【第208号】「アドバンス・ケア・ プランニング」のすすめ、もっと近くに、緩和ケア | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第208号】「アドバンス・ケア・ プランニング」のすすめ、もっと近くに、緩和ケア

くす通信

「アドバンス・ケア・ プランニング」のすすめ、もっと近くに、緩和ケア

 【「アドバンス・ケア・ プランニング」のすすめ】


アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)という言葉をご存知ですか?

 この稿ではACPについて記してみようと思います。
 ACPとは、エンド・オブ・ライフ(終末期)ケア(C:ケア)に関して、元気な時からあらかじめ(A:アドバンス)医療者と話し合い、どのように人生の終末期を過ごすかを設計すること(P:プランニング)をいいます。自身の最期になるときの、生活の場や医療処置に関して、医療者と話し合い、意思表示をすることです。


具体的には、

① 最期まで自宅で過ごそうと考えている場合には、在宅診療を検討する
※在宅診療:自宅に医療スタッフ(看護師や医師)が来て、診療を受けるもの(在宅で緩和ケア診療を受けることができるのです)

② 自宅生活が困難になった場合に入院(緩和ケア病棟への入院)が必要だろうと考えている場合には、緩和ケア病棟の入院申込みを行う(すぐに入院するのではなく、必要な時に入院できるように前もって申込みをしておく)
※緩和ケア病棟≒ホスピス:痛みなどのつらい症状を専門的にケアする病棟
③ 全身状態が低下して呼吸停止した時の心肺蘇生処置(いわゆる延命処置)に関して話し合う
※心肺蘇生処置:胸を圧迫することによる心臓マッサージ、気管に直接管を挿入して人工呼吸管理を行う、心臓刺激剤や昇圧剤の投与などの処置。回復が見込まれる状態の場合に行われるが、終末期の場合には回復の見込みがなく行われない。

などの点が盛り込まれます。

 大事なことは、自身が大切にしているものを最期まで大切にしていく、そのための生活方法と支援を具体的に検討することです。人生の終末期にどのように過ごすのかを目をそらさずに自分自身で考え、そのことを周囲の人たち(大切な人たちや医療者)と話し合うという過程が、病状を受け入れていくために必要な作業になるのです。


それではどうしてACPが大切なのでしょうか?

 それは特にがん疾患の病状経過に次のような特徴があるからなのです(下図)。ある時点までは日常生活をそれまで通りに営むことができます。しかしあるところで、感染症、腸閉塞、腹水貯留などをきっかけに体力低下を来たし衰弱が急激に進行します。その時点からはおおよそ1~3か月間で死を迎えることが多いのです。すなわち、死亡する1~3か月前までは日常生活をすることができるので、死が直前に近づいているなんて思いもよりません。だから「まだまだ先はある、自分には終末期に関して話をすることは早い」と誰しもが感じています。たしかに予後がどのくらいあるのかは医療者にも正確には分かりません。しかし栄養状態や体重の変化、血液データや画像データなどから、病状が進行してきていることは分かります。終末期には様々な症状(痛み、便秘、食欲低下、倦怠感など)が出現するので、安心できる環境で十分なケアを受けることが必要です。しかし、いよいよの時になってから、さあどうしようかと慌ただしく緩和ケア病棟の面談をしたり、介護保険申請をして在宅診療の計画をしたり(いずれも自分ではできなくなっているので家族まかせになってしまう)しているうちに時間は過ぎ去り、十分な看護・ケアが必要な時期に、つらさを我慢しながら急性期病棟で過ごすことを余儀なくされることがおうおうにしてあります。従って抗がん療法を受けている時から(例えば抗がん剤の二次療法から三次療法に変更になる際などに)、ACPを取り入れることが勧められます。人生総決算のエンド・オブ・ライフの時間を、穏やかに過ごし、自分の人生を振り返る豊かな時間を持つことができるよう、ACPを行うことが大切なのです。


(腫瘍内科医長 磯部 博隆)

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 【もっと近くに、緩和ケア】

 がんの患者さんやそのご家族一人ひとりの身体や心のつらさをやわらげ、暮らしの中の困りごとなどの相談に応じ、その人らしい人生を送ることができるように支えていく医療のことです。

 緩和ケアには、すべての医療者が行う基本的緩和ケアと専門的緩和ケア(緩和ケア外来、緩和ケアチーム、緩和ケア病棟、在宅緩和ケア)があります。ここでは、専門的緩和ケアをご紹介します。

 当院の専門的緩和ケアである緩和ケアチームは、医師(内科医・精神科医・放射線科医・歯科医師・麻酔科医)、看護師(がん看護専門看護師、緩和ケア/がん性疼痛看護認定看護師)、緩和薬物療法認定薬剤師、栄養士、臨床心理士、理学療法士、MSWの多職種で構成され、全人的なアプローチができる人材に恵まれています。治療と診断された時のつらさや治療の選択に関する迷い、治療の副作用、今後の療養についての相談など多岐にわたりサポートさせて頂いています。また、総合病院ならではの麻酔科処置・放射線照射など専門性の高い疼痛緩和方法を用いることが可能です。

 緩和ケア専門病棟では、患者さんご家族の生活を中心とした療養環境を整えています。お一人お一人がどう過ごしたいかを尊重し、医療者が患者さんのスケジュールに合わせています。それを可能にするのが、緩和ケアに精通した知識と技術、そして体制の充実です。一人の看護師が3~4名の患者さんを担当します。症状が治まるまで傍に付き添い、日常生活の援助はとても細やかです。面会時間の制限は無く、少しのお酒なら嗜むことができます。食事のメニューも多彩で、より個別に対応します。このように、患者さんご家族の尊厳が保たれ、その人らしく生きることを支えています。

 住み馴れた場所で自分らしく自由に過ごすために、訪問診療や訪問看護は、24時間365日サポートしています。自宅でも十分な緩和医療が提供できるようになってきました。

 緩和ケアは、治療ができなくなってから始めるものではありません。身体や心などのつらさが大きいと、体力を消耗し、治療を続けることが難しくなります。これまで通り治療しながら緩和ケア外来や在宅緩和ケアを受けることもできますし、緩和ケア専門病棟に入院した後に、痛みをやわらげて自宅に帰ることもできます。当院の緩和ケアも緩和ケア専門病棟も在宅緩和ケアも「できる限り長く、心地よく、自分らしく過ごしていただきたい」この願いは、同じです。当院は、支える仲間を増やし地域全体で「その人らしく」をサポートします。

(がん看護専門看護師 安永 浩子)


診療科の特色

<腫瘍内科>

 2015年4月腫瘍内科が活動を開始しました。すべてのがん種、すべての病期に対応します。院内の化学療法症例の約40%を、また終末期緩和ケア症例の約50%を腫瘍内科が主治医として担当しています。その他の各診療科が担当する症例に関しても、外来カンファランスや回診を通して腫瘍内科で把握し、必要に応じて介入する体制を整備し、薬剤部とともに「がん薬物療法」を集中管理する体制が出来ました。



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