【第190号】高齢者の足の付け根の骨折について、大腿骨頸部骨折地域連携クリティカルパスについて | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第190号】高齢者の足の付け根の骨折について、大腿骨頸部骨折地域連携クリティカルパスについて

くす通信

高齢者の足の付け根の骨折について

大腿骨頸部骨折地域連携クリティカルパスについて

 【高齢者の足の付け根の骨折について】

 お歳を召せば、交通事故や転落事故などのような大きな衝撃を受けなくても、転倒などの比較的軽微な外力で脚の付け根の骨折(詳しく言えば、大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折の大きく二つに分けられます)を起こしてしまいます。これは、骨粗鬆症によって骨の強度がすごく低下してしまったことが原因です。 また、寝たきりやそれに近い状態になっている人では骨の強さはさらに弱くなっていて、おむつ交換をする時に骨折を起こしてしまうことも稀ではありません。


『治療は?』

 骨折の治療は、ギプスなどで骨折部を固定する保存的治療と手術的治療の二つに分けられます。しかし、保存的治療では骨がくっつかなかったり、骨はくっついても曲がってくっついて後遺症を残すことが多く、骨癒合にも数ヵ月を要するため、ご高齢者に長期の寝たきりを強いることにより褥創(床擦れ)ができてしまったり、肺炎が生じたりという合併症が発生してしまいます。
 そのため、患者さんの全身状態が手術に耐えられると予想できる場合には、手術によって治療する方が痛みも早く取れて患者さんのためになると多くの整形外科医は考えています。手術は骨接合術と人工骨頭置換術のいずれかが行われるのが普通です(以下レントゲン写真)。


『術後のリハビリは?』

 手術で骨折の痛みが和らぎますのでリハビリは翌日から開始します。ただ、国の施策として、手術を行う病院とリハビリを行う病院を機能分担する仕組みができあがっているため、手術をした担当医が「術後は他の病院へ転院してリハビリを受けて下さい」というような説明をする場合が多くなりました。※下参照



『その後の経過は?』

 歩行能力の回復には、受傷前の歩行能力と年齢が大きく影響します。受傷前によく歩けていた人は、より回復しやすいということです。しかしながら、すべての患者さんが元通りの歩行能力を獲得できるかと言えば、残念ながら答えは「いいえ」です。受傷前に屋外活動を1人で行うことが可能であった患者さんでも、半年から1年後に元通りに近い歩行能力を獲得できるのは、全体の50%程度にすぎません。


『そうならないためには』

 したがって、骨折のリスクを前もって減らすことが大切であり、予防のためには骨粗鬆症の治療を早めに始めておくことやロコモティブシンドローム(運動器症候群)に対するトレーニングが推奨されています。まさに「転ばぬ先の杖」ならぬ「転ばぬ先の治療」で避けられる骨折を経験せずに生きることが理想だと思います。

(整形外科医長 松下任彦)

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 【大腿骨頚部骨折 地域連携クリティカルパスについて】

 高齢者に多く発生する大腿骨近位部(頚部・転子部)骨折は、手術による早期離床を治療の原則とする反面、術後長期のリハビリを必要とします。以前は、手術をした病院が退院までのリハビリを担当していましたが、医療機関の機能分化に伴い最近はそういうことも難しくなってきました。この大腿骨近位部骨折は手術を担当する病院とリハビリを担当する病院との間でのより緊密な医療連携を必要とするようになった骨折といえます。

 高齢者に多く発生する大腿骨近位部(頚部・転子部)骨折は、手術による早期離床を治療の原則とする反面、術後長期のリハビリを必要とします。以前は、手術をした病院が退院までのリハビリを担当していましたが、医療機関の機能分化に伴い最近はそういうことも難しくなってきました。この大腿骨近位部骨折は手術を担当する病院とリハビリを担当する病院との間でのより緊密な医療連携を必要とするようになった骨折といえます。

 それぞれの病院での入院期間内に標準的な結果を得るために、患者様に対して最もかかわる医師・看護師が行うべき手順と時間のリストとして「クリティカルパス」というツールがあります。我々は手術を担当する急性期病院と術後のリハビリを担当する回復期施設との施設間の垣根を越えた「大腿骨頚部骨折地域連携クリティカルパス」を平成16年4月から稼働させています。急性期、回復期双方の記入(入力)欄を設けてあるこのパスは、幾度も改訂を重ねて、現在は独自のサーバーで管理されたオンライン入力可能なデータベースとなりました(図1)。



 以前は、転院先で同様の患者様を複数の急性期病院から受け入れており、原則として、それぞれの急性期病院の治療計画に従って治療が行われてきていたために、同一施設内でバラバラな医療が行われていましたが、連携パス導入後はこれらの問題も次第に解消されていくこととなりました。連携医療機関での定期的な会合の場(熊本大腿骨頚部骨折シームレスケア研究会)も設けてあり、パスの内容の解析で改良を重ねながら、標準的な医療の確立を目指しています。適切な入院期間やリハビリの到達レベルなどもある程度予測可能となり、医療の効率化、早期からの介護保険介入、患者様の医療費負担の軽減にもつながってきています。手術された患者様についての確実なフィードバックツールでもあり、手術を担当した医師のみならず、患者様、ご家族の不安解消にも役立つものと考えています。

(整形外科医長 前田 智)


診療科の特色

<整形外科>

 整形外科医は現在8人でそれぞれの専門分野である脊椎、関節、リウマチ、四肢外傷を中心に診療を行っています。外来診療日は月・水・金曜日で、外来通院でのリハビリは行っていません。
 年間手術数は1,000例を超え、外傷に対する手術が約半数であり、その中でご高齢の患者様の脚の付け根の骨折の手術は300例近くを占めます。脊椎手術と人工関節手術がそれぞれ約150例であり、火・木曜日が手術日となっていますが、手術はほぼ毎日行われています。また、ご高齢や合併症をお持ちの患者さんは他科と連携して安全に治療を進めています。
 手術後に転院してリハビリを継続する場合でも、多くの病院との医療連携に早くから取り組んでいますので安心して治療を受けられます。

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