【第144号】妊娠糖尿病について、妊娠糖尿病の食事について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第144号】妊娠糖尿病について、妊娠糖尿病の食事について

 
くす通信

妊娠糖尿病について、 妊娠糖尿病の食事について

 【妊娠糖尿病について】

   
はじめに
 妊娠糖尿病が増えているのをご存じでしょうか。平成22年9月に妊娠糖尿病の診断基準が変わり、今まで診断されなかった軽い妊娠糖尿病が、もれなく診断されるようになりました。このため平成23年度の妊娠糖尿病の入院患者は、平成21年度の約2.5倍にまで一気に増加しました。
妊娠糖尿病の定義
 妊娠糖尿病と診断するためには、妊娠する前には糖尿病がないことが前提となります。日本糖尿病学会の定義では、少し難しい表現になりますが「妊娠中に発症した、あるいは妊娠中にはじめて発見された軽度の血糖値の異常をいい、明らかな糖尿病は妊娠糖尿病には含めない」となっています。
妊娠糖尿病の原因
 胎盤から出てくる因子(ホルモン)が原因です。このホルモンはインスリン(血糖を下げるホルモン)の働きを弱めます(インスリン抵抗性の増加)。このため妊娠中は、より多くのインスリンを分泌しないと血糖値を正常に保つことが出来ません。 正常妊娠では、インスリン抵抗性があっても、それに打ち勝つだけのインスリンが十分に分泌されますので血糖値は正常のままです。
 しかし妊娠糖尿病の膵臓には、インスリン分泌に関して、ごくわずかな異常があるようです。このため妊娠するとインスリン抵抗性に見合う分のインスリンが適正に出せなくなり血糖値が高くなります。
妊娠糖尿病の診断
 妊娠糖尿病は75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)によって診断されます。前値が92mg/dl以上、1時間値180mg/dl以上、2時間値153mg/dl以上のいずれかがあれば妊娠糖尿病(GDM)と診断されます。
血糖コントロールの目標
 妊娠糖尿病の治療の目標は空腹時の血糖値が100mg/dl未満、食後2時間の血糖値が120mg/dl未満、そしてHbA1c(NGSP)(血糖値の1~2ヶ月の平均を表す指標)が正常(6.2%未満)にあることです。
妊娠糖尿病の合併症
 血糖コントロールが悪いと胎児の体重が増え巨大児になりやすくなります。また出産後に低血糖や呼吸障害などを起こすリスクが高くなります。赤ちゃんが大きくなり過ぎると帝王切開が必要になります。そうなるとお母さんのリスクも増えることになります。
妊娠糖尿病の治療
 基本は食事療法です。食事療法をしっかりやっても血糖値が目標に達しない時は薬物療法を行います。ここで大事なことは、最初からインスリン治療を行うことです。のみ薬(経口血糖降下薬)は、胎盤を通過して副作用をおこす恐れがあります。この点インスリンは胎盤を通過しないため、そのような危険は全くなく安全な治療です。
出産後の注意点
 妊娠糖尿病になったお母さんは、その後2型糖尿病になりやすい傾向があります。出産後、75gOGTTの結果が正常にもどっていることを確認するようにしましょう。2型糖尿病になるのを予防するポイントは、何といっても生活習慣の改善です。

(糖尿病・内分泌内科 内科部長 東 輝一朗)

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 【妊娠糖尿病の食事について】

 普段より、食生活を整えることは健康な生活を送るために、とても大事なことです。
 妊娠糖尿病の場合、血糖をコントロールして元気な赤ちゃんを産むためにもバランスのよい食生活をすることが特に大切です。
 妊娠中の食事療法の目的は、
①母体の血糖正常化、
②妊娠中の適正な体重増加と健全な胎児の発育に必要なエネルギーの付加と栄養素配分、
③母体の空腹時、飢餓によるケトーシスの予防、
④授乳の際の栄養補給です。
妊娠中、体重が増加することは、母体の健康のためにも必要なことです。太りすぎや、やせすぎにならないよう、適切な体重管理を行います。
 まずは、標準体重の計算を行い、必要な
エネルギー量を算出します。

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
妊娠前体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI(体格指数)

体格区分(非妊娠時) 妊娠全期間を通しての
推奨体重増加量
妊娠中期から末期の1週間
当たりの推奨体重増加量
 低体重(BMI18.5未満) 9~12kg 0.3~0.5kg/週
 ふつう(BMI18.5以上25.0未満) 7~12kg 0.3~0.5kg/週
 肥 満(BMI25.0以上) 個別に対応 個別に対応
(妊産婦のための食生活指針より)
妊婦の推定エネルギー必要量(付加量)
  エネルギー(kcal/日)
妊娠初期(16週未満) 50
妊娠中期(16~28週未満) 250
妊娠初期(28週以降) 450
授乳期 350
(人の食事摂取基準2010年版より)

 非肥満妊婦(妊娠前体重BMI 25)のエネルギー量は、標準体重×30kcal/kgに、妊娠初期、妊娠中期、妊娠末期に付加した量とします。

 肥満妊婦(妊娠前体重BMI 25)では妊娠全経過を通して、標準体重×30kcal/kgとし、必ずしも付加量を加える必要はありません。ただし、妊婦体重が減少するような極端な食事制限は避けます。

 授乳婦のエネルギー量は、標準体重×30kcal/kgに、授乳に必要なエネルギー量を付加しますが、母乳を与えない場合には付加量は必要ありません。
食事のポイントについて
① 食事は時間を決めて、主食・主菜・副菜を揃え、1日の総エネルギー量を3回に分けて食べるようにする。
② ほうれん草、切干大根、ひじき、小松菜、凍り豆腐等、鉄を多く含む食品を取り入れる。(レバーは、レチノール含量が多いので、妊娠後期から摂取する)
③ 脂身の少ない肉類(鶏皮なし、ササミ、豚・牛の赤身やヒレ)、魚類、大豆製品、卵等の良質のタンパク質を取るようにする。
④ きのこ類、こんにゃく、海藻類等 の食物繊維の多い食品で、ボリューム ある食事を取り入れる。色の付いた野菜 も含め、1日手のひら一杯の野菜が適切である。
⑤ 漬物、佃煮、干し魚、かまぼこ類の練り製品、インスタント・レトルト食品等、塩分が多い食品は避け、酸味、香味野菜、香辛料、出汁を利用し薄味を心がける。
⑥ 油分の多い洋食より、素材の味を活かした焼き魚、酢の物、お浸し等の和食傾向が良い。
⑦ クッキー、チョコレート、アイス、スナック菓子、万十類の糖分や脂肪分の多い間食は控え、バナナは1本、みかんは中2ヶ程度の果物や、コップ1杯の牛乳を利用する 。


*食事に関するご相談や質問がありましたら、栄養管理室までご連絡ください。

(栄養管理室長 椿 裕子)


診療科の特色

<糖尿病・内分泌内科>

 糖尿病・内分泌内科は、他の科と比べると診療科名が少し長いと思われるかも知れませんが、その理由は糖尿病と内分泌疾患の診療を行っていることを知っていただきたいからです。糖尿病は増え続け成人の4人にひとりがこの病気にかかっています。一方内分泌疾患は甲状腺を除けば比較的まれな病気です。このため時々見逃されたりもします。しかしピッタリ診断がつけば治療によりスッカリ症状が取れることも珍しくありません。当院は糖尿病学会および内分泌学会から、この二つの領域の病気について専門的な診療を行う施設として認定されています。
 「第4版わかりやすい糖尿病テキスト」を出版しました。最新の情報に改訂され読みやすいだけでなく内容もさらに充実しています。


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