【第201号】陳旧性顔面神経麻痺の形成術、神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ™)による神経再生 | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第201号】陳旧性顔面神経麻痺の形成術、神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ™)による神経再生

くす通信

陳旧性顔面神経麻痺の形成術

神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ™)による神経再生

 【陳旧性顔面神経麻痺の形成術】

 顔面神経は顔の表情をつくる筋肉を動かす神経で、何らかの原因で障害されると、顔貌に大きな変形が出てしまいます。

 顔面神経麻痺の代表的な症状は、眉毛・まぶたが垂れ下がる、眼を閉じることができずドライアイになる、口唇や鼻が麻痺の反対側にひっぱられゆがむ、などです。

 顔面神経麻痺の原因はウィルス感染が原因と考えられるベル麻痺やハント症候群、耳下腺腫瘍や聴神経腫瘍によるもの、外傷によるものがあります。

 顔面神経麻痺は、障害される部位や原因によって、症状や程度、経過が異なりますが障害されても薬物治療などで回復してくる場合もあります。麻痺発症後完全には回復せず、長期間経過した陳旧性顔面神経麻痺の場合には、残存する症状に応じた形成術を行います。

「眉毛・まぶたが垂れ下がる」
 前頭筋という額にしわをつくる筋肉の麻痺により眉毛、上まぶたが垂れ下がってきます。時に視野の妨げにもなるため眼瞼下垂と間違えられることがあります。眉毛の上の皮膚を切除し、眉毛を反対側と同じぐらいの位置まで上げた状態で額の骨膜に固定します。この方法により上まぶたの垂れ下がりは、ある程度改善しますが、上まぶたの皮膚の弛緩が強い場合には皮膚も切除し、視野の妨げにならないよう調整します。また、必要に応じて麻痺のない側の上まぶたの皮膚も切除し左右のバランスをとるようにします。

「眼を閉じることができずドライアイになる」
 通常まぶたは内側の赤い結膜が眼球に接して、表面を涙で湿潤に保ち眼球を保護しています。眼輪筋という眼の周囲の筋肉が麻痺すると眼を閉じられなくなるとともに、下まぶたが緩んで眼球が乾燥し痛みをともなう(ドライアイ)ことがあります。側頭筋移行術は、噛む時に使う側頭筋をまぶたに移植する手術です。耳よりも上方の髪の毛の中を切開して筋肉の一部を短冊状に引っ張り出し、それにつなげて筋膜を上まぶたと下まぶたの中に通します。これにより、噛んだ時に筋肉が収縮し、まぶたも閉じられるようになります。また、下まぶたの弛緩が強い場合には、下まぶたの部分切除や耳の軟骨移植を行う場合もあります。

「口唇や鼻が麻痺の反対側にひっぱられてゆがむ」
 口輪筋や大頬筋などの口の周りや頬の筋肉が麻痺すると顔が大きく麻痺のない側にひっぱられて歪んでしまいます。麻痺が強い場合には、顔を動かしていない安静時でも顔の非対称が強くなります。筋膜移植による再建では、主に大腿部の筋膜を用いて、垂れ下がった口角を吊り上げることにより安静時の左右差が改善されます。また側頭筋移行術や遊離筋肉移植では動きのある再建が可能で、笑った時の左右差も軽減します。筋力の左右差が大きい場合や筋肉のけいれんがみられる場合はボトックス注射を併用して筋肉の弛緩を要することもあります。また形成術後しばらくしてから、つり上げの程度や動きを調整するなどの微調整が必要になる場合があります。

 上述のように個々の患者さんの症状に合わせた治療法を提案致しますので、お気軽にご相談下さい。


(形成外科部長 大島 秀男)

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形成外科Topics 損傷した神経を再生誘導する!
【神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ™)による神経再生】

 外傷や腫瘍切除などにより生じた末梢神経の断裂や欠損はその断端の端々をつないで修復するのが原則ですが、欠損断端が遠くてつなぎ合わせることができない場合は従来神経移植が行われてきました。下腿にある腓腹神経や後頚部にある大耳介神経などの自家神経を採取し、欠損部に移植することにより神経再生が得られますが、神経採取部位には知覚麻痺が生じることになります。

 近年開発された神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ™)は、神経欠損部位に自家神経のかわりに挿入・固定することにより、神経を誘導し再生することができます。特に指神経などの知覚神経の再生には有効性が高いことが報告されており、最近では顔面神経などの運動神経にも臨床応用され始めています。

 使用できる長さに限界があるため個々の神経欠損の状態により適応は異なりますが、新しい人工素材の使用により従来よりも負担の少ない神経修復治療も可能になりました。


診療科の特色

<形成外科>

 形成外科では身体表面の欠損や変形などの形態異常、機能障害に対する外科治療、顔面外傷や熱傷などの外傷全般の診療を幅広く行っています。日本形成外科学会の認定施設、日本熱傷学会の認定施設、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のインプラント実施施設に認定されています。
 主な診療内容として、耳介や口唇の変形、手指や足指の癒合などの先天異常、あざ・皮膚癌などの皮膚腫瘍、ケロイド・外傷後のひきつれやきずあと、眼瞼下垂・顔面神経麻痺後のゆがみのような顔面の変形に対する機能再建、さらには頭頚部や乳房など癌手術後の変形を手術できれいに治すことを目指しています。本冊子でご紹介した顔面神経麻痺後の形成術、眼瞼下垂症手術などの顔面機能再建の手術件数は年々増加傾向にあります。また今年度より子宮癌や卵巣癌などの婦人科癌、乳癌の手術後や放射線治療後に続発するリンパ浮腫に対する診断、治療を導入します。
 さらにきずの治療として熱傷や顔面のけが・顔面の骨折(眼窩骨折、鼻骨骨折、頬骨骨折など)、手足のけがなどの救急医療、さらに下腿潰瘍や褥瘡などのなかなか治らない慢性創傷の治療を行っています。


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