【第150号】糖尿病網膜症について、 眼科の検査について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第150号】糖尿病網膜症について、 眼科の検査について

くす通信

糖尿病網膜症について、 眼科の検査について

 【糖尿病網膜症について】

 糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症として腎症・神経症とならび重大です。初期のうちは自覚症状がないために、知らないうちに進行し失明に至ることもあり、日本人の中途失明原因の第2位を占める病気です。

 網膜症の発生は、糖尿病にかかってからの期間とコントロール状態に関係します。通常、5年以内に20%、10年で30%、20年で70%に網膜症が起こるとされており、年数とともに確実に増加します。

 網膜は、眼球の内側の壁を覆う透明な膜で、ものを見る働きの細胞1個1個につながっている神経線維が並んでシート状になり、その神経線維を支える細胞やそれらを栄養とする毛細血管が張り巡らされています。シートの中央の1.5㎜程の小さな領域は黄斑と呼ばれ、感度の高い細胞が集まっています。この黄斑部が障害されないうちは、周りに小さな出血がたくさんあっても、視力低下は自覚しにくいのです。

 高血糖にさらされ続けた網膜の微細な血管の壁は、傷ついて血液の成分がしみだしたり、内腔が詰まったりして、網膜に白い濁り(白斑)や出血を生じます。それがたくさんになっていくと網膜自体も傷んでいきます。血液不足になった部分に新生血管という異常なもろい血管が出てきて、そこからまた出血するという悪循環に陥るのです。網膜の表面を破って眼球の内側に流れ込んだ出血は、本来血液と触れ合うことのない眼球内容の硝子体と反応し硬い膜となります。この増殖膜が収縮して網膜を引きはがし、失明に至る網膜剥離となるのです。また、黄斑部に近い微細血管の漏れは黄斑網膜の腫れ(浮腫)をおこし、失明まではなくとも高度の視力障害となります。

 治療は、網膜症の進行がみられる場合、汎網膜光凝固術というレーザー治療が有効です。また、硝子体手術という手法で、眼内の出血を取り除いたり、網膜の前に張り巡らされてしまった増殖膜を取り除く非常に難易度の高い手術を行います。しかし、本当のところは網膜症を悪化させないような糖尿病自体の血糖コントロールが一番の治療です。内科主治医の先生の指導に沿った食事療法、運動療法、薬物治療などの内科的治療が基本となります。網膜症に対抗するには、自分の血糖値、ヘモグロビンA1cの値を受診の都度きちんと知っておくことが大事です。そのうえで、血糖のコントロールが悪い人で1~2か月おき、安定している方でも3~6か月おきに継続的に眼底検査を受けていくことが肝要です。

糖尿病網膜症の眼底写真

(眼科部長 近藤 晶子)

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 【眼科の検査について】

視力検査
 誰もが学校や会社で受けたことのある、眼科検査の中で最も身近で基本的な検査のひとつです。5m離れたところからランドルト環と呼ばれる「C」の形をした絵図や、文字が並んだ視力検査表を見て、どの大きさまで見えるかを調べます。肉眼で見た視力(裸眼視力)と眼鏡を掛けた視力(矯正視力)をそれぞれ片眼ずつ測定します。視力検査は重要で、近視や遠視、乱視などの屈折異常がわかるのみではなく、矯正視力が1.0以上出ないときは何か異常があると判断します。眼科で見え方を評価するのは矯正視力です。矯正視力が病気の診断に重要になります。 視力検査

眼圧検査
 眼圧とは目の堅さのことをいい、正常範囲は10~21mmHgといわれています。眼圧が高くなると視神経がダメージを受け、視野が欠けたり、視力が低下することがあります。これが緑内障です。眼圧検査は緑内障の診断・治療の過程で重要であり、不可欠な検査です。一般的な測定方法は、器械の顎台に顎を乗せてもらい、目に風を数回当てて測定します。 眼圧検査

細隙灯顕微鏡検査
 視力・眼圧・眼底検査とともに、眼科検査の基本的かつ重要な検査のひとつです。細隙灯というスリットランプからの細い光を目に当て、それを顕微鏡で拡大することで、肉眼ではわからない細かな部分まで観察が可能です。黒目の表面(角膜)や白目の表面(結膜)、茶目(虹彩)などの傷や炎症、白内障など多くの目の病気が診断できます。 細隙灯顕微鏡検査

視野検査
 視野とは、ある一点を見つめたときに見える範囲をいいます。視野検査は、緑内障や視神経の炎症、脳腫瘍など視野が欠ける病気の診断や治療効果を判断するときに使います。この視野を調べる検査には、視野の全体の広さを調べる「動的量的視野検査」と、視野内の感度を調べる「静的量的視野検査」があります。どちらの検査も暗室で行います。 視野検査

眼底検査
 ひとみ(瞳孔)に光を入れ、目の内側の膜(網膜)や眼底の血管、視神経などを観察する検査です。眼底の血管は人間の体の中で唯一直接血管を観察できる部位のため、全身状態を推測できます。眼底検査ではほとんどの場合、瞳孔を大きく広げたままの状態にする散瞳薬という目薬を使って検査をします。こうすることで周辺まで眼底全体を観察することができます。しかし、点眼して瞳孔が十分に広がるまで最低30分かかります。また、瞳孔が開くことによりまぶしく感じたり、ピントが合いづらくなるため、近くが見えにくくなります。個人差はありますが、散瞳薬の効果は3~5時間続くため、車やバイクの運転は事故につながる恐れがあるので、しばらくは控えてください。 眼底検査

(視能訓練士 山﨑香奈)


診療科の特色

<眼科>

 眼科は感覚器センターの1部門として、耳鼻咽喉科や皮膚科をはじめ、他の診療科と協力しながら診断および治療を行っています。月水金が外来診療日で、火木は手術日です。
 外来診療のスタッフは、3名の医師と2名の視能訓練士、3名の看護師、2名の医師事務補助者です。基本となる矯正視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査を中心とし、更に疾患に応じた精密検査を行います。血液検査や放射線検査など病院の検査部門の利用のほかに、眼科内で独自に行う多種の検査があり、専用の精密機器を備えています。
 手術は、入院によるものが基本で、白内障手術の症例数が最も多く、緑内障、網膜硝子体疾患や翼状片、眼瞼の疾患も扱っています。

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