【第196号】認知症について、認知症治療薬について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第196号】認知症について、認知症治療薬について

くす通信

認知症について、認知症治療薬について

 【認知症について】

 認知症の症状は、すべての患者にみられる中核症状人によって症状が異なる行動・心理症状(BPSD)の2つに分けられます。 中核症状には記憶障害、見当識障害、失語・失認・失行、実行機能障害があり、 BPSDには、幻覚、妄想、不安、攻撃性、抗うつなどがあります。認知症を来す疾患の大部分は、以下の4つです。


1)アルツハイマー病(AD)は短期記憶をつかさどる海馬を中心に障害されていくことから、多くは物忘れから始まり、徐々に時間や場所や人がわからなくなるように認知障害が進行していきます。 BPSDとしては記憶障害が原因となる「物盗られ妄想」や「取りつくろい」、進行した見当識障害が原因となる「徘徊」がみられます。また、記憶障害から心が不安定になるため「うつ状態」や「アパシー」「不安」「易刺激性」が高頻度に認められます。


2)レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病はともにレビー小体の異常蓄積が原因で発症する疾患であり、レビー小体が大脳皮質に多く生じるとDLB、脳幹に多く生じるとパーキンソン病になります。DLBでは、認知機能の低下は一般的に病状が進行してから認められ、健常なときと低下しているときが交互に現れます。波のような認知機能の変動が見られます。DLBでは視覚を司る後頭葉に異常が生じるため「幻覚」「錯覚」「妄想」が高頻度に認められます。 また、手足の関節や筋肉が硬くなり動かしにくくなる、前屈姿勢で小刻み歩行になるといったパーキンソン症状も早期からみられます。


3)血管性認知症(VaD)は脳梗塞や脳出血などによって脳の血管循環が悪化し、神経細胞が壊死してしまうことで発症します。良かったり悪かったりを繰り返し進行し、多発性脳梗塞などでは脳梗塞が起こるたびに症状が悪化します。また、障害を起こした場所によって生じる症状も変わります。 比較的多くみられるBPSDはちょっとしたことで泣いたり、笑ったり、怒ってしまう「情動失禁」や「アバシー」「意欲低下」です。 記憶障害はみられるものの病識や判断力は比較的保たれているといった、認知機能が低下しているところと健常なところが混じり合った「まだら認知」がみられるのも特徴的です。

4)前頭側頭葉変性症(FTLD)では脳前方部の機能が低下し、脳の後方部、辺縁系、基底核系への抑制がはずれ、BPSDが生じます。 同じ行動を繰り返す「常同行動」、特定の食べ物に固執したり、過食や食の好みが変わる「食行動の異常」、行列に割り込む、万引きをする、交通ルールを無視するといった「脱抑制行動」がよくみられるBPSDです。

(精神科医長 山下建昭)

-*-*-*-*-*-     -*-*-*-*-*-

 【認知症治療薬について】

 認知症の中核症状の治療は、現在のところ記憶能力や精神機能を回復する治療法はないため、症状進行を遅らせる治療を行います。また、行動・心理症状の治療は、主に抗精神病薬を使って行います。今回は中核症状の治療薬についてお話しします。

 日本国内では4種類の薬が認知症治療薬として認可されています。これらの薬はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の2つのグループに分けられます。AChE阻害薬は神経伝達物質のアセチルコリンを分解するAChEの働きを阻害し効果を発揮します。また、NMDA受容体拮抗薬は神経を障害する過剰なグルタミン酸の作用を抑制します。それぞれ重傷度や副作用にあわせて薬を選択していきます。


 ドネペジルは本邦初めての認知症患者へのAChE阻害薬で、すべての重傷度のアルツハイマー型認知症、そしてレビー小体型認知症にも適応を持ちます。

 ガランタミンはAChE阻害作用に加え、ニコチン性アセチルコリン受容体を活性化させる効果を持ちます。

 リバスチグミンはAChE阻害薬で本邦唯一の貼付剤です。血中濃度の安定的維持が可能であり、他のAChE阻害薬と比べて消化器系の副作用発現を抑えることが出来るという特徴を持ちます。また、経口服用が不可能な方への治療継続が可能です。

 メマンチンはNMDA受容体拮抗薬と呼ばれ、上記の3剤とは異なる働きを持ちます。そのため、消化器症状などの副作用によりAChE阻害薬の使用が困難なときや、認知機能が悪化しAChE阻害薬単独での治療では効果不十分であると認められた際にAChE阻害薬と併用して使用されます。


 それぞれの薬には症状進行を抑制する作用だけではなく、副作用が現れることがあります。AChE阻害薬では、下痢や嘔吐などの消化器症状や興奮などの精神症状、貼付剤であるリバスチグミンでは貼付部位のかゆみや発赤などの皮膚症状、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンではめまいやそれに伴うふらつきが発現することがあります。


(薬剤師 工藤寛士)


診療科の特色

<精神科>

 総合病院の中にある精神科で、入院ベッドも有しています。精神面の不安定化だけでなく、身体の治療中に心理的に不安定となった方も含め、心身両面の問題を抱えた方々の治療・支援を行っております。

 救急病院は地域医療の玄関口でもありますので、患者・家族のご相談内容に合わせて多職種連携を行い、その後、かかりつけ医作りにも積極的に取り組んでおります。

 うつ病・不安障害・認知症などの外来相談も多数行っております。救急部と連携しながら精神科救急にも積極的に取り組んでおり、自傷・自死の問題については多職種連携を図りつつ全国に冠たる取り組みを行っております。


-*-*-*-*-*-     -*-*-*-*-*-

国立病院機構 熊本医療センター
診療時間 8:30〜17:00
診療受付時間 8:15〜11:00
休診日 土・日曜日および祝日

  急患はいつでも受け付けます。  

 診療科   

■総合医療センター 総合診療科、血液内科、腫瘍内科
  糖尿病・内分泌内科、呼吸器内科、腎臓内科
■消化器病センター 消化器内科
■心臓血管センター 循環器内科、心臓血管外科
■脳神経センター 脳神経外科、神経内科
■感覚器センター 眼科、耳鼻いんこう科、皮膚科
■画像診断・治療センター 放射線科
■救命救急センター 救急科
■精神神経科 ■小児科    ■外科     ■整形外科
■リハビリテーション科 ■泌尿器科     ■産婦人科
■歯科、歯科口腔外科 ■形成外科  ■麻酔科  ■病理診断科