【第123号】うつ病について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第123号】うつ病について

 【うつ病について】

 日本で自殺で死亡する人が年間3万人を越えて久しくなります。これらの人のうち約半数はうつ病であったと考えられておりますが、この人達の中で精神科や心療内科で受診されていた人は5%程度であったと言われております。

 うつ病は、代表的な精神疾患で、人口の10%以上が、一生のうち1回は罹患すると言われており、だれでもかかる可能性のある病気です。

 うつ病は「感情障害」と呼ばれ、ゆううつ感や意欲の低下、疲れやすいなどの状態が長い間続くため日常生活に支障をきたします。だれでも失恋したり、親しい人が死んだりすると気分が落ち込みますが多くは数日で回復します。ところが、うつ病ではこのような状況が2週間以上続きます。その他にも、思考力の低下、睡眠障害、食欲低下などの症状がみられます。また、頭痛、吐き気、動悸、便秘などのからだの症状が目立つタイプがありうつ病と気づかれないこともあります。(仮面うつ病)

 うつ病の発症については、性格としては真面目、几帳面であるが融通の効かない人がなりやすく、ストレスとしては環境の変化(就職、転勤、結婚)や身体的な病気、喪失体験(失業、離婚、家族や友人との死別)などがあります。

 治療方法は、うつ病が脳のエネルギーが枯渇する病気であることから枯れたエネルギーをもう一度満たす必要があり、数週間から数ヶ月間の休養、抗うつ剤による薬物療法、認知行動療法などのカウンセリング、リラクゼーションなどによるストレスケアなどが行われます。通院治療によりほとんどのうつ病は治癒しますが、再発予防のために抗うつ薬を少量のむことや、今までのライフスタイルや価値観を見直すことも大切です。

 うつ病で入院治療が必要な場合は、希死念慮があり自殺企図の可能性が高いときと、食事を受け付けず衰弱しているとき、妄想が強く自宅で対応できないときなどです。

 最近は、今まで話してきました古典的うつ病に対して現代型(新型)うつ病といわれ趣味はできても仕事に行けないようなタイプのうつ病がマスコミなどで取り上げられることがあります。

 最後に予防ですが精神科では「不眠は万病の元」と考えられます。一日7時間、週に50時間以上睡眠をとるように、また適度の運動を心がけてください。

(精神科医長 渡辺 健次郎)



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 【うつ病の薬物治療】

 うつ病はストレスなどによって、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質が減少し、働きが悪くなって起こると考えられています。抗うつ薬は、脳内で減少したそれらの神経伝達物質を増加させることによって、気分を晴れやかにし、不安やあせりなどの症状を落ちつかせる働きを持っています。抗うつ薬には、以前から用いられてきた「三環系抗うつ薬」、「四環系抗うつ薬」のほかに、最近では「SSRI」や「SNRI」や「NaSSA」という新しいタイプの薬も使われるようになっています。
 いずれの抗うつ薬も効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし数週間の継続的服用が必要です。

三環系抗うつ薬

 第一世代の抗うつ薬で、とりわけノルアドレナリンの再取り込みを強力に抑えて効果を発揮します。高い抗うつ効果が得られますが、その反面、眠気、口の渇き、便秘、めまいなどの抗コリン性副作用も強く出やすいという特徴があります。一部の三環系抗うつ薬には副作用の発現を抑えた第二世代の抗うつ薬があります。

四環系抗うつ薬

 セロトニン再取り込み阻害作用がないのが特徴で、三環系抗うつ薬に比べて副作用の発現が少ない第二世代の抗うつ薬に属します。副作用が少ない分、使いやすくなったともいえますが、効果は三環系抗うつ薬には及びません。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

 第三世代の抗うつ薬で、選択的にセロトニンの再取り込みを阻害することをターゲットにした抗うつ薬です。抗うつ作用は三環系や四環系よりもやや弱いとされていますが、その最大の特徴は従来の抗うつ薬に比べて副作用が少ないという点で、非常に使いやすい抗うつ薬といえます。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

 第四世代の抗うつ薬で、セロトニンだけでなくノルアドレナリンの再取り込みも選択的に阻害することから効果の面では三環系に近い抗うつ作用があり、副作用はSSRIと同程度とされており、症状が多彩なうつ病において広範な症状に有効とされる抗うつ薬です。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬(NaSSA)

 脳内の神経伝達をスムーズにすることで、抑うつ気分や不安を和らげます。従来薬に比べて、効果発現までの時間が短く、持続的な効果が得られる新しい抗うつ薬として期待されています。

 抗うつ薬は医師の指示なしに、自分の判断で飲むのを止めないでください。突然服用をやめたり、薬の量を減らすと、不都合な症状があらわれることがありますので絶対に避けてください。

 治療法、副作用をはじめ、ご不明な点などありましたら、医師や薬剤師にご相談下さい。

(薬剤師 白澤 宏美)

             


診療科の特色

<精神科>

 精神科は、脳の器質的な障害が原因で起こる「認知症」、幻覚や妄想などの「統合失調症」、うつ病などの「感情障害」、精神的なストレスが原因で起こる「ストレス関連性障害」など多岐にわたる疾患を担当しています。地域の精神科病院や精神科クリニックと連携しながら、精神障害者で身体的疾患を合併された方の入院治療や精神科救急医療にも取り組んでおります。
 「物忘れ」「不眠」「不安」「ゆううつ感」など様々な精神症状で悩まれている方は、お気軽に受診して下さい。精神疾患も「早期発見、早期治療」がたいせつです。



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