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医学シリーズ 精神科 / 「熊本医学会奨励賞」

【178号(2012.4)】

医学シリーズ No.186 精神科(No.4)

「双極性障害」について

精神科医長 山下  建昭

 気分障害は、「うつ状態」のみの単極性障害と「躁状態」と「うつ状態」をくりかえす双極性障害をまとめた概念です。双極性障害は、かつて躁うつ病(狭義)と呼ばれたものです。少なくとも1回以上の「躁状態」か1回以上の「うつ状態」を経験します。周期的に「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す双極Ⅰ型障害、軽症で持続期間も短い「軽躁状態」と一時的な「うつ状態」を来たす双極Ⅱ型障害、気分循環症に分類されます。(下図)

 双極性障害ではアルコールやタバコやカフェインなどの乱用の合併が多いです。「躁状態」では、気分は爽快で、楽しいです。睡眠欲求は少なく活動性は亢進します。多弁で早口、話題が次々と変わります。アイデアがあふれ、自己感情が高まります。

 しかし、愉快なばかりでなく、刺激性が高まり、攻撃的になり易いです(易怒性)。そのため、双極Ⅰ型障害の「躁状態」では他者との人間関係に重大な支障を来たしえます。また、「うつ状態」では自殺の危険性が極めて高い、単極性障害の「大うつ病」より高いといわれています。双極Ⅰ型では、「躁状態」の時には周囲が困り、「うつ状態」の時には本人が困ります。双極Ⅱ型障害の「軽躁状態」は本人も気がつかないことがあり、注意深い病歴聴取が必要です。双極性障害は遺伝的な体質が考えられています。

 双極性障害の「うつ状態」は、大うつ病とほぼ同様のものであり、鑑別することは困難なことが多いです。双極性障害の約2/3の症例では初発の病相が「うつ状態」であるといわれています。「うつ病」と思われた症例が経過の中で双極性障害であったことが判明することになります。安易な抗うつ剤の使用は、躁転の危険性があり注意が必要です。双極性障害の家族歴、25歳未満の発症、過眠、過食がみられれば双極性障害「うつ状態」を疑う必要があります。中途-早朝覚醒を中心とした不眠、食欲低下は単極性障害(大うつ病)に典型的です。
 
【治療】

 大うつ病のうつと同様、自殺予防に十分に配慮します。希死念慮の強いときは入院が必要です。双極Ⅰ型障害では、2回以上躁病エピソードを反覆する場合や、強い家族歴のあった場合、寛解期の予防的治療が重要です。炭酸リチウムやバルプロ酸などの気分調整剤が用いられますが、血中濃度のモニターが必要です。大半の「うつ状態」は外来治療が可能ですが、
  1)十分に話を聞くこと、
  2)病気についてわかりやすく説明すること、
  3)治療方針(薬の効果、副作用など)、
  4)心理教育
が重要です。

「熊本医学会奨励賞」を受賞しました

 この度「発展途上国におけるレトロウイルス感染症の予防及び対策ならびに高齢者医療に関する専門家の育成」活動により、栄えある熊本医学会奨励賞<社会活動部門>を受賞いたしました。
 物質、経済、情報などのグローバル化が進む中、そのバランスを保ち発展の鍵を握るのはやはりヒトです。私共は、特に医療分野において世界的な舞台で活躍できるような人物を育てあげ、それをサポートできるようなネットワークを構築するお手伝いを続けています。その3本の柱が、①厚生労働省所管JICA集団研修「AIDSの予防及び対策」とそれに続く「次の10年に向けてのAIDSの予防及び対策」、②アフリカ向け第三国研修技術協力の実施に係る在外技術研修講師業務、専門家としてのエジプト・アラブ共和国派遣、③国立病院機構熊本医療センターとタイ国コンケン病院との国際協力、姉妹協定締結です。
 熊本の国立病院で、世界を背負う新しいリーダーを輩出する夢を追いながら、これからも国際医療協力に力を注いでまいります。このようにやりがいのある仕事を与えていただいた諸先輩方に心から感謝しております。ありがとうございました。

(臨床研究部 特殊疾病研究室長 武本 重毅)