【第143号】当院における難治性腹水に対するCART(腹水ろ過濃縮再静注法)について / 臨床工学技士よりCART(腹水ろ過濃縮再静注法)の方法と原理について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第143号】当院における難治性腹水に対するCART(腹水ろ過濃縮再静注法)について / 臨床工学技士よりCART(腹水ろ過濃縮再静注法)の方法と原理について

くす通信

当院における難治性腹水に対するCART(腹水ろ過濃縮再静注法)について

臨床工学技士よりCART(腹水ろ過濃縮再静注法)の方法と原理について

 【当院における難治性腹水に対するCART(腹水ろ過濃縮再静注法)について】

 腹水は肝硬変やネフローゼ症候群などによる漏出性(非炎症性)腹水と、腹膜炎や腹腔内がんなどによる滲出性(炎症性)腹水に大別されます。塩分制限などの食餌療法や利尿剤・アルブミン投与にも反応しない難治性腹水は腹部膨満感や呼吸困難感、食欲低下、便秘などに伴うQOL(生活の質)の低下を招きます。これまではお腹に針を刺して2~3リットル腹水を抜いて捨てる腹水ドレナージが主に行われてきましたが、一度に大量に腹水を抜くと急性腎不全やショックを起こすおそれがあること、また腹水中の蛋白をそのまま捨てていたため血液の中の蛋白が低下し、腹水の再貯留や浮腫が起こりやすくなり、急速に全身状態が悪化するなどの問題がありました。そのため腹水がたまっても抜かないで我慢されている方が多くいらっしゃいました。

 腹水ろ過濃縮再静注法(以下CART)はドレナージで抜いた腹水をろ過・濃縮して余分な細胞や水分を取り除き、得られた蛋白(アルブミン、グロブリン)を点滴静注で体の中に戻す方法です。腹腔内の蛋白を血管内に戻すので、アルブミン製剤投与に伴うウイルスや未知の病原体に感染するリスクもありません。1981年より保険認可されていますが、当時はろ過濃縮の技術に問題があり、肝性腹水に対してのみ一部の施設で行われているにすぎませんでした。しかし近年、新方式のろ過濃縮法が開発され、腹水ドレナージにより速やかに症状が和らぐことに加えて、アルブミン・グロブリンの補給、循環血漿量の増量など腹水ドレナージの欠点を解消する手技として、癌性腹水に対してのCARTが注目されています。

 当院では2010年よりCARTを開始し、これまで20代から90代の50症例(男性24名、女性26名、がん症例31例、非がん症例19例)に計113回のCARTを施行してきました(2012年9月末現在)。CARTでは再静注時の発熱が問題となっていましたが、2012年からは新方式のろ過濃縮法(KM-CART)を導入することで更に多量の腹水を一度に処理できるようになり、副作用も少なくなっています。

 CARTは保険適応の治療法であり、1回あたり90,500円×保険負担率で、2週間に1度施行できます。難治性腹水でお悩みの方は一度ご相談ください。

(消化器内科 医長 中田 成紀)

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 【臨床工学技士よりCART(腹水ろ過濃縮再静注法)の方法と原理について】

 難治性腹水の症状には強い腹部膨満感、食欲不振、呼吸困難、便秘、尿量減少などがあります。

 そこで、当院では難治性腹水の治療として腹水ろ過濃縮再静注法(以下CART)を行っています。
CARTの原理
腹水採取
 CARTの方法は、最初にベッドに寝ている患者さんのお腹に針を刺し、腹水を貯留バッグに取り出します。腹水を取り出す時間は約1~4時間、取り出す量は約3~6Lになります。


CARTの原理

 CARTの原理は、貯留バッグに貯められた腹水を2つのフィルターに通します。まず、1つ目のフィルター(腹水ろ過器)によって腹水から癌細胞や細菌を除去し、次に二つ目のフィルター(腹水濃縮器)によって余分な水分の除水を行い、体にとって必要なアルブミンやその他の蛋白を残します。再静注この処理は当院血液浄化センターにて臨床工学技士が行います。その間は、患者さんは特に何もする必要はありませんのでお部屋で待機となります。約10倍に濃縮された腹水を、お部屋で患者さんの腕の静脈に針を刺し、1時間に100mlの速度で体に戻します。

 CARTを行うことによる副作用としては、発生頻度は不明ですが発熱、悪寒、頭痛、血圧上昇、血圧低下、嘔吐等が報告されています。CARTの利点としては、腹圧の軽減、自覚的苦痛の軽減があります。CARTを行わずに献血由来の血漿アルブミン製剤を補充した場合、未知の病原体に感染する可能性は完全には否定できません。それに比べてCARTを行った場合は、自分のアルブミンを補充する為、未知の病原体に感染する可能性がありません。

 2012年の7月からは、従来の処理方式より副作用が少ないとされているKM-CARTという吸引式の処理方式を取り入れ、より副作用が少なく安全な治療の提供に努めています。

(臨床工学技士 竹本 勇介)


診療科の特色

<消化器内科>

 消化器内科は現在7人の医師が勤務し、外来・病棟診療および各種検査(上下部内視鏡検査、腹部超音波検査)を行っています。消化管の治療としては上下部消化管の内視鏡的粘膜切除術(EMR)および粘膜下層剥離術(ESD)、胃瘻造設術(PEG)、内視鏡的砕石術、内視鏡的消化管止血術などを行っています。肝臓の治療としては肝炎の治療(インターフェロン、核酸アナログ)および肝臓癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA)などを行い、クリティカルパスを導入して地域の医療機関と連携しながら治療を行っております。また消化器癌に対する化学療法や腹水に対する濾過濃縮再静注法(CART)も行っています。

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