【第193号】「悲しい気持ち」について、「悲しい気持ちの時に処方される薬」について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第193号】「悲しい気持ち」について、「悲しい気持ちの時に処方される薬」について

くす通信

「悲しい気持ち」について、「悲しい気持ちの時に処方される薬」について

 【「悲しい気持ち」について】

 幼い頃、転けて膝を擦りむき泣きだすと、決まって言われることは「大丈夫よ、しっかりしなさい。泣くことはないのよ」と。大人になるとヒトは自分の悲しみや苦しみなど自分の感情を表現することは少なくなります。悲しみは心の奥にこっそりしまっておくべきこととされているのです。ヒトは辛い・苦しい・悲しいという感情をうまく処理する方法を知りません。悲しみ方を知らないのです。

 この冊子を手にしているあなたにとって、悲しみ方を知ることはとても重要なことです。悲しむことを軽くみていると、心理的にも身体的にも大きな障害を残すことがあります。

 あなたの病気は「進行したがん」ですよと告げられることは、とてもつらい・悲しい出来事です。同じような出来事として、肉親との死別、失業、離婚、事故などが挙げられます。命や生活に直接大きな危機を及ぼすこのような場面で、心は深く傷つき、「悲しい気持ち」を持つのです。そのとき、あなたの心の中(脳内)では、脳の中心に位置する「扁桃体」という部位が、危機をいち早く察知します。扁桃体が活動することにより、悲しみ・怒り・恐怖・不安といった感情(つらい気持ち)が作りだされるのです(図2)。



 悲しむことは消極的なことや破壊的なことではありません。むしろ創造的なことです。辛い出来事は、あなたに悲しみをもたらします。そしてあなたは苦しみ、気分が沈みます。これら陰性の感情は無視すると去って行くと思われがちです。体の傷と同じように、心の問題もすぐに解決すると期待します。しかし、悲しみは簡単に心から取り除くことはできません。

 あなたは静かに座り、自分の悲しいという感情を感じながら、しばらく不快な感情を感じることが大切です。ゴミ箱に捨てるような不要なものではありません。正面から向かい合い、敬意を払わなければなりません。いろいろなことを感じ・考えましょう。悲しみを受け入れることで、心地よい時間が持てるようになり、出来事の意味や価値が理解できるようになります。悲しみは深いレベルであなたに語りかけてくるでしょう。悲しみは、あなたの人生や周囲の人間関係を変化させます。自分を見つめ直し、成長させ、自分の存在価値を再発見する良い機会になるでしょう。

 悲しみを乗り越えるための創造的な行動として、自分の悲しみを感じること、理解すること、時間をかけること、許すこと、日常生活を続けること、瞑想すること、静かな時間を持つこと、日記や文書にまとめること、祈ることは有用です。あなたはどうしても孤立しがちです。自分の悲しみを言語化あるいは文書化して他のヒトに伝え、苦しみを共有して貰うことが大切です。悲しい気持ちは十分に癒やされるでしょう。

 何かと忙しい現代社会において、最も悲惨なことは心の触れあいがないことです。心は、われわれの真実、正直、勇気、創造、想像の根源で有り、神聖や気持ちの宿る場所です。癒された心を通して、あなたは自分の存在を感じ、自分や自分の運命を信じ、理性を持つことが可能になります。心を大切にすることで、きっと希望の光が見え、勇気が湧き、発想が浮かび、心の平安が訪れることでしょう。

(腫瘍内科部長 境 健爾)

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 【「悲しい気持ちの時に処方される薬」について】

 悲しい気持ちの時に処方される薬には、以下のようなものがあります。

 薬物療法のSTEP1はベンゾジアゼピン系抗不安薬です。肝機能障害があったり、高齢であったり、全身状態が良くない場合は、例に挙げた投与量の半量程度から開始することもあります。また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性が特徴ですので、まずは頓用で開始してみて、効果があるようなら表に示したように1日数回にわけて服用する方法もできます。効果の有無は数日で判断しても良いかと思いますが、1週間たっても「楽になった」と患者さんが感じない場合は、次のステップに進む必要があります。副作用として典型的なものは、眠気とふらつきですが、これらが強い場合は減量を行います。また、こうした薬は長期使用で依存の問題も生じることがありますので、長期の使用はさけ、おちついたら減量中止することも必要です。

引用・参考文献/PEACE project緩和ケア研修より

 STEP2は抗うつ剤です。最近の抗うつ剤は、効果発現が比較的早くなりましたが、約2週間の期間が必要です。そのため約2週間の継続服用後に効果判定となります。服用初期には吐き気が出現することもありますが、次第に消失することもあり、耐えられる吐き気であれば継続服用をお勧めします。眠気、尿閉などの副作用もみられることがあり、服用継続が困難であれば、他の抗うつ剤へ変更します。

(精神科医長 山下 建昭)


診療科の特色

<腫瘍内科>

 2015年4月腫瘍内科が活動を開始しました。すべてのがん種、すべての病期に対応します。院内の化学療法症例の約40%を、また終末期緩和ケア症例の約50%を 腫瘍内科が主治医として担当しています。その他の各診療科が担当する症例に関しても、外来カンファランスや回診を通して腫瘍内科で把握し、必要に応じて介入する体制を整備し、薬剤部や看護師とともにチームで「がん薬物療法」を集中管理する体制が整いました。

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