【第194号】「脂質異常症」について、「脂質異常症の薬」について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第194号】「脂質異常症」について、「脂質異常症の薬」について

くす通信

「脂質異常症」について、「脂質異常症の薬」について

 【「脂質異常症」について】

 脂質異常症(高脂血症)とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が、一定の基準よりも高い、または低い状態のことをいいます。具体的な数値で言うとLDLコレステロール値が140mg/dl以上、HDLコレステロール値が40mg/dl未満、中性脂肪が150 mg/dl以上を脂質異常症と診断します。LDLコレステロールとは時々テレビなどで言っている悪玉コレステロールのことであり、HDLコレステロールとは善玉コレステロールのことです。テレビでは脂質異常症のことを「血液がドロドロの状態」等と言っているようです。


 脂質異常症そのものには、自覚症状はほとんどありません。しかし、放っておくと、血管の動脈硬化が少しずつ進んでいきます。動脈硬化が起こると、血管の内腔が細くなります。さらに血管そのものが固くなり、弾力性が失われます。その結果、血管が詰まったり、もろくなって破れやすくなったりします。動脈硬化症が脳に起こると、脳梗塞や脳出血に、心臓に起こると狭心症や心筋梗塞に、足に起こると末梢動脈疾患という病気になります。いずれも怖い病気で、生命が奪われることがあります。現在、日本人の約1/4が動脈硬化症を原因とした脳疾患や心疾患などで亡くなっているといわれています。


 それでは脂質異常症の治療はどのようにして行われるのでしょうか。脂質異常症の原因は人それぞれですが、多くの患者さんでは何らかの遺伝的素因(体質)を持った上に、不良な生活習慣が重なり、発症していると考えられています。そこで治療ではまず生活習慣の改善を行います。ここには食事療法、運動療法のほか、動脈硬化症のリスクを少しでも減らすため、禁煙や肥満の是正も入ります。それでも改善が十分でない時は薬物療法が行われます。医学の進歩により、LDLコレステロール低下作用の高い薬剤が増えてきました。特にスタチンと呼ばれている薬や、最近発売されたPCSK9阻害薬(注射薬)という薬では、50%~75%もLDLコレステロールを下げることができます。 これまで脂質異常症の治療を行っても、既にある動脈硬化症は治せないと言われてきました。しかしスタチンやPCSK9阻害薬で強力にLDLコレステロールを低下させると動脈硬化症が少し減ることが報告されました。まだすべての患者さんに、また元のような動脈硬化症の無い健康な血管に戻せるわけではありませんが、少しずつ医学は進んでいます。


 脂質異常症に痛みはありません。しかし放っておくと、血管の動脈硬化が進みます。脂質異常症を放置せず、適切な診療を受けてください。


(糖尿病・内分泌内科部長 西川 武志)

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 【「脂質異常症の薬」について】

 脂質異常症(高脂血症)の治療は、まずは禁煙や食事療法、運動療法などによる生活習慣の見直しから始まります。これらを行ってもそれぞれの脂質管理目標値を達成できない場合、薬による治療を開始していきます。

 脂質異常症の薬は大きく分けてLDLコレステロール低下作用のある薬、中性脂肪低下作用の薬に分けることができ、細かく分けると8つに分類することができます。下げたい脂質に合わせて薬を選択していきます。

 これらの薬の中で主な作用としてLDL-Cを低下させる薬について、どのように効果を発揮しているのかお話ししていきます。


クレストール

 まずは、これらの薬の中でよく使われるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)です。コレステロールは肝臓で作られますが、その際にHMG-CoA還元酵素という酵素が必要です。この酵素を阻害することでコレステロールの産生が抑制され、血中のコレステロールが下がります。



コレバイン

 次に、陰イオン交換樹脂についてです。胆汁酸とは食物の脂肪を吸収しやすくするための物質です。この胆汁酸はコレステロールから作られるのですが、一部が消化に使われた後再び体内に吸収されて戻ってきます。陰イオン交換樹脂はこの再び吸収される過程を阻害します。新しく胆汁酸を作る際コレステロールを使うことから血中のコレステロールを下げることが出来ます。



ゼチーア

 次に、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬についてです。この薬は食事などにより摂取したコレステロールの吸収に重要な働きをするコレステロールトランスポーター(輸送体)を阻害します。そのため血中のコレステロールを下げることが出来ます。



レパーサ

 最後にPCSK9阻害薬についてです。LDL-Cを下げるためには肝細胞内にLDL-Cを取り入れるLDL受容体というものが必要になります。この薬はこのLDL受容体が分解され減少することを阻害することでLDL受容体の数を保ち、血中のLDL-Cを肝細胞内に取り込みコレステロールを下げることが出来ます。


 それぞれの薬にはコレステロールを下げる良い面だけではなく、注意する副作用症状があります。例えば、スタチンやフィブラート系の薬にて代表的なものに横紋筋融解症があります。その際、筋肉痛、脱力感、褐色尿などの症状が現れてきます。陰イオン交換樹脂薬では腸閉塞に注意が必要です。

 もし、薬を服用していつもと違った症状が現れることや、気づいたことがあればすぐに医師や薬剤師に相談するようにして下さい。また、飲み合わせの悪い他の薬や食品等もあるため、服用を開始する際は医師や薬剤師にご確認ください。

(薬剤師 田代 佳奈子)


診療科の特色

<糖尿病・内分泌内科>

 糖尿病内分泌内科では代謝・内分泌疾患の専門的診療を行っています。代表的な代謝疾患として糖尿病、脂質異常症などがあり、内分泌疾患として甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病・バセドウ眼症など)、下垂体疾患(先端巨大症・クッシング病・尿崩症など)、副腎疾患(副腎腫瘍・クッシング症候群・原発性アルドステロン症など)があります。
 糖尿病教育入院では、糖尿病合併症の詳しい検査を行うとともに、独自の糖尿病教育パンフレットを使用し、各職種が担当する糖尿病教室(週4回)も行っていますので、糖尿病の基本である「自己管理のための知識と技術」を短期間で習得できます。また妊娠糖尿病患者さんの診療や2次性高血圧症の原因を調べる検査入院なども積極的に行っています。

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