【第129号】原発性副甲状腺機能亢進症について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第129号】原発性副甲状腺機能亢進症について

原発性副甲状腺機能亢進症のお薬について

骨を強くする食事について

 【原発性副甲状腺機能亢進症とは?】

 さて今回取り上げた疾患はカルシウム(Ca)代謝異常を起こす内分泌の病気です。

はじめに

 私たちの体のなかには約1kgのカルシウム(Ca)があります。このうちほとんど(99%)は骨や歯に含まれています。血液中にはわずか(0.1%)しかありません。血中Ca値は常にある範囲内に保たれていて、この値が多くても少なくても健康な生活を送ることができません。このため血中Ca値を常に一定にするみごとな仕組みが私たちの体のなかには備わっています。この大事な仕組みの中心にあるのが副甲状腺です。

副甲状腺とは

 副甲状腺は甲状腺の裏側にある米粒大の大きさ(左右に2個ずつの計4個)の小さい臓器です。(下図)副甲状腺から出てくるホルモンが副甲状腺ホルモン(PTH)です。このホルモンは骨を造る細胞(骨芽細胞)に働いて、そこから次に骨を溶かす細胞(破骨細胞)を刺激して血中Ca値を増加させます。また腎臓(尿細管)に働いてCaが尿中にもれていくのを防ぎます。このほかビタミンDを活性化させ、この活性化されたビタミンD(1.25(OH)2ビタミンD)は小腸からのCa吸収を増加させます。すなわちPTHは骨と腎臓と小腸の3つをターゲットにして血中Ca値をあげるように働いています。
 一方副甲状腺にはCaに敏感に反応するセンサーがあります。このセンサーは血中Ca値が低下するとPTHをたくさん分泌し、逆にCa値が高くなるとPTH分泌をおさえるように働きます。

原発性副甲状腺機能亢進症は

 副甲状腺の腫瘍などにより正常のCa調節が出来なくなったときに起こってきます。この病気では血中PTH値が高くなり、それに伴って血清Ca値が高くなります。血清Ca値が15mg/dlを超えると意識障害を引き起こすこともあります。
 発生頻度は1000人から5000人に一人です。 この病気がよく起こってくる年齢は50歳から60歳代です。また男女比は1:2と女性に多い特徴があります。つまり中年の女性に多くみられる病気です。
 症状としては、重症のタイプでは骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨折を起こやすくなります(骨型)。腎結石を起こすのも特徴のひとつです(腎型)。反復して血尿や腹痛などの結石発作があるときは、この病気を疑って一度は血中Ca値を測ってみる必要があります。そのほか特にこれといった症状がなく人間ドックなどで偶然発見される例が最近増えています(化学型)。
 治療は副甲状腺腫の切除です。治療が成功すると翌日にはほぼ血清Ca値は正常になります。薬物治療(ビスフォスホネートやシナカルセット)はまだ確立した治療法ではありませんが、骨を強くしたりPTHを低下させたりする効果があります。

 

(糖尿病・内分内科医長 東 輝一朗)



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 【原発性副甲状腺機能亢進症のお薬について】

 原発性副甲状腺機能亢進症の根本的な治療は副甲状腺の切除ですが、切除せず経過を見る場合もあります。その場合、高くなっている血清Ca値を下げる必要があります。その際に使用する薬について説明します。

ビスフォスフォネート剤(ボナロン®、ベネット®

 ビスフォスフォネート剤は骨に付着し、骨のCaが血中に溶け出さないようにして血清Ca値の上昇を防ぎます。これらの薬には1日1回服用するタイプと週1回服用するタイプがあり、服用するときにいくつか注意点があります。

1. 水以外の飲料や食事、他の薬の影響を受けることで吸収が悪くなるため、朝起きてすぐ空腹時に服用する。
2. Caやマグネシウム(Mg)などのミネラルを多く含んだミネラルウォーターではなく水道水で服用し、30分は水以外の飲食を避ける。
3. 食道炎や胃炎を避けるために噛まずに服用し、服用後30分は横にならない。

