二の丸会会長(国立病院機構熊本医療センター名誉院長) 蟻田 功
昨年は、病院の新築改装と我が国立病院機構熊本医療センターは、その面目を一新し、2011年の新年を迎えましたが、世界は、刻々と変化しつつあります。ノーベル化学賞を日本人2人が受賞し、すばらしいと思ったとたんに、中国のノーベル平和賞受賞者は、牢獄の中で授賞式には参加できませんでした。WHOは、2000年から2015年までに、グローバリゼイションの波の中で、5才以下の子供の死亡を1/3引き下げるというミレニアム目標を立てましたが、目標達成はむつかしそうです。アフリカ、サハラ砂漠以南の国々では、5才以下の子供の死亡は、なんと人口1000人につき150~200人です。ちなみに、日本はわずか3人です。一方日本をはじめ富裕な国々でも、様々な問題点が指摘されています。日本の平均余命は、世界一です(表1 2008年統計)が、年間一人当たり医療費は、富裕国中最低です。しかも、医師数は人口1万人あたり21人と、これも最低です。米国は、表に示す通り、年間一人当たり医療費は、日本の2倍以上ですが、平均余命は日本よりかなり劣っています。2008年の医療統計ですが、今もあまり変わらないと思われます。富裕国の間でどうしてこのような差異が生じるのでしょうか?
日本では最近、高齢者の死亡時日が異常に高齢に報告されていることが発見され、物議を醸していますが、それが長寿の原因とは思われません。なぜなら日本は乳児死亡率も世界最低だからです。日本の長寿には他国にはない何らかの要因があるにちがいありません。一方、米国は、オバマ氏の医療システム改革が発足したばかりですが、問題は医療保険だけを改革しても解決するものではないでしょう。更に、日本と米国の医療チーム数は、富裕国間で必ずしも上位ではないことも知られています。このような矛盾する統計はいったい何を物語っているのでしょうか。
世界は変わりつつあり、医療面でも上述しましたような説明できない状況が多く認められます。これらの原因探究、疫学的研究が早急に必要と思われます。このような研究こそが、すぐ考え得る問題解決の大切な方向ではないでしょうか。世界の変わり方は激しく、急速です。150年前、世界一周には一年かかりましたが、今日では一日で可能です。事は急を要すると思うのです。
前置きが長くなりましたが、新年に際し、熊本医療センターは何をすべきか? いろいろな興味深い課題があると思います。病診連携の促進方法、外来患者待ち時間短縮方法、老人医療の問題点とその改良、高度医療技術の導入、特定疾患の疫学とその対策など。しかし、熊本医療センターは、以前より国際医療協力を行っており、外国人研修生の協力を得やすいことから、異なった国との比較研究も重要と思われます。
また、もう一つここで考え得るのは、熊本医療センターの二の丸会の活用です。限られた医療職員数で、以上のような課題の調査研究が出来る筈がありません。幸い、二の丸会は医療センターで、その業務を果たした方々の、院外医療活動の中枢的なグループです。そのグループと、センターグループとの協力研究が効果的ではないでしょうか。例えば、病診連携、簡単な診療は、二の丸会の開業医の先生方が受け持ち、医療センターには、センターの病院技術が必要な患者さんに集中する(病診連携の理想像です)などです。実際にこのような研究を行う上で困難な点は何でしょうか。またその困難さの解決方法はありますでしょうか。新年早々、小人数で集まって“二の丸会特別プラン”を討議したら如何でしょう。
表1
人口一万あたり 平均余命 一人一年医療費 医師 看護師 日本 83年 $2,700 21人 95人 スイス 82年 $4,400 40人 110人 フランス 81年 $3,700 37人 81人 ドイツ 80年 $3,600 35人 80人 フィンランド 80年 $2,800 33人 89人 米国 78年 $7,300 27人 98人