【第109号】 炎症性腸疾患について 繰り返す腹痛、下痢、 原因不明の体重減少、発熱の時は? | くす通信 | 国立病院機構 熊本医療センター

【第109号】 炎症性腸疾患について 繰り返す腹痛、下痢、 原因不明の体重減少、発熱の時は?

 〜繰り返す腹痛、下痢、
原因不明の体重減少、発熱の時は?

 【炎症性腸疾患について】

 炎症性腸疾患は、主として消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎、クローン病に大きく分けられます。潰瘍性大腸炎は、炎症が大腸に限局しているのに対して、クローン病は、食道から大腸まで全消化管に炎症をおこす疾患です。両疾患とも本邦では患者数が増加傾向にあります。根治することは無く、炎症を抑え、維持することが内科治療の目的となっています。

 潰瘍性大腸炎は、初発時の症状は、粘血便、腹痛、下痢が主な症状です。重症になると高熱、貧血を伴うことがあります。直腸より連続する、粘膜障害が特徴で、大腸カメラやバリウムなどを使用したレントゲン検査を行い、罹患範囲で、直腸炎型、左側大腸型、全大腸炎型、特殊型に分類されます。そして便回数、発熱、炎症所見などの臨床症状から、軽症、中等症、重症、激症に分類し治療にあたります。5-アミノサリチル酸製剤の内服や注腸で軽快する軽症例から、ステロイドや免疫抑制剤の使用が必要な重症例まで様々です。最近では中等症以上の患者さんに、血液透析の機械を使用した、白血球吸着療法(LCAP)や顆粒球吸着療法(GCAP)が併用されています。当院でも、白血球吸着療法を行っており、高い効果を認めております。しかし、残念ながらステロイドなどの各種治療に反応しない方もいるため、そういう患者さんには手術療法が選択される場合もあります。

 クローン病は、初発時の症状として、腹痛、下痢、体重減少、発熱が主な症状となります。

 内視鏡検査、小腸造影検査などで、病変部位、分布を評価し、小腸型、小腸大腸型、大腸型に分類します。また併せて、1週間の下痢、腹痛の回数などで、活動性を評価して、治療にあたります。治療としては、栄養療法、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤の内服治療が従来行われて来ました。最近では、抗TNF-α抗体とよばれる、注射剤を使用することで、高い有効性を認めております。しかし内科的治療でも炎症が抑えられず、炎症により腸が狭くなり、腸閉塞を起こした場合や、腸に穴が開いた場合には、手術療法が選択されます。クローン病では手術を繰り返すことで、状態が悪化するため、手術を回避することが必要です。そのためには、内科的治療で炎症を抑え、合併症を起こさないようにすることが非常に重要です。

 繰り返す腹痛、下痢。原因不明の体重減少、発熱などがありましたら、炎症性腸疾患の鑑別のため、当科外来を受診ください。

(消化器内科 尾上 公浩)



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 【炎症性腸疾患(IBD)の治療で用いられる薬剤】

 潰瘍性大腸炎、クローン病は、発症の原因がはっきりと分かっていないため、病気を根本から治すというのではなく、大腸の炎症を抑えて、下痢や粘血便などの症状を緩和していき、炎症のない状態である緩解期を長く維持することが、内科治療目標となります。

  一般的に使われるのが5‐アミノサリチル酸(5-ASA)製剤:サラゾピリン錠・坐剤®、アザルフィジンEN錠? ペンタサ錠®です。なぜ効くかは不明らしいです。粘膜を傷つける活性酸素を減らし、炎症をひどくするサイトカインを抑えるとか言われています。副作用として発熱・発疹・吐き気・食欲不振・下痢・腹痛などがあります。

 ステロイド薬:リンデロン坐剤®、ステロネマ注腸®、プレドニン錠®(経口薬・注腸薬) は炎症が進んで下血が出るような場合に使われます。最も潰瘍性大腸炎に効く薬です。これ無しでIBDの治療はできません。ただし、非常に重篤な副作用もありますので、使用には注意が必要です。副作用として顔がむくむ(満月様顔貌・ムーンフェイス)・にきび・多毛・中心性肥満・皮膚線条・高血圧・筋肉痛・関節痛・白内障・緑内障・食欲不振・食欲増進(体重の増加)・不眠症・月経異常・更年期症状促進・ミオパチー・発汗増大・野牛肩・アナフィラキシーショック・骨粗鬆症・大腿骨(上腕骨)骨頭壊死・難聴・副腎皮質機能不全・糖尿病・高血圧症・膵炎・ステロイド筋症・神経症・精神異常・うつ病・血液凝固異常・血栓症・発育障害など多種多様に及びますので医師の指導によって下さい。

 免疫抑制剤:イムラン錠®、ロイケリン散® は大腸を攻撃する免疫力を下げて出血を抑えます。ステロイドが効かない場合やステロイドを減量できない時に使います。副作用は催奇形性・感染しやすくなる・臓器不全など、リスクが高いです。特に妊娠はしないように注意が必要です。

 その他:レミケード®(TNF-α阻害剤)、抗生物質、抗アレルギー薬、漢方薬(紫苓湯・人参湯・大建中湯・紫胡桂枝湯など)など

 補助的に使われる薬剤:整腸薬、止しゃ薬(下痢止め)、鎮痙薬(腹痛止め)、精神安定薬などこれらの薬剤が病期や病態などによって使われています。
治療方法、副作用も薬剤により異なりますが、ご不明な点などありましたら、医師、薬剤師にご相談下さい。

(薬剤科 舛重 正人) 


診療科の特色

<消化器内科>

 現在消化器科は5人のスタッフと2人のレジデントが勤務し、毎日の外来診療、検査(上部・下部消化管内視鏡、腹部超音波)病棟診療を行っています。診療内容としては、胃や大腸などの消化管疾患、肝臓病、胆嚢胆管疾患、膵臓病をはじめ消化器病全般を幅広く扱っています。特に、肝臓癌では、造影超音波診断とラジオ波焼灼法には特に力を入れています。また、最近ではC型慢性肝炎におけるペグインターフェロン・レベトール併用療法の地域連携パスを作成し、地域の医療機関とさらに密な連携を図っています。



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