【第124号】 鉄欠乏性貧血について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第124号】 鉄欠乏性貧血について

 【鉄欠乏性貧血について】

 健康診断でチェックされる頻度の高い項目として貧血があります。また献血に訪れる方で貧血のために献血ができない方が男性2%、月経のある女性では約30%にも上ります。このように、特に貧血が慢性的にゆっくり進行する場合には自分で全く気づかないこともよくあります。ときにびっくりするほど強い貧血で受診されることもまれではありません。

 貧血とは、血液中の酸素運搬役のヘモグロビン量が減少することを言います。ヘモグロビンが減ることにより全身の細胞が酸素欠乏に陥りさまざまな症状を引き起こします。

 貧血の一番多い症状は、疲れやすさと階段を上がるときの息切れです。また頭痛やだるさ、肩こりも貧血の症状の場合があります。治療により貧血がよくなればこのような症状はなくなり、もっと元気になります。よく「私は立ちくらみはないから貧血ではない。」と思っておられる場合があります。確かに立ちくらみは脳貧血と呼ばれますが貧血ではなくむしろ血圧変動と関係があります。

 貧血の中でもっとも頻度が多いものは鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血には必ず原因があります。一般的な原因は慢性的な出血です。女性では過多月経、子宮筋腫が圧倒的に多いので婦人科的検索をおすすめし、男性および閉経後の女性では消化管出血がほとんどですので消化管の検査が必要です。成長期の子供さんでは鉄分摂取が成長に追いつかず鉄欠乏性貧血になることもあります。また極端な偏食やダイエットも鉄欠乏性貧血の原因となります。

 一度鉄欠乏状態に陥ると食事療法だけではまずよくなりません。というのも、治療で投与される鉄剤は100mgの鉄を含みますが、これを2カ月服用していただきやっと貧血が改善します。同じことを、もっとも鉄分を多く含む食材、レバー(100gあたり10mgの鉄分を含みます)で行おうとすると、単純計算で1kgのレバーを2カ月食べ続けないといけないことになり、現実的には困難です。鉄欠乏性貧血を食事療法で治そうと頑張っておられるうちはなかなか改善せず、鉄剤を開始すると1〜2カ月でみるみる改善し、3か月もたてば血色も良くなり見た目にも若返ってくることはときどき経験されます。

 このように鉄欠乏性貧血の治療には食事療法はほとんど意味がありませんが、鉄欠乏の予防にはあくまで食事が重要です。米国やスウェーデンでは鉄欠乏性貧血の予防の為、数十年前から小麦粉100g当たり4-6mgの鉄が添加されており.鉄欠乏性貧血の発症が著しく減少しています。ですから、鉄分の多く含まれる食材をバランスよく摂取することは鉄欠乏の予防には大変重要です。そして一旦鉄欠乏性貧血と判明したら、原因検索とともに、内服鉄剤による十分な鉄分補給を行うとよいでしょう。

(血液内科医長 日高 道弘)



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 【鉄欠乏性貧血で使われる薬】

 鉄欠乏性貧血について使われる薬剤にはいくつかの種類があります。

 基本的には鉄剤と呼ばれるお薬を経口摂取してもらいます。経口の鉄剤(フェロ・グラデュメット錠®、フェロミア錠®、インクレミンシロップ®)では胃腸障害(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、便秘といった症状)を伴います。このような症状を抑えるために食事の後に服用し、また胃薬を服用してもらうこともあります。便が黒くなることもありますがお薬の色ですので心配ありません。シロップ剤は小さなお子さんが服用するのに適しています。経口の鉄剤で消化器症状が著明なときやお薬の効果が不十分なときは、静脈注射の鉄剤(フェジン静注®)にて補給することもあります。貧血の症状が回復しても3〜6ヶ月は鉄剤の服用を続け貯蔵鉄を正常化させる必要があります。

 鉄剤は制酸剤(酸化マグネシウム)や一部の抗生物質(セフジニルカプセル®)などを同時に服用されると、薬の効果が弱くなるなどの相互作用が報告されています。それらの薬剤を服用される場合は、薬を飲む時間をずらすことが必要になってきます。

 お薬のことで分からないことや、気になる症状がみられたときには医師・薬剤師にご相談ください。

(薬剤師 佐々木 幸作)



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 【鉄欠乏性貧血の予防について】

  1. 性・年齢・体格に応じた栄養補給量をバラスよく摂るようにしましょう。
  2. 3度の食事を出来るだけ一定の時間帯にとるよう習慣づけましょう。
  3. 加工食品への偏りを避け、インスタント食品の摂りすぎに注意しましょう。
  4. 過度のダイエットで、偏食・食事を抜くことは止めましょう。

 鉄欠乏性貧血の予防には、規則正しい生活と食生活の改善が大切です。主食・主菜・副菜を揃えたバランスの良い食事を、
時間を決めて3食摂るよう習慣づければ、生活のリズムを作りやすくなり、体のリズムも整ってきます。

  食品に含まれる鉄には、動物性食品に含まれる吸収率の良いヘム鉄と、植物性食品に含まれる吸収効率のあまりよくない
非ヘム鉄があります。

  ヘム鉄は、肉類・魚介類に多く、特にレバー類に多く含まれています。非ヘム鉄は小松菜・パセリなどの緑黄食野菜、
切り干し大根、ヒジキ、ごまなどに豊富ですが、吸収が悪いので、それを改善するために肉・魚・卵・乳・乳製品等、
動物性たんぱく質食品やビタミンCの多い果物類を摂ることで、鉄の吸収も良くなります。

 また、柑橘類や酢、香辛料など食欲を増す食品は、胃液の分泌を促し、鉄の吸収を高める効果があります。タンニンの多い
カフェイン飲料は、鉄の吸収を低下させるので、控えるとよいです。

  加工食品、インスタント食品の過食、過度のダイエットや偏食は、鉄不足だけでなく栄養素のバランスを崩してしまい
低栄養に繋がるので注意しましょう。

 その他、食事に関する質問・相談等ございましたら、栄養管理室にご連絡ください。

(栄養管理室長 椿 裕子)


診療科の特色

<血液内科>

 血液に異常を来す疾患を専門に診療しています。様々な貧血や、白血球の異常、出血傾向、さらにリンパ節の腫脹など、
ごく軽いものから比較的しっかり治療しなくてはいけないものまで様々です。
  入院病棟では血液関連のあらゆる疾患に対応できるよう、17床のクリーンルームを備え、各種の造血幹細胞移植療法を
含めた専門医療を行っています。



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