【第149号】多発性骨髄腫について、 骨髄穿刺検査について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第149号】多発性骨髄腫について、 骨髄穿刺検査について

くす通信

多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)について、 骨髄穿刺(こつずいせんし)検査について

 【多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)について】

イラスト

 骨髄?骨?腫瘍?病名からはどんな病気かわかりにくいと思いますが、実は血液のがんの一種です。

 骨の中には骨髄と呼ばれる、血液を造る場所があります。その中にある、形質細胞と呼ばれる白血球の一種が悪性化して増殖する病気が「多発性骨髄腫」です。形質細胞は免疫グロブリンを造る細胞なので、骨髄腫細胞も異常な免疫グロブリン(M蛋白)を造ります。また骨髄腫細胞の影響で様々な物質(サイトカイン、ケモカイン)が産生されます。これらのため貧血などの造血障害、腎障害、高カルシウム血症、骨病変(痛みや骨折)、感染症にかかりやすいといったことがおこります。

 検査としては血液検査、尿検査でM蛋白の有無を調べ、骨髄穿刺で骨髄にどのくらい形質細胞が増えているかを調べます。病気の進行度の検査としては血液検査(貧血の有無や腎機能、カルシウム等)や骨病変の検査(レントゲン、CT、MRI)が必要です。

 多発性骨髄腫は、治癒が難しく再発率も高い病気ですが、進行はゆっくりです。治療の目標は寛解(骨髄腫細胞が検査でみつからないレベルまで減少すること)を達成し、それをできるだけ長期間維持することです。ただし、早期に治療を開始したからといって治癒が確実に見込めるわけではありません。また、薬の副作用で生活の質が一時的に落ちますので、すぐには治療を開始しない場合もあります。特に自覚症状のない「無症候性骨髄腫」の方は2~3ヶ月毎に血液検査を行い、進行の有無のみを確認します。一方、貧血、腎障害、高カルシウム血症、骨病変のいずれかが出現する「症候性骨髄腫」の場合は治療を開始します。

 治療は、抗癌剤やステロイドが主体になりますが、この数年で新薬3種類が日本でも使用可能となり治療成績は向上してきました(レブラミド、サリドマイドは再発難治のみ使用可)。初回治療は新薬ベルケイドを含む化学療法が標準的治療となりつつあり、65歳以下の方ではさらに自己末梢血幹細胞移植併用大量化学療法まで行うのが標準的です。 イラスト また痛みの強い部位や骨折の危険が高い部位には放射線照射を行うこともあります。以前と比較し寛解率は上昇し、また再発後でもレブラミドやサリドマイドで病気を長期間コントロールすることも可能となってきました。さらに新薬の開発も進んでいます。まだまだ治癒の難しい病気であることに変わりはありませんが、病気をコントロールし、鎮痛剤の使用や輸血、感染症治療といった支持療法をあわせて行うことで、クオリティ・オブ・ライフを保っていきたいものです。

(血液内科医長  原田 奈穂子)

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ほね

 【骨髄穿刺(こつずいせんし)検査について】

骨髄とは

 骨髄とは骨の中にある柔らかい組織のことで、主に赤血球や白血球のような血球系の細胞とそれらを支える間質細胞からなります。
 血球を作っている骨髄は赤色をしていますが、加齢とともに血球を作る機能は衰えて骨髄は脂肪化し黄色になってしまいます。

骨髄穿刺検査について
  • 検査の目的
    白血病・貧血・骨髄腫・がんの骨転移などの診断をする際に骨髄穿刺検査を行い、血液を作る能力や異常細胞の有無を見ます。
  • どのように行うのか
    胸の正面にある胸骨、あるいは腰の横にある腸骨からとる方法があります。
      採取する場所を局所麻酔して、骨に穴を開け、そこに注射針を刺して、骨髄液を採取します。
  • 骨髄穿刺後の検査
    骨髄穿刺後は標本を作って染色をし、顕微鏡で観察を行います。
骨髄標本
骨髄標本の染色には主にギムザ染色が用いられ、細胞は写真のように染まります。

  • 症例
    多発性骨髄腫
    多発性骨髄腫は骨髄中に異常な形質細胞が増加する病気です。
骨髄標本
顕微鏡では写真のように見えます。濃く青色に染まっている細胞が形質細胞です。

 また多発性骨髄腫では蛋白分画検査も診断に使われています。
 蛋白質にはアルブミンとグロブリンがあり、さらにグロブリンはいくつかの種類が存在します。それをわかりやすく分けるのが蛋白分画です。
 蛋白分画では血液あるいは尿に電気を流して泳動することでM蛋白を証明できます。

蛋白分画検査・正常 蛋白分画検査・M蛋白血症

 左の図が正常の分画パターンです。
 多発性骨髄腫などのM蛋白血症(血液中にM蛋白が増えている状態)を呈する疾患では右の図のような分画パターンになります。


最後に

 骨髄穿刺検査を行うことで、採血ではわからない多くの情報を得ることができます。
 特に血液疾患が疑われた場合には早期診断・早期治療の一助となる大切な検査です。

(臨床検査科 血液検査部門  大野 剛史)


診療科の特色

<血液内科>

 血液に異常を来す疾患を診療しています。赤血球や白血球、血小板の増加や減少をきたす疾患やリンパ節腫大、出血傾向などが診療対象で、鉄欠乏性貧血をはじめとする種々の貧血、多血症、白血病や悪性リンパ腫といった造血器悪性腫瘍など様々な疾患が含まれます。
 当科の特徴として成人における同種造血幹細胞移植を行っており、日本骨髄バンクと日本臍帯血バンクの認定施設となっています。6南病棟には15床の無菌室病棟が設置されており適応に応じて自己末梢血幹細胞移植、同種骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、臍帯血移植が可能です。県内外から紹介される患者様を受け入れ、年間50例前後の造血幹細胞移植を行っています。

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