【第187号】顔面神経麻痺について、顔面神経麻痺のリハビリについて | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第187号】顔面神経麻痺について、顔面神経麻痺のリハビリについて

くす通信

顔面神経麻痺について、顔面神経麻痺のリハビリについて

 【顔面神経麻痺について】

 「朝起きて鏡見たら顔が曲がっていた」、「うがいすると水が口の横から漏れる」などなど。これが顔面神経麻痺で来られる患者さんの多い症状です。顔面神経は脳から出ていくときは1本の神経ですが、末梢になるにつれ5本の神経に分かれ、額、目の周囲、頬、口の周り、首の皮膚のすぐ裏にある筋肉をそれぞれ支配します。すなわち顔の筋肉の運動神経です。その他味覚、音の響き、涙分泌など多彩な働きをしています。したがって、顔面神経が麻痺をきたすと、主に顔の筋肉が動かなくなって曲がって見えるようになるのです。しかし顔面神経は知覚神経ではないのでしびれはありません。当科でも年間20人前後の患者さんが紹介され治療しています。

 原因はヘルペスウイルスなども原因となりますが、はっきりわからない特発性のもの(発見した人の名前をとってベル麻痺といいます)が最も多いです。

 本疾患には中枢性(脳腫瘍など脳の病気で起こるもの)と末梢性(神経の末端に近い部位)とありますが、我々が取り扱う本疾患は末梢性です。これを見分ける簡単な方法があります。それは額のしわ寄せができるかどうかです。できれば中枢性、できなければ末梢性の可能性が高いです。末梢性であればぜひ耳鼻科を受診してください。耳鼻科では様々な検査を行いますが、末梢性顔面神経麻痺と診断されれば次は治療です。 治療にも様々な治療がありますが、当科ではステロイドの点滴による治療を行っておりますが、入院が必要で10日程度です。顔面だけなのになぜ入院という疑問がわくでしょう。
これには2つ理由があります。


入院する理由① 副作用の管理ができる

 ステロイドの副作用として5大副作用というものがあります。 胃潰瘍、易感染性、不眠(精神症状)、骨粗しょう症、高血糖です。易感染性、骨粗しょう症などは我々の治療ではほとんど問題にはなりませんが、胃潰瘍になったことのある方、糖尿病で治療中の方(今増加中)、精神科で治療中の方は問題になってきますので入院管理の上で治療を行います。不眠などは患者さんのほぼ全員にあらわれます。


入院する理由② 現実から切り離す

 本疾患の原因としてストレスが最も考えられている原因の一つです。入院させるのはこのストレスから切り離すためでもあります。家庭の事情、家事、仕事のことなど、いろいろ患者さんによって様々ですが、現実から切り離すためです。

 また数パーセントに自然治癒例があります。手術療法もあり、薬物療法で改善が見られない場合に行いますが、これによって難聴が起きることがあります。

 治療効果は、発症してから治療までが早ければ早いほど上がります。一般的に10日以内に治療を開始すれば80%は効果があります。2週間を超えますとほとんど効果は見込めません。麻痺が改善するには4~6か月程度かかりますので、当科退院時に麻痺に変化がなくても悲観することはありません。

(耳鼻咽喉科医長 上村  尚樹)

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 【顔面神経麻痺のリハビリについて】

 当院では、顔面神経麻痺を発症して間もない発症~約2週間の急性期患者に対するリハビリテーションを行っております。

 顔面神経麻痺は、その程度や時期によりリハビリテーションの方法と目的が異なってきます。急性期リハビリの目標は、顔面神経の迷入再生による病的共同運動と顔面拘縮の予防と軽減になります。方法としては、温熱療法やマッサージ、ミラーバイオフィードバック療法や運動・生活指導など以下のリハビリを状態に応じて導入していきます。

内容> 温熱療法

 マッサージや運動前に局所を蒸しタオルで暖め、血流の改善や顔面のこわばりの改善を図ります。


マッサージ

 麻痺した顔面筋の収縮方向に伸張マッサージすることで、こわばりやそれに伴う痛みを軽減させます。


口周りの筋肉を伸ばす様にストレッチ

口を縮める運動

ミラーバイオフィードバック療法

 鏡を見ながら表情筋の動きをコントロールするリハビリテーションです。発症した病的共同運動を治癒させることは難しいため、病的共同運動の発症自体を予防させる目的に行います。

 ※鏡を見ながら左右の眼裂幅の対称性を保つように意識してゆっくりとした口運動(ウーと口をとがらせる、イーと歯を見せる、プーと頬を膨らませる)をする。


運動・生活指導

 食事の時や話をする時などには意識して口を動かす。口の周りの筋肉を動かすときに、なるべくおでこや目の筋肉を動かさない。目と口が一緒に動かないようにゆっくり軽く動かすようにイメージ療法を取り入れてもらいます。


発音の訓練

 顔面神経麻痺になると、言葉がはっきり喋れなくなる言語障害も起こることもあり、上記リハビリと併用して発音の訓練も行う場合があります。


 治そうという気持ちを強くもち、常に前向きな姿勢でいることで自然治癒力が高まり、麻痺の回復にも繋がります。審美的問題にも関わる為、前向きな気持ちになりにくいかもしれませんが諦めず継続することがとても大切です。


(言語聴覚士 鶴田 紫央里)


診療科の特色

<耳鼻咽喉科>

 当科では耳鼻咽喉科・頭頸部外科全般を取り扱っています。開業医の先生方よりご紹介いただき必要により入院・手術を行っています。鼻出血や、めまいなどの耳鼻咽喉科救急疾患にも救命救急センターの医師の協力により対応しています。 手術は慢性中耳炎などの耳科手術から副鼻腔炎に対する鼻科手術、さらには扁桃摘出術や、口腔・舌疾患から声帯ポリープなどの喉頭疾患に対するレーザー手術、頸部疾患(唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍など)に対する頭頸部外科手術まで幅広く対応しています。悪性疾患の治療も行っていますが、再建手術の必要な進行癌は大学病院を紹介しております。現在、嚥下改善手術、誤嚥防止手術にも取り組んでおります。現在常勤医が一人体制のため、急患は可能な限り受け付けておりますが、都合により受け付けできない場合もあります。


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