【第205号】「潰瘍性大腸炎」について、「潰瘍性大腸炎の薬物療法」について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第205号】「潰瘍性大腸炎」について、「潰瘍性大腸炎の薬物療法」について

くす通信

「潰瘍性大腸炎」について、「潰瘍性大腸炎の薬物療法」について

 【「潰瘍性大腸炎」について】

潰瘍性大腸炎とは

 潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる病気です。クローン病とともに、炎症性腸疾患と呼ばれています。下痢、粘血便、腹痛で発症することが多く、重症になると発熱、体重減少を伴うこともあります。
直腸からS状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸のように上行性に拡がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。病状は、おさまったり(寛解期)、悪化したり(活動期)を繰り返すことが多く、長期にわたってつきあっていく必要がある病気です。ただし重症の症例は少なく、全体の9割が軽症から中等症の症例で占められています。


原因

 原因として、腸内細菌の関与や、免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与、などが考えられていますが、いまだに原因がはっきりとは判かっていません。一度発症すると完治が難しく、国の指定難病になっています。

疫学

 現在、日本には、約18万人の潰瘍性大腸炎の患者さまがおられ、その数は年々増加しています。発症年齢のピークは20歳代といわれていますが、最近では40歳代やさらに高齢で発症する患者さまも多くみられます。男女比は1:1で、性別による差はみられません。

検査

 潰瘍性大腸炎の疑いがある場合、まず症状とその経過、病歴などについて問診し、全身の状態を確認するために血液検査を行います。そして、感染性腸炎など、症状が似ているほかの腸疾患と区別するために細菌やほかの感染症の検査を行います。また大腸の状態(炎症や潰瘍の形態や、病変の範囲など)をより詳しく調べるために内視鏡による大腸検査を行い、病理組織検査を行います。最終的にこれらの検査結果から、総合的な診断が行われます。

治療

 現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、腸の炎症を抑える有効な薬物治療は存在します。治療の目的は大腸粘膜の炎症を抑え、症状をコントロールすることです。大腸病変の範囲や状態、重症度に応じて治療方法を決定します。薬剤としては、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤や副腎皮質ステロイド薬、免疫調節薬または免疫抑制薬、抗TNFα受容体拮抗薬などを用います。また血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、血球成分除去療法があります。
 内科治療が無効な場合(特に重症例)、副作用などで内科治療が行えない場合、大量の出血、穿孔(大腸に穴があくこと)、癌またはその疑いなどの場合には外科的治療(大腸全摘術)を選択することもあります。

おわりに

 繰り返す下痢や血便、腹痛、発熱などの症状がありましたら、一度当科外来を受診下さい。

(消化器内科医長・消化器内科病棟主任 浦田 昌幸)

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 【「潰瘍性大腸炎の薬物療法」について】

 潰瘍性大腸炎と診断された場合には、患者さまの病変の範囲や状態、重症度を考慮して治療方法を決定します。潰瘍性大腸炎の治療薬について説明いたします。

【5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤】

サラゾスルファピリジン(一例)

サラゾスルファピリジン、メサラジン
 軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、再燃予防にも効果があります。
 体内に吸収されて効果を示すものではなく、有効成分メサラジンが腸の病変部に直接作用して、炎症を抑える薬剤です。サラゾスルファピリジンを内服すると、大腸で腸内細菌によりメサラジンへ分解され、効果を示します。メサラジンをそのまま内服すると大半が小腸で吸収され、大腸まで届かないおそれがあります。そのため、腸内で徐々に溶ける薬剤など、腸内で効果を示すように工夫されていたり、経口投与だけでなく、坐薬や肛門に直接薬剤を注入するお薬もあります。

【副腎皮質ステロイド薬】

プレドニゾロン
(一例)

プレドニゾロン、ベタメタゾン
 中等症から重症の患者さまに用いられますが、再燃を予防する効果は認められていません。速やかな効果を望む場合や5-ASA製剤が効果不十分な場合に重要なお薬です。
 強力な炎症抑制作用を示します。経口薬や坐薬などいろいろなタイプのお薬があり、点滴で投与することもあります。副作用が多く、免疫力の低下、不眠症、顔のむくみ、食欲の亢進、血圧上昇、消化性潰瘍、血糖値の上昇や骨粗しょう症などがあります。これらの副作用は、みなさんに認められるわけではありませんし、お薬で予防できるものもあります。また、急に服用をやめてしまうと、倦怠感や吐き気などの症状がみられることがあるため、病気が鎮静化した後は徐々に減量し、最終的には中止します。

【免疫抑制薬】

アザチオプリン
(一例)

アザチオプリン、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、タクロリムス
 ステロイド治療を行っても改善がみられない場合やステロイドの減量に伴い症状が悪化する場合に用いられます。
 リンパ球の増殖を抑制したり、免疫機能に関わる伝達物質サイトカインの分泌を抑制することで、体内で起きている自分に対する免疫機能の高まりを強力に抑制するお薬です。

【抗TNFα受容体拮抗薬】

インフリキシマブ
(一例)

インフリキシマブ、アダリムマブ
 他の治療で十分な効果が得られない患者さまに対し使用します。
 潰瘍性大腸炎患者さまは、炎症のもととなるTNF-αというサイトカインが過剰に発生し、腸に炎症を起こします。抗TNFα受容体拮抗薬は、このTNFαの働きを抑える薬剤です。
 インフリキシマブは点滴で、アダリムマブは皮下注射で投与していきます。インフリキシマブは投与時にアレルギー症状が出ることがありますが、これは投与前にお薬を服用することで予防できます。


 お薬についてわからないことや不安なことがあれば、いつでも薬剤師にご相談ください。

(薬剤部 薬剤師 吉本 辰暁)


診療科の特色

<消化器内科>

 消化器内科は現在9人の医師が在籍し、毎日の外来診療、検査(内視鏡検査、腹部超音波等)、病棟診療を行っています。
 診療内容としては胃や大腸などの消化管疾患、肝疾患、胆道系疾患、膵疾患をはじめ消化器病全般を幅広く扱っています。内視鏡治療としては上下部消化管の内視鏡的粘膜切除術(EMR)および粘膜下層剥離術(ESD)、胃瘻造設術、胆管結石に対する砕石術などを行っています。肝疾患としてはC型肝炎に対するインターフェロンフリー治療、肝臓がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)など、幅広く診療を行っています。また消化器がんに対する化学療法、腹水濾過濃縮再静注法(CART)なども行っています。
 クリティカルパスを積極的に導入し、地域の医療機関とも連携しながら診療を行っています。


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