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国立病院機構熊本医療センター 国際医療協力の歩み

1)国際医療協力基幹施設

 昭和60年4月、蟻田 功氏(前WHO世界天然痘根絶対策部長)が第5代国立熊本病院長に就任され当院は国際医療協力を病院機能の重要な柱として位置づけ、病院全体としての取り組みを開始しました。翌年4月には厚生省の国立病院、療養所再編成計画に基づき、国際医療協力基幹施設としての機能付与を厚生省より認可されました。そして同年7月には国際医療協力の一環として中華民国からの海外技術研修員(医師)を初めて受け入れました。また、翌昭和62年には当院からの海外派遣第1号として梅木民子看護婦がザンビアに2年間国際協力事業団(Japanese International Cooperation Agency:JICA)の医療技術専門家として派遣されました。昭和63年には海外からの研修生の日本での臨床実習を可能とする臨床修練病院の指定を受けました。そしてこの年から海外派遣が本格化し、蟻田院長の湾岸戦争時の現地派遣、松村克巳医師(現小国公立病院長)のセネガルへの無償援助による新設病院の調査などが行われました。また、この年に国際医療協力を大幅に発展させる原動力となった財団法人国際保健医療交流センター(Agency for Cooperation in International Health:ACIH)が設立され蟻田院長が顧問に就任されました。

2)集団研修コースの開始

 平成元年には、当院の集団研修コースの第1号となった“血液由来感染症―AIDS、ATL、肝炎B”がJICAの後援の下、当院の主催で開始されました。その後、本コースはAIDS/ATLコースと肝炎ウイルスコースの二つに分かれましたが、両コースともに現在に至るまで継続して行われており、世界でも有名な医学集団研修コースとして発展していきました。このコースに続いて多くの集団研修コースが次々と新設及び改設され、近年では常時、年間7ないし10程度のコースが実施されています。

2008年度 国立病院機構熊本医療センターにおける海外研修生の受け入れ

集団研修コース
  1. 子供の死亡削減と国際協力セミナー (48日間) 8ヶ国 8名
  2.ワクチン予防可能疾患の疫学及び対策セミナー(フランス語) (28日間) 5ヶ国 7名
  3.ワクチン予防可能疾患の疫学及び対策セミナー (42日間) 7ヶ国
  4.AIDSの予防及び対策 (28日間) 7ヶ国 9名
  5.肝炎の疫学・予防及び治療 (28日間) 6ヶ国 6名
  6.農村医学コース (63日間) 4ヶ国 5名
  7.薬剤耐性病原体の実験室診断 (72日間) 3ヶ国 5名
  8. 血液スクリーニング検査向上(中米地域) (35日間) 5ヶ国 10名
  9.能力強化研修(母子保健対策) (35日間) 日本 2名
 10.能力強化研修(ワクチン予防可能疾患) (28日間) 日本 2名
 11.AIDSの予防及び対策                   (28日間) 10ヶ国 10名
40ヶ国 75名

”肝炎の疫学、予防及び治療”コース閉校式
(コースリーダー:杉 和洋消化器内科医長)

3)臨床研究部の設置

 平成4年、宮﨑久義氏が第6代院長に就任し、同年10月に国際医療協力を研究主題とする臨床研究部が設置され、河野文夫が初代の臨床研究部長に就任しました。これ以後国際医療協力事業は海外研修員と当院臨床研究部との共同研究という新しい段階へと入っていきました。さらに平成20年には、第2代臨床研究部長して芳賀克夫が就任し現在に至っています。

4)国際医療協力のための連携大学院講座の設置

 平成18年4月1日には、国際医療協力のための大学院連携講座を熊本大学に開設することになりました。すなわち、熊本大学大学院医学教育部博士課程臨床医科学専攻外科再建医学講座に「臨床国際協力学分野」を大学院連携講座として開設し、芳賀克夫外科医長が客員教授、高橋毅救命救急部長が客員助教授に就任し現在に至っています。これにより、当院に勤務しながら博士号を取得することが可能となりました。

5)第3国研修の開始

 平成8年には、当院主催の血液由来感染症コースをモデルとした集団研修コースを海外で行う第3国研修“感染症診断コース”がエジプト・イスマイリア市(スエズ運河大学)で開始されました。これは、当院で行っている集団研修コース“血液由来感染症”の参加希望者が特にアフリカ地域で多いため、このコースに多数の参加者を派遣してきたスエズ運河大学に依頼して同コースをモデルに“感染症診断コース”を作りその運営をお願いしたものです。そのような理由から、この第3国研修の設置には当初より当院臨床研究部が協力し、現在も当院とJICAが共催という形で関与し、毎年2名の講師を派遣しています。


