1. Ishikawa Y, Kiyama T, Haga Y, Ishikawa M, Takeuchi H, Kimura O, Harihara Y, Sunouchi K, Furuya T, Kimura M: Maximal sterile barrier precautions do not reduce catheter-related blood stream infections in general surgery units: a multi-institutional randomized controlled trial. Ann Surg 2010;251(4): 620–623.
<タイトル> マキシマル・プリコーションは外科病棟でカテーテル関連血流感染症を減少させない: 多施設無作為比較試験
<コメント>
中心静脈カテーテル(CVC)挿入時のマクシマル・プリコーション(MSBP)は、CDCを初めとする世界中のガイドラインが推奨している無菌法である。医師は手術の時のように、滅菌のガウンを着て、帽子・マスク装着のフル装備をして、患者には全身を覆う大型の滅菌ドレープをかけてCVC挿入を行いなさいというものだが、これは医療廃棄物が増え、コストもかかる。そこで、このMSBPを行った場合と、滅菌手袋と小型の滅菌ドレープのみでCVCを入れた場合とでカテーテル関連血流感染症の発生率に差があるのか、日本の9病院で成人外科入院患者を対象に無作為比較試験を行った。その結果、両者に全く差を認めなかった。本研究成果は、恐らく世界中のガイドラインの内容を書き換えることになる貴重なものだと考える。臨床研究部長 芳賀 克夫
2. Hidaka M, Iwasaki S, Matsui T, Kawakita T, Inoue Y, Sakai T, Harada N, Takemoto S, Nagakura S, Kiyokawa T, Takahashi M, Saibara T, Onishi S, Kawano F: Efficacy of bezafibrate for chronic GVHD of the liver after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant 2010;45(5):912–918
<タイトル> 同種造血幹細胞移植後の慢性肝GVHDに対するベザフィブラートの効果
<コメント>
同種造血幹細胞移植をうけた患者の慢性期における最大の問題は慢性移植片対宿主病(GVHD)である。この疾患は膠原病様の免疫異常であり、ステロイドやシクロスポリンなど免疫抑制をかけることで治療する。ただ、行き過ぎた免疫抑制は感染を引き起こしたりやもとの血液疾患を再発させる原因ともなり治療上のジレンマであった。われわれの検討ではベザフィブラート(BF)は免疫抑制をかけることなしに難治性慢性肝GVHDを改善させることができ、有望な治療法と考えられた。臨床研究部技術開発研究室長 日高道弘
http://www.nature.com/bmt/journal/v45/n5/full/bmt2009251a.html
3. Haga Y, Ikejiri K, Wada Y, Takahashi T, Ikenaga M, Akiyama N, Koike S, Koseki M, Saitoh T: A multicenter prospective study of surgical audit systems. Ann Surg 2011;253(1):194-201.
<タイトル> 外科技術評価法の多施設前向き研究
<コメント>
どの病院が手術がうまいのかは、患者だけでなく、患者を紹介する医師においても重要な情報でる。また、手術を行っている外科医にとっても実際自分たちが手術がうまいのかどうかは分からないのが実情である。このような状況で、外科の技術水準を客観的に評価するモデルは、世界中でいくつか開発されている。これらは当該病院の術後死亡率を手術の内容や患者の持つリスクで補正したもの(リスク補正死亡率)を指標としている。しかし、まだ国家規模の調査はどこの国においても行われていないのが現状である。今回我々は国立病院機構で、独自に開発した外科技術評価法E-PASS を改良し(以下、mE-PASS)、その有用性を、イギリスで開発された外科技術評価法P-POSSUM及びイタリアで開発されたASA-status based modelと比較検討した。その結果、mE-PASSは他のモデルと比べて術後死亡の予測精度が高く、且つ、入力項目が7項目と少ないことから、大規模調査に適していることが判明した。本研究で我々が開発したmE-PASSが普及することにより、全国の主要病院の外科の技術水準を定量できる日が訪れることが望まれる。これは必ず外科医の切磋琢磨、技術向上に繋がっていくものと考えられる。臨床研究部長 芳賀 克夫
4. Haga Y, Wada Y, Takeuchi H, Ikejiri K, Ikenaga M: Prediction of anastomotic leak and its prognosis in digestive surgery. World J Surg 2011;35(4):716-722.
