医学シリーズ No.219 小児科(No.6) | くまびょうニュース | 国立病院機構 熊本医療センター

医学シリーズ No.219 小児科(No.6)

【218号(2015.8)】

医学シリーズ No.219 小児科(No.6)

遷延する食物アレルギー児に対する経口免疫療法(OIT)について


小児科 緒方 美佳

 食物アレルギー(FA)児の多くは、乳児期に鶏卵、牛乳、小麦の経口摂取を原因として発症しますが、近年、Lack G.の「Dual allergen exposure hypothesis」(経口摂取は免疫寛容を促進し、経皮的接触はアレルゲンの感作を惹起促進する)や、茶のしずく石鹸による小麦アレルギー例が示すように、経皮感作の重要性が注目されています。

 FA児の治療では、そのほとんどが乳児期に皮膚炎を合併しており、早期に皮膚状態を改善させることがまず重要です。そして適切な時期に食物負荷試験を受け、少量でも安全な量を継続して食べることが安全な早期寛解(食べられるようになる)につながると考えます。

 それでも小学校入学までに寛解せず、7歳以降まで持ち越した場合、自然寛解の可能性は極端に低くなります。近年、国内外の施設から、「連日原因食物を少しずつ食べる」経口免疫療法(OIT)の報告が増えています。当院でも学童以上の鶏卵、牛乳、小麦アレルギー児で、特に微量で呼吸器症状などのアナフィラキシー(An)を起こす重症例であり、かつインフォームドコンセントを得られた希望者に限りOITを施行しております。


※クリックすると拡大画像が表示されます

 入院後に、負荷試験にてどこまで食べられるか(閾値)を確認し、その1/10程度から食べ始め、5-10日間で増量します。退院後も自宅にて摂取し、毎月外来で少しずつ増量します。目標量まで到達後、6-12か月間継続摂取し、確認試験(2週間の原因食物の完全除去後、目標量を摂取)にて無症状であれば臨床的寛解とします(図1)。


 当院では4名(牛乳3名、小麦1名)に施行し、2名は安全に増量(①牛乳:約1年半で臨床的寛解,200ml以上摂取可. ②小麦:1年でうどん100g摂取可)できました。残る2名も現在牛乳100mlを摂取可ですが、陽性症状が頻発し長期の治療を要しました。

 OITで減感作(食べ続ければ症状が出ない)を得られても寛解を獲得するとは限りません。治療中にAnを含め症状が誘発される可能性も高く、まだ一般化された治療法とはいえません。

 当科ではFA児の安全な早期寛解導入を目指しております(図2)。乳児アトピー性皮膚炎や、食物アレルギーを疑われるこどもさんがおられましたらぜひご相談下さい。


※クリックすると拡大画像が表示されます