平成20年11月26日  スエズ運河大学“感染症コース”研修員と 吉原なみ子先生、河野副院長

 


6)姉妹施設、病院の締結


平成12年、エジプト・スエズ運河大学医学部付属病院との
姉妹病院の締結 Ahmed Gohary教授と河野副院長

 一方、スエズ運河大学からは当院で行う血液由来感染症コースへの参加および熊本県海外技術研修生としての留学などで毎年多くの医療技術者が來熊し、われわれとの密接な友好関係が確立されてきました。そして平成12年、双方の施設の将来にわたる友好と協力を記念して、当院とスエズ運河大学医学部付属病院とは姉妹施設の締結を行ないました。また、同じように平成14年には、長年にわたり、密接な友好関係が確立された、中国広西チワン族自治区南寧市の広西医科大学第一付属病院とも姉妹病院の締結を行いました。
 その後、平成21年には、タイ国 コンケン病院、さらに エジプト ファイユーム大学と相ついで姉妹施設の締結を行いました。

 


スエズ運河大学のあるイスマイリア市は、人口50万人の
美しい都市で、スエズ運河会社の本社があります。


平成16年、第3国研修“感染症コース” に先立ち
エジプト・イスマイリア市で開催された
第9回エジプト免疫学会総会に、 日高道弘医長が出席し、
後援及び座長を務めました。


スエズ運河大学付属病院、看護学生


スエズ運河大学での第3国研修の実習




平成14年5月19日、中国広西チワン族自治区南寧市の
広西医科大学第一付属病院と姉妹病院の締結
当院に研修にこられた研修生の皆さんと再会しました。
広西医科大学学長と河野副院長

広西医科大学第一付属病院のある南寧市、
人口300万の大都会です。




平成20年、ファイユーム大学学長ゴハリー博士を訪問
    前年度に、スエズ運河大学副学長から栄転して
ファイユーム大学学長に就任
河野文夫副院長とゴハリー学長



梅木民子看護師は、昭和62年から2年間、JICAの医学技術専門家
としてザンビアに派遣されました。
病院の玄関にて 子供達は入院患者。大人は手術室勤務のスタッフです。


ザンビアでは自炊の毎日でした。
主食(シマ)を作っているところ


右端が梅木民子看護師。ザンビアの看護師さん達と


ザンビアの青年と ゆかた姿が梅木民子看護師


ザンビアの看護師さん達と 真中が梅木民子看護師







2009_10_07 整形外科 橋本伸朗部長が
熱烈歓迎をうけているところです。

2009_10_07 中国のポリオ根絶活動の現地調査のに
整形外科部長の橋本伸朗先生が派遣されました。


2009_10_07 中国・橋本伸朗先生
ポリオ疑い患者のカルテを見ているところです。





平成21年9月 武本重毅内科医長が、
タイ・コンケン病院を訪問
コンケン病院スタッフとともに

武本重毅内科医長が平成21年8月30日より
 タイ国コンケン市、コンケン病院へ
熊本大学医学部 岡田誠治教授と伴に訪問し、
今後の国際医療協力について意見交換を行いました。






   コンケン病院でのセミナー(武本医長・太良医師)
   平成22年3月21日 武本医長と太良研修医が
  タイ・コンケン病院を訪問
   太良医師は10日間にわたり同病院で研修を行った。

歓迎会のポスターの前で
 (左 武本医長・右 太良医師)


コンケン病院の研修医と(太良医師)



 