<タイトル> 消化器外科手術における吻合部縫合不全症の予測
<コメント>
消化器外科手術における吻合部縫合不全症は、消化管を縫い合わせた部分が破綻するという極めて危険な術後合併症である。本研究では、我々が開発した術後リスク予測法E-PASSが吻合部縫合不全症の発生の予測、および発生した時の予後の予測に有用であるか検討した。その結果、E-PASSの総合リスクポイント(TRP)が上昇すればするほど、吻合部縫合不全症の発生率が上昇することが判明した。また、吻合部縫合不全症発生例で在院死亡率とTRPの関係を調べると、TRPが1000点未満では死亡率は1.1%であるのに対して、TRPが1000点以上では15.9%と有意に上昇することが判明した。以上より、E-PASSは吻合部縫合不全症の発生および予後予測に有用であることが示唆された。臨床研究部長 芳賀 克夫
http://www.springerlink.com/content/42v3w06423816044/
5. Haga Y, Wada Y, Ikenaga M, Takeuchi H, Ikejiri K: Evaluation of Modified Estimation of Physiologic Ability and Surgical Stress in Colorectal Carcinoma Surgery. Dis Colon Rectum. 2011;54(10):1293-1300.
<タイトル> 大腸癌手術におけるmE-PASSの評価
<コメント>
本研究は、mE-PASSが大腸癌手術において有用であるかどうかを、ヨーロッパで開発された予測死亡モデルと比較検討したものである。対象は1987年10月から2007年4月まで日本の地域中核病院で手術を受けた予定大腸癌切除症例3,889例で、術後合併症の発生および術後死亡の有無と各モデル(E-PASS 、mE-PASS、POSSUM、P-POSSUM、CR-POSSUM、ACPGBI、ASBM)の予測死亡率を求めた。これらのモデルの中で、mE-PASSが在院死亡率及び30日死亡率において、最も高い予測精度を示した。イギリスで開発された予測モデル(POSSUM、P-POSSUM、CR-POSSUM、ACPGBI)はいずれも術後死亡率を10倍以上過大に予測することが判明した。
本研究は日本の中規模病院で行われた手術を分析したものであるが、mE-PASSが予定大腸癌切除の術後死亡予測に有用であることを示唆している。しかし、欧米人は日本人と体型や手術に対する予備能が異なることから、今後mE-PASSの有用性は欧米人を対象に再度評価されるべきであろう。臨床研究部長 芳賀 克夫
6. Kotera A, Haga Y, Kei J, Okamoto M, Seo K: Evaluation of Estimation of Physiologic Ability and Surgical Stress to predict in-hospital mortality in cardiac surgery. J Anesth. 2011;25(4):481-91
<タイトル> 心臓外科手術におけるE-PASSの在院死亡予測について
<コメント>
本研究では、消化器外科予定手術症例を対象とした術後リスク予測モデルであるE-PASSが心臓外科領域にも応用できるかどうかを、心臓外科手術用として開発された他の術後リスク予測モデルであるEuroSCOREおよびOPRSと比較検討した。 対象は、中規模病院Aで施行された心臓外科予定手術症例291例と、大規模病院Bで施行された心臓外科予定手術症例784例とを合わせた1075症例である。全症例で在院死亡率の予測能を検討すると、E-PASS は他のモデルより高い精度を示した。
E-PASSは、心臓外科手術用に開発された他の予測モデルと異なる変数を用いていることから、心臓外科手術用の予測モデルで行った術後リスク予測に対するダブルチェックとして活用できるだろう。臨床研究部長 芳賀 克夫
http://www.springerlink.com/content/ww16121060515617/
7.Haga Y, Wada Y, Takeuchi H, Ikejiri K, Ikenaga M, Kimura O: Evaluation of modified Estimation of Physiologic Ability and Surgical Stress (mE-PASS) in gastric carcinoma surgery. Gastric Cancer 2012;15(1):7-14
<タイトル> 胃癌手術におけるmE-PASSの評価
<コメント>
我々は予定消化器外科手術症例で術後死亡率を予測するモデルmE-PASSを開発したが、本研究では過去に行った複数のコホート研究のデータから、胃癌切除症例を選択し、mE-PASSの有用性を検討した。対象は1987年8月から2007年4月まで日本の地域中核病院で手術を受けた胃癌切除症例3,449例で、術後合併症の発生および術後死亡の有無、mE-PASSの予測死亡率を求めた。その結果、mE-PASSは術後合併症の重症度と良く相関し、且つ、術後死亡を正確に予測することが判明した。医療の質の指標として、実死亡率を予測死亡率で割った比(OE ratio)を6つの病院で調査すると、0.44~1.8の値を示し、有意な差はなかったが、病院間で技術格差が存在することが示唆された。また、全症例で研究期間を前期(1987年~2000年)、中期(2001年~2004年)、後期(2005~2007年)に分けて、OE ratioを求めると、時代の推移に伴ってOE ratioが低下していくことが判明した。以上より、mE-PASSは胃癌切除症例で術後死亡を正確に予測し、実臨床においても、また、医療の質の評価においても有用であることが示唆された。
