【第120号】 一過性脳虚血発作について | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第120号】 一過性脳虚血発作について

 【一過性脳虚血発作とは・・・】

 血管の閉塞(へいそく)や狭窄(きょうさく)により脳組織の血流が不足して脳の機能が働かなくなるも、幸運にも血流が改善して復活する状態で、運動麻痺や言語障害、めまい、しびれなどが一過性に出現する状況のことをいいます。別の表現を用いれば、脳梗塞(のうこうそく)になりかけた状態とも言うことができます。

 その脳梗塞を含めた脳卒中とは、ある日突然脳に不可逆的な障害を残すやっかいな病気です。その発症を予測することは困難ですが、この一過性脳虚血発作だけは、その発症を高率かつ正確に教えてくれる貴重な病態です。

よって、
一過性脳虚血発作に対して適切に予防を行うことで、脳梗塞の発症を減らすことができます。

 【一過性脳虚血発作の原因は、大きく2つに分けられます。】

 原因の一つは、動脈硬化です。もともと血管が狭くなっていたり、閉塞していたりすることで起こる場合です。予防としては、アスピリンをはじめとする抗血小板薬が基本となります。もし頸部血管に高度の狭窄が認められる場合は、頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術などの手術が有効な場合もあります。

 原因のもう一つは、心臓からの血栓が脳血管を閉塞する場合です。その原因の多くが心房細動という不整脈です。予防としては、ワーファリンが用いられますが、ワーファリンは抗血小板薬と違って、適切な投与量がその個人や状況によって変化します。そのため、定期的な血液検査が必要であり管理が難しい薬ですが、血液検査をしなくともワーファリンと同等の効果が期待できるといわれる薬が、(平成22年12月現在)米国やカナダでは既に承認されており、近い将来日本でも使用できるようになると思われます。

 それ以外にも、高血圧や糖尿病、脂質異常症などは、脳梗塞の危険因子と考えられており、これらを治療することも重要です。また、喫煙も脳梗塞の危険因子であり、禁煙することで内服薬による治療と同等の効果が得られるともいわれています。

 いずれにせよ、運動麻痺や言語障害などが出現した場合、一旦よくなったからといってそのまま安心して放置するようなことは決してせずに、できるかぎり迅速に、必ず医療機関を受診するようにお願いします。

(神経内科医長 田北 智裕)



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 【一過性脳虚血発作と薬剤】

 一過性脳虚血発作(脳梗塞)の再発予防には血液が血管で固まらないようにする、いわゆる血液をサラサラにする薬が使われ、このタイプには2種類の薬があります。


 アスピリン(バイアスピリン錠)、シロスタゾール(プレタールOD錠)、クロピドグレル(プラビックス錠)、チクロピジン(ニチステート錠、パナルジン錠)は血小板の働きを抑えて血の塊を作りにくくする薬で、非心原性一過性脳虚血発作(心臓由来ではないもの)の予防に使用されます。
 アスピリンは古くからある薬ですが、一過性脳虚血発作の急性期(発症後48時間以内)の再発防止に推奨されています。
 チクロピジンは肝機能障害、好中球減少などの重篤な副作用の発現に注意が必要なため定期的な検査が必要です。倦怠感や食欲不振、突然の高熱、喉の痛みがある場合にはすぐに受診して下さい。


 ワルファリンカリウム(ワーファリン錠)は血液が固まって血の塊を作りにくくする薬で、心原性一過性脳虚血発作(心臓由来のもの)の再発防止に第一選択で使用されます。ワーファリン服用中はビタミンKを大量に含む納豆やクロレラ食品、青汁などは摂取を控えて下さい。

(薬剤科 幸 邦憲)



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 【動脈硬化の予防に繋がる栄養食事療法】

 一過性脳虚血発作の原因の1つに動脈硬化が挙げられますが、その危険因子は、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、糖尿病、痛風、ストレス、運動不足、遺伝的素因と様々です。これらの改善に向けた食事や生活が大切です。

栄  養  食  事  療  法  の  実  際
 
 
自分の標準体重を把握し、太りすぎないようにエネルギー量を調整します。
計算法 : 標準体重(身長×身長×22(体格指数))×25〜30kcal/日
      を目安に算出します。
   

エネルギー比は50〜60%程度とします。
例)ご飯の仲間(カボチャ、イモ類、麺類等)が重なる場合、主食量は少なくします。
   
タパ
ンク
 質
肉・魚類、ダイズ製品、卵、乳製品など良質で動物性脂肪の少ないものを選びます。肉類の嗜好にかたよっている人では、肉と魚の摂取量を半々か、やや魚介類を多めにします。
   
ビミ
タン
野菜・海藻類を合わせて350g/日以上を目安に食物繊維(大豆、ヒジキ、椎茸、切干大根、玄米等)が不足することのないよう十分摂取します。
   

動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸のとり過ぎは、コレステロールの過剰摂取となります。植物油に含まれるリノール酸にはコレステロールの低下作用があるとされますが、過剰摂取はよくありません。魚類に含まれる脂肪酸(EPA.・DHA)は血栓予防の効果につながります。
   

1日当たり6g未満を目標とします。塩・醤油・味噌の量や、塩分含有量の多い加工食品やインスタント食品、漬物、干し魚、汁料理、外食等控えます。
   

 日常の生活においても、適度な運動を規則的に取り入れ、食事面とライフスタイルの改善を行っていきましょう。

(栄養管理室長 椿 裕子)


診療科の特色

<神経内科>

 神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、骨格筋が障害される疾患を診断・治療する診療科です。精神科や心療内科と混同しないようにしてください。もし運動障害(筋力低下、不随意運動、痙攣)、感覚障害(しびれなど)、歩行障害頭痛めまい、等ありましたら当科の受診をお勧めします。
 具体的な疾患としては、脳の血管が急に閉塞して顔・手足の麻痺や言語障害などを生じる脳梗塞、脳炎や髄膜炎などの中枢神経感染症、パーキンソン病、多発性硬化症、重症筋無力症、多発筋炎などの神経難病の他、頭痛、てんかんなども診療しています。



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