7)国立病院機構熊本医療センターと広西医科大学との国際医療協力

国立病院機構熊本医療センター 内科部長 東 輝一朗 

 1934年創立の広西医科大学は70周年を迎え、盛大に記念式典が開催されました。私は、広西医科大学より招待された宮崎院長の代理として、この祝賀式典に参加しました。
 中国、広西省チワン族自治区には3つの医科大学があります。このうち戦前から存在するのは広西医科大学のみで、もっとも古い歴史をほこる広西省内きっての大学です。 国立病院機構熊本医療センターは昭和61年より医療協力を通して広西省の幾つかの病院と友好関係を築き、なかでも広西医科大学から多くの医師や看護師を受け入れてきました。平成14年、当時の河野部長(現副院長)が広西医科大学を訪問し姉妹病院の調印を行ってからは、この大学との関係はより一層強くなりました。
 広西医科大学は広西省の中心都市南寧にあります。直行便がないため福岡から上海経由で現地へ向かいました。空港には有り難いことに夏先生と陳先生が迎えに来てくれました。夏先生とはずいぶん久しぶりにお会いしましたが、10年程前に留学された頃とほとんど変わりありませんでした。帰国後、若くして助教授から教授、そして副病院長、副学長ととんとん拍子に昇任されました。
 一方陳先生は約5年前に来日されました。いずれの女性も熊本県の県費留学生で、半年間に渡って私たちの病院で糖尿病の研修をされました。陳先生と東北での学会に参加した時、陳先生の希望で魯迅記念碑を訪れました。魯迅は中国でも相当人気が高い人物のようです。
 以前に一度、もう7年前になりますが、国際医療協力研究のため広西医科大学を初めて訪問しました。この時は17階建ての外科系の病棟が完成して間もない頃で、今回は外科病棟の隣に23階建て内科系病棟がほぼ完成し、内装工事が行われているところでした。広西医科大学の近代化、施設の充実ぶりには目を見張るものがあります。大学だけでなく、南寧市には多くの新高層ビルが建ち並び、同時に自然の湖を利用した緑豊かな広大な公園が造られるなど景観にも十分な配慮がなされていると感じました。
 広西医科大学には第一付属病院のほかに、市内に点在する8つの付属病院があり、第一附属病院だけでもベッド数は約2000あります。日本の基準ではなかなか信じ難い数ですが、この大学は毎年約1000人の卒業生を送り出していると聞きました。
 式典の前日には歓迎会が催されました。招待された国は、日本だけでなくフランス、デンマークなどヨーロッパの国々に及び世界の各地にネットワークを持つ国際的な大学との印象を強くしました。
 式典は大学のグランドで行われ、国旗掲揚に始まり、国歌が斉唱され、続いて祝砲が鳴り響きました。それを合図に関連病院および歯科、看護学校などから70周年にちなんで70名ずつ、それぞれの施設ごとに大きな掛け声とともに隊列を組んでの行進が始まりました。きびきびとまるで軍隊の行進を見る様で、こちらも身が引き締まりました。
 夕方からは大学の講堂で祝賀会が行われ、オーケストラの演奏に合わせて独唱や合唱、それにダンスや劇などが次々に披露されました。会場は満員で、座れない観客が壁際に大勢並んでいました。いずれのプログラムもすばらしいもので、「オーケストラも含めて、ほとんどが大学や病院の職員です」との説明を受けるまではプロの人たちとばかり思っていました。
 フィナーレに花火が打ち上げられました。 どこの花火も同じだろうとそれ程期待はしていませんでした。しかしシュルシュルシュルと打ち上げ音がすぐ近くで聞こえ緊張しました。頭の真上あたりでバンと大きな衝撃音とともに夜空を覆うように花火が広がっていきました。一斉に喚声があがり、灰が頭の上にハラハラと落ちて来ました。赤くまだ燃えているものもありました。野外テーブルを囲んで優雅に観賞するはずだったのですが、危険を感じて、そこに居た全員が避難する羽目になってしました。
 これまで国立病院機構熊本医療センターは、国際医療協力研究として広西医科大学との糖尿病治療の比較を行ってきました。中国では、糖尿病に対してほぼ同じレベルの検査や治療がなされていましたが、罹病期間に比して合併症の割合が多いこと、インスリンの注射器具などに経済的な制約があることなどを明らかにして来ました。
 中国でも糖尿病の増加は大きな問題となっていますが、国の政策として具体的な対策は打ち出されていないようでした。しかし糖尿病の予防や治療のためには、より一層の生活習慣改善と早期発見が重要です。この点についての認識はお互い全く同じで、次の研究テーマに広西医科大学検診センターとの共同調査を加えてはどうかとの提案がありました。
 最後に広西医科大学長や第一附属病院長とも会談することが出来、70周年記念式典がお互いの友好と連携をさらに深める絶好の機会となりました。今後とも私たちの病院は医療協力を通じて国際的な貢献を続けて行きたいと思っています。

 


平成13年 広西医科大学創立70周年記念式典に
出席のため当院を代表して訪中
大学正門前にて 東輝一朗内科部長


広西医科大学第一附属病院長との会談


広西医科大学副学長 夏先生
夏先生は、東内科部長の指導の下、当院で
10ヶ月間にわたり、糖尿病診療を研修しました。
帰国後数年にして副学長となられました。
当院との姉妹病院提携時も、尽力して頂きました。

 

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