【医学シリーズNo.142】 神経内科 (No.4) | くまびょうニュース | 国立病院機構 熊本医療センター

【医学シリーズNo.142】 神経内科 (No.4)

【117号(2007.3)】

【医学シリーズNo.142】 神経内科 (No.4)

〈最近のトピックス〉 視神経脊髄型多発性硬化症と抗アクアポリン4抗体

脳神経センター
神経内科医長
  俵 哲

図1. ヒトアクアポリン系統図
図1. ヒトアクアポリン系統図

図2. 76歳、女性 Th6-7レベルの右側横断性脊髄炎で発症。血清抗アクアポリン4抗体陽性
図2. 76歳、女性。
Th6-7レベルの右側横断性脊髄炎で発症。
血清抗アクアポリン4抗体陽性

 細胞膜が、水をほとんど透過しない脂質二重層から成り立っているのに、半透膜として水を透過する機序は、細胞膜に水を選択的に通過させるアクアポリンaquaporinという膜蛋白質があることで説明されています。ヒトでは13種類のアクアポリン(AQP)が発見されています(図1)。 脳に多いのはAQP1、AQP4、AQP9です。AQP1は髄液産生と脊髄後角への痛覚投射に、AQP4は血管周囲の星状細胞の軸索終末に局在し、脳浮腫の増減とKイオンを介した神経細胞の興奮調節に、AQP9は視床下部の水の動きに関係しています。AQP4は視神経交叉部や脊髄 、脳室周囲にも存在しています。
  多発性硬化症は原因不明の、時間的、空間的に多発する中枢神経系病変です。高緯度の欧米に多く、日本を含め、アジア人種には球後視神経炎と脊髄炎で発病する視神経脊髄型が多いとされています。これまで多発性硬化症の有力なマーカーとしては髄液のオリゴクローナルバンドやIgGインデックスしかなかったのですが、2004年、米国メイヨー・クリニックのLennonらによって視神経脊髄型の多発性硬化症(米国ではDevic病)患者さん73%の血清中に、抗AQP4抗体(別名NMO-IgG)が陽性であることが示されました。私どものところでも横断性脊髄炎(図2)で発病され、熊本大学病院と協同で精査中の方で、抗AQP4抗体が陽性例を経験しています。視神経脊髄型多発性硬化症は、(1)女性に多く、(2)比較的高齢発症(本邦での平均年齢:37±13歳)、(3)再発性、(4)視神経障害が高度、(5)MRIで3椎体以上に及ぶ脊髄病巣、という特徴を有しています。急性期治療は、ステロイド大量療法、血漿交換などが有効です。
  国立病院機構熊本医療センターでは、これまでMRIは実質1台のみであり、ご不便をおかけしておりましたが、本年2月下旬に新しいMRIが1台稼働開始いたします。神経内科分野で、不明な症状を生じた患者様がおられました時は、早期診断早期治療を目指しておりますので、早めに紹介して頂けると幸いです。