【第188号】顔面痙攣について、ボツリヌス毒素による注射療法について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第188号】顔面痙攣について、ボツリヌス毒素による注射療法について

くす通信

顔面痙攣について、ボツリヌス毒素による注射療法について

 【顔面痙攣について】 脳神経外科より

1) 顔面痙攣とは

 顔面痙攣は、顔の半分が自分の意図とは関係なく痙攣する疾患です。目の周囲から始まりだんだん口元へと広がります。顔面神経に血管が接触して圧迫することが原因で起こります。中高年の女性に多い傾向があります。緊張した時などにごくたまに起こる軽度の痙攣は経過観察でよいのですが、接客業で外見上問題になる、運転する場合に痙攣が起こってうまく見えないなど日常生活に支障が出るときは治療を検討します。

 治療法は2つあり、顔面神経に接触している血管をどけてあげる微小血管減圧術という手術とボツリヌス毒素治療です。

2) 顔面痙攣の診断

 顔面痙攣がある方にMRIを行い、顔面神経周囲を細かく観察すると顔面神経の根元に動脈や静脈が付着していることがあり、これらが原因ではないかと推測できます。まれに脳腫瘍や脳動脈瘤が原因のことがあり、これらもMRIで調べることができます。

MRI装置3テスラ

3) 顔面痙攣の治療
a) 手術療法

 手術は微小血管減圧術と呼ばれます。脳の橋という部分から顔面神経は出てくるのですが、その部分で神経に接触する血管を剥離して移動します。手術は全身麻酔で行います。痙攣している側の耳の後ろの皮膚を切開し、骨を取り除き、頭蓋内に入ります。小脳を軽く押さえながら、顔面神経を観察し、血管を移動させます。骨を戻し、皮膚を縫合して手術を終了します。

 術後は7日程度で抜糸でき、10日程度で退院できます。顔面痙攣は術後すぐに消失することもありますが、徐々に消失することも多く、長い人で1年ぐらいかかる人もいます。

 手術の効果は報告で差がありますが、80%から90%の方が、痙攣の消失や軽減が得られています。

a) 手術療法

 ボツリヌス毒素は食中毒で問題になる毒素です。筋肉の麻痺を起こします。この作用を利用し、薬として利用しています。顔面の筋肉に注射することで痙攣が起こりにくくなります。1回の治療で3月ほど効果が持続します。根本治療ではありませんが、入院の必要がないのが利点です。

(脳神経外科医長 坪田 誠之)

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 【ボツリヌス毒素による注射療法について】 薬剤部より


 顔面痙攣にはボツリヌス毒素による治療、内服(抗てんかん薬・向精神薬・抗けいれん薬)療法、手術療法などの治療法があります。今回ボツリヌス毒素による治療法について説明します。

1)   ボツリヌス毒素とは

 食中毒の原因となる毒素で、ボツリヌス菌より産出されます。通常酸素のない状態になっているビン詰、缶詰、容器包装詰め替え食品、保存食品などの食品が原因となり発生します。ボツリヌス毒素が全身にまわると、筋肉に麻痺がおこります。そのため重症例では呼吸ができなくなり死に至る場合があります。


2)   顔面痙攣に対するボツリヌス毒素治療

 ボツリヌス毒素を微量に顔面などの筋肉に注射することで人工的に顔面神経麻痺を起こし、筋肉の余計な動き(痙攣)をとるのがこの治療法です。その効果は3~4ヶ月間持続し、効果がなくなった時期をみて再注射します。保険適応外で美容整形での目元や口元のしわ取りにもボツリヌス毒素は使われています。

3) ボツリヌス毒素治療の安全性

 もともと筋肉の麻痺を起こす治療法ですので、口や目の周囲の麻痺が起こります。瞼が開けにくくなったり、物が二重に見えたり、顔の表情が少し変わってしまうことがあります。多くは軽い麻痺で薬の作用が減弱する1~2週間程度で改善します。また顔面の筋肉に直接局所投与するため全身への影響はありません。

4) ボツリヌス毒素の管理

 医師であっても使用にあたり講習を受けて資格を取得することが義務づけられています。医療用麻薬並みの管理と納入・毒素の失活・廃棄の記録が要求されています。投与後残った薬液以外にも使用した器具なども毒素を失活させてから廃棄されています。

 お薬のことで分からないことがありましたら医師・薬剤師にご相談ください。


(薬剤師 三浦 布紗子)


診療科の特色

<脳神経外科>

 脳神経外科は平成6年に開設され、平成9年には日本脳神経外科学会専門医教育認定施設となり、研修指導を行っております。平成17年度からは日本脳卒中学会専門医認定教育施設に認定され脳卒中診療に、また、頭部外傷治療を中心に意欲的に取り組んでおります。


顕微鏡下手術の様子
三鷹光器社製MM80
 専用の手術室も整備され、脳神経外科手術用顕微鏡(三鷹光器社製MM80)が導入され、術中のICG蛍光血管撮影装置(三鷹光器社製F-light 300)や術中の誘発筋電図(MEP、SEP日本光電)も整備されましたので、顕微鏡手術の安全性・確実性は更に向上されました。現在スタッフは3名ですが、豊富な入院患者数および手術実績を背景に、満足のいく治療成績を提供できるものと思っております。


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