生活習慣を改善し適切な治療を受けましょう。
 食事の注意する点としては1.バランスのとれた食事 2.適正エネルギーを摂取 3.コレステロールの多い食品を摂り過ぎない 4.動物性脂肪は控えめに 5.塩分を控える 6.野菜や果物を十分に 7.穀物、甘いもの、アルコール飲料の摂りすぎに注意などですが特に野菜や海藻、きのこ類、大豆製品などの食物繊維はコレステロールを下げる働きがあるといわれていますので、しっかり食べましょう。

(管理栄養士 浅井 和子)


診療科の特色

<心臓血管外科>

心臓血管外科では、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈などの心臓疾患のほか、大動脈瘤、大動脈解離などの大動脈疾患、さらに閉塞性動脈硬化症や急性動脈閉塞などの末梢血管疾患に対する手術を行っています。最近では高齢患者の増加に伴い、糖尿病、腎機能障害、呼吸機能障害、脳血管障害などの重篤な合併症を有するハイリスク症例が増え、より低侵襲で確実な手術が要求されています。
 当科では手術によるリスク軽減のため、体外循環を用いない(心臓を動かしたまま)冠動脈手術やステントグラフトを用いた大動脈手術などの従来よりも低侵襲な手術、さらに自分の弁を温存した弁膜症手術(弁形成術)を積極的に行っています。

診療時間 8:30〜17:00
(診療受付時間 8:30〜11:00)

ただし、急患はいつでも受診できます。

診療科目:総合医療センター(総合診療科、血液・膠原病内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科、神経内科、呼吸器科)、心臓血管センター(循環器科、心臓血管外科)、消化器病センター(消化器科)、精神科、神経科、小児科、外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、感覚器センター(眼科、耳鼻咽喉科)、気管食道科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科・口腔外科、救命救急センター、人間ドック、脳ドック