【医学シリーズ No.105】循環器科(No.15) | くまびょうニュース | 国立病院機構 熊本医療センター

【医学シリーズ No.105】循環器科(No.15)

【78号(2003.12)】

【医学シリーズ No.105】循環器科(No.15)

<最近のトピックス> 自己骨髄単核球および末梢血単核球移植による末梢性血管疾患の血管新生治療

 最近、成人末梢血中の単核球分画に血管内皮細胞に将来分化しうる内皮前駆細胞の存在が確認され、この細胞は、下肢虚血動物モデルにおいて血管新生部位に有 意に組み込まれることが明らかとなりました。内皮前駆細胞は、血球系未分化幹細胞と起源を等しくすることから、末梢血以外に臍帯血や骨髄からも採取可能で あると考えられました。これまでにヒト臍帯血単核球から内皮前駆細胞を得ることに成功し、この細胞を虚血骨格筋内へ移植することにより、血管新生や側副血 行路の発達が促されることが確認されました。また、ウサギ自家骨髄単核球を下肢虚血骨格筋内へ移植することにより、血管新生や側副血行路の発達が促される ことも確認されました。これらの実験的成績は、内科・外科的治療に再建不可能な閉塞性動脈硬化症・バージャー病に、自己骨髄単核球および末梢血単核球を移 植することにより、血行再建や臓器機能の回復効果が期待できることを示しました。そこで、自己骨髄単核球および末梢血単核球による血管新生細胞移植療法が 施行されました。
 当院において、血液内科が多数の骨髄移植、末梢血単核球移植の経験があり、技術的な問題は有りませんでした。まず、倫理委員会に申請し、平成13年11月16日に承認されました。

手術風景
手術風景

 1例目は、60才、男性、閉塞性動脈硬化症でした。左下肢のチアノーゼを認め、安静時疼痛を自覚していました。症状が改善しないため血管新生療法を施行 しました。安静時疼痛は術後3日目で消失しました。また、歩行距離は、術前、杖歩行で180mしか歩行できませんでしたが、術後3日目に700m歩行可能 となり、2ヶ月後は日常生活で歩行障害を認めなくなりました。現在、術後1年経過しましたが、安静時疼痛を認めず経過良好です。
  2例目は、78才、男性、閉塞性動脈硬化症でした。両下肢安静時疼痛を自覚し、足裏、指にチアノーゼ、特に右第一指に虚血性の潰瘍を認めまし た。両側下肢に対して血管新生療法を施行しました。術後1日目から安静時疼痛、チアノーゼが消失し、潰瘍も日毎に良くなりました。しかし、2週間後頃か ら、チアノーゼ、潰瘍が悪化しだし、残念ながら切断術を施行しました。
 3例目は、62才、男性、バージャー病でした。右上肢に、冷感を自覚し、筋力低下を認めました。血管造影の結果、腋窩動脈以下が認められず、側副血行路のみを認めました。右上肢に対して血管新生療法を施行しました。術後1日目から冷感が消失し経過良好です。
 以上のような結果で、2例目は残念ながら切断となりましたが、今までの治療ではどうしようもなかった患者さまの治療ができるようになりました。また、閉 塞性動脈硬化症とバージャー病だけが治療適応でしたが、様々な病態における末梢血行障害の治療を行えるようになりました。さらに、心臓血管外科と共同で、 冠動脈に対する血管新生療法を倫理委員会に申請し、承認されました。今後適応があれば積極的に血管新生療法を行っていきます。