【第203号】「肺炎」について、「喀痰検査」について、「薬剤耐性化」を知っていますか? | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第203号】「肺炎」について、「喀痰検査」について、「薬剤耐性化」を知っていますか?

くす通信

「肺炎」について、「喀痰検査」について

患者力アップを目指して!  「薬剤耐性化」を知っていますか?

 【「肺炎」について】

 厚生労働省の発表によりますと平成26年度の外来受診及び入院の原因は肺炎が1位でした。年齢別では65歳以上の受診率が高く、肺炎による死亡率も、がん、心疾患に次いで第3位となっています。高齢化が進むここ日本では憂慮すべき実態です。

 ところで、皆さんは“肺炎”と聞くとどのような病気を思い浮かべますか?

 実は肺炎は一つの病気ではありません。肺炎は文字通り“肺”の炎症を意味しますが、その種類は実はたくさんあります。大きく分けますと細菌などによる感染性の肺炎と、関節リウマチなど膠原病などに引き続いて起こる炎症性の肺炎があります。そしてさらにその原因(病原体や色々な病気)によりさらに細かく分類されています。


肺炎球菌
イメージ

 本日お話ししますのは感染症としての肺炎です。一口に感染症とは言え、その種類もまた病原体により多岐に分かれます。細菌性、ウイルス性、真菌性を代表に、その後は細菌の種類、ウイルスの種類、そして真菌の種類により分類されます。数え切れないほどの病原体が肺炎を引き起こしますが、その代表が肺炎球菌です。国内での研究では肺炎患者の5人に1人がこの菌によるとのデータ*があります。その他、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)、黄色ブドウ球菌、肺炎桿(はいえんかん)菌(きん)と続いていきます。

症状:主に発熱、せき、たんなどを主訴に外来を受診することが多く、
診断:病院では血液検査、胸部レントゲン写真(時に胸部CTスキャンまで)、喀痰検査等を行います。ただし、細菌検査は通常数日の検査時間を必要とするため直ちに検査結果を得ることができません。そのため、我々医師は肺炎診療ガイドラインに沿いつつ、自分自身の経験に基づき診療・治療を開始します。


治療:主に
抗菌薬(こうきんやく:細菌の増殖を抑えます)、
去痰薬(きょたんやく:たんの分泌を正常化します)、鎮咳剤(ちんがいざい:せきを止めます)、
解熱剤(げねつざい:熱を下げます)等を中心に処方し5~7日間(場合によって2週間)経過をみます。

 なお、肺炎球菌ワクチンにつきましては、“肺炎全般”に有効なワクチンではありません。また、この注射をすれば一生肺炎に罹患せずに済むわけではありません。あくまでも肺炎球菌に対して有効であり、実際には更に92種類以上の莢膜型が確認されています。このうち病原性の高い、そのごく一部の型にしか効果がありませんし、定期的な投与が必要ですのでご注意ください。

 皆さんが肺炎に対する正しい知識を持ち、日々予防に心がけ、主治医の先生との密な連携を持つこと。これがとても大切です。

(*国内9研究(市中肺炎3077症例)での検討で18.8%が肺炎球菌による肺炎と報告)

(呼吸器内科医長・感染症科医長 小野 宏)

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 【~肺炎の際の検査~ 「喀痰(かくたん)検査(けんさ)」について】

 感染性の肺炎と診断するために行うのが喀痰検査です。喀痰検査は原因微生物を見つけ出し、その微生物に対してどのような抗菌薬が効くのかを検査します。検査室に出された痰は大きく分けて3つの検査を行います。

塗抹検査
 痰から標本を作り、染色液で染めて顕微鏡で観察します。菌を直接観察し、色や形からどのような菌がどの位いるのかを調べます。


培養・同定検査
 痰を「培地」という細菌にとって必要な栄養素を含む寒天に塗って、36℃で24~48時間置いておくと、菌が増殖して目に見えるほどの塊(コロニー)を作ります。培地に塗ってコロニーを育てるまでを「培養」といい、出来たコロニーをもとに菌の正体を調べる検査を「同定検査」といいます。


薬剤感受性検査
 検出された細菌ごとに効果のある抗菌薬はどれか?ということを調べるのが「薬剤感受性試験」です。検出菌が、「耐性菌」なのかどうかもこの検査で分かります。


 喀痰検査は、前述のとおり「培養」という過程が必要なため、結果が出るまで早くても2~3日はかかります。また特殊な菌では数週間以上必要な場合もあります。感染症の原因となる微生物を早く特定することで、適切な診断と治療を行うことができます。喀痰検査は痰の取り方によって検査の良否が決まります。患者様のご協力をよろしくお願いします。

(臨床検査科 細菌検査室 小川 沙希恵)

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 【患者力アップを目指して 「薬剤耐性化」を知っていますか?】

 肺炎を含む感染症分野での憂慮すべき世界的な問題に“薬剤耐性化”があります。
これまで治療効果を認めていた抗菌薬がある日から効かなくなる

 実はこの現象、抗菌薬の不適切な使用などにより病原体が我が身を守る手段を獲得することに始まります。例えば病原体が抗菌薬をその体から排出する機構や、特定の抗菌薬が効かない“耐性遺伝子”を含有する機構などが知られています。この繰り返しで、世の中にあるどの抗菌薬も効かない、そんなスーパー耐性菌が出現してきています。

 この恐ろしいお話は何も外国での出来事ではありません。そして、対抗手段は新しい抗菌薬の開発と言いたいところですが、これには膨大な研究と人体への安全性確保という非常に高いハードルがあり、残念ながら世界的に遅れています。そのため、身近なところからこうした病原体の耐性化を防ぐことが大切になります。

 我々医師は先のガイドラインに準拠した適切な診療と感染対策強化を行います。さらに、皆様に抗菌薬を処方する場合には不必要な抗菌薬を処方しないなど“Choosing Wisely”といった世界的なエビデンスに則った診療を行います。例えば“カゼなので抗生物質を!“と言った誤った認識を避けるなど、皆様のご理解を得ながら診療を進めます。

 大切な抗菌薬の耐性化を防ぐためにも、皆さんと是非ご一緒に身近なところから より良い未来を築き上げていきましょう。

(呼吸器内科医長・感染症科医長 小野 宏)


診療科の特色

<呼吸器内科>

 呼吸器内科では肺炎、気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎、肺がんを主に診療しています。それぞれの疾患は喫煙などの生活習慣、アレルギー疾患・膠原病や循環器疾患など他科疾患と関連することも多く、総合的な診療が必要とされています。当院は急性期総合病院でありますので、科の垣根を越えたチーム医療を展開しています。

 当院は日本呼吸器学会指導医が常駐しておりますので日本呼吸器学会認定施設となっております。また感染症科診療も展開しています。現在は人員が少なく院内コンサルテーションのみとなっていますが、今後の拡充を検討しています。また、感染症分野での国際医療協力活動、国際貢献を継続しています。


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