現在まで、胃癌手術に関する質の評価を行う指標が世界的に見てもなかったことから、本研究は今後の胃癌診療の質の向上に寄与できる極めて有意義なものと考えられる。臨床研究部長 芳賀 克夫
http://www.springerlink.com/content/t6631238lk422768/
8.Tsuruta T, Aihara Y, Kanno H, Funase M, Murayama T, Osawa M, Fujii H, Kubo O, Okada Y: Shared molecular targets in pediatric gliomas and ependymomas. Pediatr Blood & Cancer 2011;57(7):1117-1123<タイトル> 小児神経膠腫と上衣腫は共通の分子標的を持つ
<コメント>
集学的治療の進歩に伴い小児脳腫瘍の予後は改善しているが、予後不良の腫瘍も多い。成人領域では悪性神経膠腫を中心に分子標的療法の研究が進んでいる。本論文では27例の小児脳腫瘍(髄芽腫8例、神経膠腫14例、上衣腫5例)において、分子標的として考えられる7種の遺伝子(b-catenin, SUFU, ERBB2(HER2), PDGFRa, PCNA, SPARCおよびG-CSFR)発現をReal-time PCR法にて検討した。髄芽腫では播種や転移に関係すると考えられる遺伝子(SUFU, ERBB2など)が存在し、神経膠腫ではPDGFRaやG-CSFRの発現が強く認められた。神経膠腫での遺伝子発現パターンは上衣腫と類似しており、両者共通の分子標的療法薬で治療できる可能性が示唆された。尚、本論文のFigureは掲載紙の表紙に採用された。
樹状細胞を発見し、ERBB1(EGFR)を標的とした神経膠腫の免疫療法などの研究をされておりましたロックフェラー大学のラルフ・スタインマン先生は2011年度ノーベル医学・生理学賞を受賞されましたが、発表の3日前に亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。臨床検査科医長 鶴田 敏久
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pbc.23009/abstract
9.Takahashi T, Yamada S, Shimizu C, Kitada M, Sakurai T, Hashimoto S, Harada M: Timing of the appearance of early hypodense computed tomography signs in patients with middle cerebral artery/internal carotid artery embolism. Journal of Japanese Association for Acute Medicine.2010; 21(4):159-164
<タイトル> 急性期脳梗塞患者におけるearly CT signの出現時間
<コメント>
背景:急性期脳梗塞患者において頭部CTで広範囲なearly CT signが認められれば血栓溶解療法の相対的禁忌となる。しかしながらearly CT signの出現時間について言及した報告はない。そこで発症時間がはっきりしている内頸・総頸動脈塞栓症と中大脳動脈幹部塞栓症の脳梗塞患者においてearly CT signの出現する時間を調べた。
方法:2002年1月から2007年12月の6年間に、当救命救急センターに搬送された内頸/総頸動脈塞栓症と中大脳動脈幹部塞栓症の脳梗塞患者を対象とした。発症から頭部CT検査までの時間を5つの時間枠(<0.5 h, 0.5–1 h, 1–1.5 h, 1.5–2 h, 2–3 h)に分類し各時間枠でのearly CT 出現の有無について調査した。
結果:合計104 症例 [内頸・総頸動脈塞栓症(n=23)、 中大脳動脈幹部塞栓症(n=81)] が調査された。頭部CTでの広範囲early CT signs の出現率は、時間枠<0.5 h(n=8)の患者では0 %、0.5–1 h(n=47)では48%、1–1.5 h(n=17)では71%で、1.5h以降(n=32)はすべての症例で出現していた。early CT signs 出現有群(n=37)と出現無群(n=67)の間で出現時間の有意差(p < 0.0001 Wilcoxon test) が認められ、広範囲early CT signsは発症から0.5–1 hの間に出現し始めることが判った。
結論:この結果は血栓溶解療法の適応を考慮する上で有用である。臨床研究部予防医学研究室室長 高橋 毅
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/21/4/21_159/_article
