いま、国立病院機構熊本医療センターで何が研究されているか<シリーズ95回> | くまびょうニュース | 国立病院機構 熊本医療センター

いま、国立病院機構熊本医療センターで何が研究されているか<シリーズ95回>

【218号(2015.8)】

いま、国立病院機構熊本医療センターで何が研究されているか<シリーズ95回>

摂食嚥下チームの取り組みと今後の課題

リハビリテーション科 言語聴覚士
 西山真倫子


 当院摂食嚥下チームは、平成23年3月に歯科医師を中心に看護師(救命・脳血管病棟)、歯科衛生士、管理栄養士、理学療法士、言語聴覚士等が連携し活動を開始しました。現在週に1回摂食嚥下ラウンドを実施、歯科へ嚥下評価依頼があった対象患者の嚥下評価を行い、経口摂取開始の可否を判断するとともに間接嚥下訓練、介助方法等を病棟へ指導し、安全かつ早期に経口摂取をすすめていく事を目標に日々活動しています。

 早期に嚥下評価や摂食訓練をすすめていく為には、まず開始できる全身状態を整える事が大変重要になります。当院のような超急性期病院においては、脳卒中や重症呼吸器疾患、意識障害患者など様々な方が搬送され安静や治療に伴うカテーテル類の留置は治療上やむをえません。しかしその一方で多くの身体部位の機能や筋力低下による廃用症候群、サルコペニア及び栄養障害等をきたしやすく予防対策を常に念頭におくことが求められます。臥床による心肺機能や認知機能低下に加え口腔乾燥や嚥下諸器官の廃用性低下も複合して起こり摂食嚥下機能は低下する一方になってしまいます。

 H25年6月~H26年7月に摂食嚥下チームに依頼があった脳血管障害等患者101名を対象に嚥下評価前後での食事摂取状況を調査しました。その結果、評価前の時点では約80%(84名)が絶食・経鼻胃管等で食事未摂取の状態でしたが、評価後は約75%(76名)が何らかの直接訓練を開始する事ができました。また直接訓練を開始した約90%(68名)の患者が窒息や誤嚥を起こさずに経口摂取を継続できており、適切な評価が更に早い段階で実施できれば早期経口摂取や食形態アップへつながる可能性があると考えられます。

 食事を安全に開始するには、嚥下機能だけでなく意識レベルや呼吸状態、口腔内環境、認知機能、栄養状態など訓練を行う以前の様々な土台作りや日々のリスク管理が大変重要であり、摂食嚥下チームだけでなく医師・病棟看護師・コメディカルなど様々な職種の協力を得て嚥下障害に対する院内での統一理解が必要不可欠です。

 本年度は各病棟の摂食嚥下リンクナースの配置に加え、摂食嚥下障害看護認定看護師が誕生し病棟と摂食嚥下チームとの連携が更に期待されます。中島歯科口腔外科部長を中心に救命病棟看護師での早期嚥下スクリーニング検査の実施に向けた指導も開始されています。(図1)今後摂食嚥下チームでは病棟との連携を更に強化し、口腔ケアの充実・病棟看護師による間接嚥下訓練の指導など、安全かつ早期に経口摂取につながる支援体制の確立(図2)へ向け取り組んでいきたいと考えています。


(図1)脳卒中患者の段階的摂食訓練プロトコール
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