医学シリーズ No.223 眼科(No.10) | くまびょうニュース | 国立病院機構 熊本医療センター

医学シリーズ No.223 眼科(No.10)

【222号(2015.12)】

医学シリーズ No.223 眼科(No.10)

小切開硝子体手術(micro incision vitrectomy surgery MIVS)

眼科部長 近藤 晶子

 本年2月、25ゲージ硝子体・白内障手術装置と広角眼底観察システムが導入されました。米アルコン社のConstellationと独ツァイス社のResightです。これによって無縫合小切開硝子体手術が可能になり、術野の視認性にも優れ、硝子体手術が飛躍的に短時間に行われるようになりました。

 眼球の内容物である硝子体は、透明なコラーゲンの網目構造を有するゲル状組織です。硝子体は外傷や手術の際、不用意に引っ張ると網膜剥離を生じたり、創に嵌頓して組織の偏位を生じたりする見えないクモの糸のような厄介な組織で、かつては手を付けることが困難でした。1970年代に、眼内還流液で眼球の虚脱を防ぎながら高速カッターで硝子体を切除吸引する機器が開発されました。角膜縁から後方へ3~4mm部の強膜を穿刺し、孔から器具を挿入して角膜・瞳孔を通して観察しながら操作するclosed eye surgeryの手法です。硝子体カッター、潅流、眼内照明のためのポートを3か所作成する3 port systemとして術式が確立されています。眼球壁を穿刺できるのは毛様体扁平部に一致する約1mm幅の部分のみで、それより後方は網膜、前方は毛様体突起部で刺すことは禁忌です。カッターは筒状で内部にギロチン式の歯が高速回転し、線維状の硝子体を細かくカットしながら吸引していきます。硝子体混濁や出血の除去、あるいは網膜病変に眼内から到達するための硝子体の切除が行われてきました。初期からの20ゲージ硝子体手術は、結膜を開け、1mmの強膜創を作成し、操作の合間は孔をプラグで塞ぎ、終了後は強膜創・結膜弁とも縫合する必要がありました。

 小切開硝子体手術は、経結膜的に強膜を斜めに穿刺し、眼内に刺入したトロカールによってガイドされるカニューラを通して25ゲージ(幅0.57mm)の手術器具で硝子体手術を行い、手術終了時にはカニューラを抜去するだけで強膜創が自己閉鎖し手術を終了することができる無縫合手術です。器具の径が細くなった分、カッターは切除硝子体の量を増やすために~7500cpmの高速回転による高率なカッティングレートを可能にし、材質の剛性が高められ、眼内照明もキセノン光源で細い先端からより明るい照明が達成されます。また観察系は、従来のフローティングレンズから前置レンズシステムによってワンタッチで広角な眼底観察が可能になりました。眼内レーザーやガス・シリコン充填装置も内蔵されています。

 当院で扱う対象疾患は、糖尿病網膜症による硝子体出血や黄斑前膜などです。硝子体手術の手技自体は高難度であるため、熊大の網膜硝子体専門の医師の応援を得て施行しており、多数の難症例を扱うことはできませんが、同機器は最も出番の多い白内障手術機器も兼ねており眼科手術室の主役となっています。