 また、まれにあごの骨に炎症を生じることがあるので、普段から歯磨きをよくして口腔内を清潔に保ちましょう。服用中に歯の治療を受ける際は担当の医師とよく相談し、歯科医にこの薬を飲んでいることを伝えてください。

シナカルセト(レグパラ®

 シナカルセトは副甲状腺に直接働きかけて副甲状腺ホルモン(PTH)を出にくくすることで血中PTH値を下げ、血清Ca値を低下させます。最初は少量から飲み始め、定期的にPTHや血清Ca値を測定しながら服用量を調節するので、医師の指示をきちんと守って服用することが大切です。

 その他、お薬のことでわからないことや気になることがありましたら、医師・薬剤師にご相談ください。

(薬剤師 曽我部志奈)



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 【骨を強くする食事について】

 骨は体の成長に合わせて強くなり、年を取るとともにもろくなります。

 *骨を強くする食事とは、骨の材料になる成分を多く含むカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど必要な栄養素の十分な摂取と、アルコール・喫煙を控え、食塩・たんぱく質とリンの過剰摂取をしないことです。

1 カルシウムは、牛乳・乳製品(ヨーグルト・チーズ)、大豆製品(豆腐、納豆)小魚、緑黄色野菜(小松菜、チンゲン菜)、海藻類(ひじき・ワカメ・のり)等に多く含まれ、中でも牛乳はカルシウム吸収率の高い食品です。
2 ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け日光にあたるとより効果があります。鮭、ニシン、干し椎茸、カレイ、ウナギ、煮干し、サンマ等に多いです。
3 ビタミンKは、納豆、ほうれん草、小松菜、ニラ等に多く含まれます。
4 リンは、穀類、肉類に多く含まれますが、リン酸化合物による食品添加物が多く使用されている加工食品、インスタント食品、スナック菓子等の摂取は控えます。
5 食塩の過剰摂取は尿へのカルシウム排泄が増え、アルコールや喫煙は、カルシウムの吸収を悪くするので控えます。
 
【骨を強くする食事の工夫】
・牛乳が苦手の人は、ココアやコーヒー、抹茶などで味や香りをつけたり、シチューやグラタンにする。
・牛乳を飲むと下痢をする人は、温めたり乳糖不耐症用の牛乳を利用する。
・果物にヨーグルトをかけたり、ドレッシングにヨーグルトを混ぜる。
・刻みチーズをオムレツやハンバーグ・肉料理に混ぜトーストにのせて食べる。
・スキムミルクは、水やお湯・味噌汁に溶かす、ハンバーグ・肉団子・お好み焼きなどの料理、マヨネーズに混ぜる。
・納豆・冷奴・干し椎茸入り炒り豆腐・白和え等
・ひじきや切干大根炒め、ひじき・切干・海藻のサラダや酢物、小松菜胡麻和

*適度な運動・日光浴も効果があります。毎日の食生活を少しでも見直し丈夫な骨を作っていきましょう。

(栄養管理室長 椿 裕子)


診療科の特色

<糖尿病・内分泌内科>

 糖尿病・内分泌内科は、糖尿病、高コレステロール血症および甲状腺疾患などの治療を行っています。良質、高レベルで安全な医療を心がけ、また病気の予防や早期発見にもしっかり取り組んでいます。日本内科学会認定教育施設、日本糖尿病学会認定教育施設、日本内分泌学会認定教育施設、日本人間ドック研修関連施設に認定されています。
 糖尿病治療にたずさわるスタッフが力を合わせて完成させた“わかりやすい糖尿病テキスト”は、とてもわかりやすいと好評です。これからも新しい知識を取り入れながら改訂を重ねていきたいと思っています。蛇足ながらこの本は売店の書棚にも並んでいます。



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