10.Honda T, Kanazawa H, Koga H, Miyao Y, Fujimoto K: Heart rate on admission is an independent risk factor for poor cardiac function and in-hospital death after acute myocardial infarction. Journal of Cardiology 2010;56(2):197-203
<タイトル> 急性心筋梗塞患者における入院時心拍数は低心機能と院内死亡の独立した危険因子である
<コメント>
急性心筋梗塞は交感神経・副交感神経のバランスを崩すことが知られており、冠動脈インターベンション普及前の研究では、急性心筋梗塞における心拍数上昇は死亡の予測因子であることが報告されている。しかし冠動脈インターベンションが普及した現在においても急性心筋梗塞患者における心拍数上昇が予後に影響するか否か十分な検討は行われていない。本研究では急性心筋梗塞発症後24時間以内に当施設に緊急入院した連続200例を心拍数により4群に分け、心機能や院内死亡の危険を検討した。今回の研究で入院時心拍数は急性心筋梗塞後の心機能低下や院内死亡の独立した危険因子となることが示唆され、入院早期における急性心筋梗塞患者のリスク層別化に有用と考えた。循環器内科 本多 剛
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0914508710000997
11.Hiraki Y, Onga T, Mizoguchi A, Tsuji Y: Investigation of the prediction accuracy of vancomycin concentrations determined by patient-specific parameters as estimated by Bayesian analysis. Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics 2010;35:527–532
<タイトル> ベイジアン解析によって推定される患者に特有のパラメータで測定されるバンコマイシン濃度の予測精度の調査
<コメント>
Bayesian 法を用いたTDMに関する報告は多くされているが、推定された患者個々のパラメータを用いた予測精度についての報告はされていない。そこで、先発製剤のVCMにおける、Bayes 推定された患者個々のパラメータの予測精度について検討を行った。その結果、実測されたVCM濃度は10.43 ± 5.19 μg /mLに対し、Bayes 推定された患者個々のパラメータの予測値 9.62 ± 4.95 μg/mL であった。また、予測の偏りMEは-0.81μg/mLであり、予測のバラツキMAEは1.38μg/mLおよび予測の精度RMSE は1.74μg/mLであり、Bayes 推定された患者個々のパラメータを用いた予測精度は非常に良好であった。薬剤科 平木洋一
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2710.2009.01126.x/abstract
12.Hiraki Y, Hiraike M, Misumi N, Kawano F, Tsuji Y, Kamimura H, Karube Y: Prediction accuracy of generic VCM concentrations determined by parameters estimated by a Bayesian analysis. The Japanese journal of therapeutic drug monitoring 2011;28(2):60-66
<タイトル> Bayes推定により推定したパラメーターにより決定したジェネリックVCM濃度の推定正確性
<コメント>
ジェネリック製剤であるVCMの母集団平均パラメータの中央値を用いた予測と、Bayesian法により推定された患者個々のパラメータを用いた予測について、予測の正確さの比較検討を行った。対象患者は、MRSA感染症の治療でVCMを使用し、2回以上の薬物血中濃度解析が依頼された25人を対象とした。その結果、予測の偏り(ME)は -1.52μg/mL, 予測のバラツキ(MAE)は 3.08μg/mL および予測の精度 (RMSE) は、3.61μg/mLであり、母集団平均パラメータの中央値で予測した場合と比較して、Bayesian法による推定されたパラメータを用いた予測の方が予測精度は良好であった。薬剤科 平木洋一
http://jstdm.umin.jp/journal/pdf/28020060.pdf#search='Prediction accuracy of generic VCM concentrations determined by parameters estimated by a Bayesian analysis. The Japanese journal of therapeutic drug monitoring 2011;28(2):6066'