【第207号】「弁膜症」について、「心臓弁膜症の検査」について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第207号】「弁膜症」について、「心臓弁膜症の検査」について

くす通信

「弁膜症」について、「心臓弁膜症の検査」について

 【「弁膜症」について】


血液量はドラム缶約10本!

 心臓は全身に血液とともに酸素を供給するポンプのような役割をしています。全身に酸素を届けたあとの血液(静脈血)は右心房から右心室へもどり肺動脈から肺に送られます。この一連の動きは休むことなく1日およそ10万回繰り返され、運搬される血液量はドラム缶約10本になるといわれています。


 心臓には血流を一方向に維持するため、4つの部屋に4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)があります。この弁に障害が生じ本来の役割を果たせなくなった状態を「弁膜症」といいます。弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なため血液が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。最近の弁膜症の原因は高齢化や動脈硬化に由来しており、高齢化が急速にすすんでいる現在の日本で弁膜症の推定患者数は200~300万人ですが、さらに年々増加の一途たどっています。

 「心臓がわるいために、以前より息切れがしやすくなった、近頃からだがだるい、歩くのが他人より遅くなった、咳、淡がよく出る、寝ているとき息苦しい、近頃足がむくみやすいなど、症状がだんだん悪くなり生命を縮める」病態を心不全と2017年に日本循環器学会が定義しました。弁膜症はこの心不全を起こす大きな原因の一つです。


 弁膜症があると前述した症状が出現しますが、これらの症状は日常的に生じる疲労感などの感覚とよく似ていることや、数十年かけてじわじわ進行することから体のほうが慣れてしまい、自覚症状がない場合もあり「隠れ心不全」といわれています。このため心不全を発症していてもきちんと治療を受けている人は氷山の一角にすぎません。

 弁膜症は次第に進行していく病気です。治療しないで放置していれば突然死に至る可能性もあり、進行すると心筋(心臓を動かす筋肉)の機能低下をきたし一部の弁を変えても心筋は回復できず心臓は元通りに働くことができなくなります。

 弁膜症は自然に治る病気ではないので、隠れ心不全の段階から適切に対処し、進行を遅らせることが重要です。上記症状があれば、早めにかかりつけ医にご相談ください。

 弁膜症の診断がついたら内服治療が開始されますが、定期的な検査が重要です。自覚症状がなくても検査で悪化があれば、心筋の機能が低下する前に手術療法となります。

 手術は自分の弁を形成する方法と人工弁に置換する方法があります。手術は人工心肺を使用し心臓を止めておこなう大手術となりますが、最近は手術成績も向上しています。

 さらに全身麻酔や人工心肺が不可能と判断された状態の悪い大動脈弁狭窄症の患者へカテーテルで弁を装着する方法(TAVI)や、僧房弁閉鎖不全患者へはクリップで弁を挟んで、逆流を制御する方法も実用化されています。


(心臓血管外科部長 岡本 実)

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 【「心臓弁膜症の検査」について】

 以前よりも息切れがするようになった、足がむくむようになった、寝ていると息苦しくなり咳や痰が出る、胸が重苦しいなどの症状が出る、これらは心臓弁膜症が原因で起こっているのかもしれません。このような症状のとき病院では聴診や血液検査、心電図検査、レントゲン検査、心エコー(超音波)検査などを行います。

 心臓には4つの部屋があり血液の流れを一定方向に維持するためにそれぞれの部屋を仕切る4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)が存在します。弁膜症とは、これらの4つの弁に何らかの障害が生じた状態をさします。弁の閉じ方が不完全なため、血液が逆流してしまう状態を「閉鎖不全症」、動脈硬化などで弁の開放性(動き)が悪くなり通り道が狭くなった状態を「狭窄症」といいます。これら弁膜症の重症度や診断に最も適している検査は聴診と心エコー(超音波)検査といわれています。


超音波診断装置

 聴診は診察の際に医師が胸に聴診器をあて心音を聞くことにより弁膜症があるのかないのかを判断します。一方、心エコー(超音波)検査とは図に示す超音波診断装置を用い人の耳では聞こえない音(超音波)をプローブと呼ばれる機器から体内に発信し、その音の跳ね返りを映像化させることにより検査を行います。妊婦さんや胎児にも用いることのできる安全な検査方法の1つです。当院では循環器内科の専門医、心臓血管外科の専門医の指導の下、超音波検査に関する認定資格を有する臨床検査技師が詳細な検査を行っています。


 「閉鎖不全症」ではどの弁がどの程度の逆流を生じているのかをカラードプラ法と呼ばれる方法で調べることができます。機器に向かって流れてくる血流を赤色、遠ざかっていく血流を青色といったように、血液の流れる方向に色を付けることで図に示すように逆流があるかを見ることができます。また、定量評価を行うことで重症度の評価もしています。


 「狭窄症」ではどの弁の開放性(動き)が悪くなり、通り道がどの程度狭くなっているのかを弁口面積(通り道の面積)を算出することで調べることができます。最終的には上記に示した検査方法と血液検査、レントゲン検査、心電図検査などを合わせて、症状が弁膜症を含め心臓に原因があるのかを心臓の専門医が診断しております。何か症状があるときには早めにかかりつけ医にご相談ください。

(主任臨床検査技師 竹内保統)


診療科の特色

<心臓血管外科>

 当科では、主に虚血性心疾患、弁膜症、胸部大動脈瘤、急性大動脈解離などの心臓大血管手術、 および腹部大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症による下肢バイパスなどの末梢血管手術を行っています。また、胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤の治療は、開胸手術や開腹手術のリスクが高いものなどに対し、低侵襲治療である血管内治療(ステントグラフト内挿術)を積極的に取り入れています。
 さらに、心臓血管センターとして、専門病棟内にCCUを完備しモービルCCUでの受け入れや、救急搬送に対し、循環器内科と共同で診察を行い、24時間体制で対応しています。



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